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第90話 エルフ

 明日にはエルマ精霊国との国境に着くそうだ。森林地帯を進んでいるので距離がよくわからない。マッパーは国境近くになってから画像が乱れるようになってきた。

 ユーリによるとエルマ精霊国はかなり魔法への防御が優れているそうで、空間認識魔法は常にジャミングされるらしい。しかもこれだけ距離が離れるとさすがのカガリさんでも如何ともし難いそうだ。


「エルフの方々がいますね…」


 アリシアさんが森の中を見渡して言った。


「そうだね。集落があるのかな?」


 今日はもう少し進んで野営する予定だ。


「ユーリ、エルフ達がいる森はどうしてこんなに気持ちが良いのでしょうか?」


 この森は生気に溢れていた。木々が健康的に生い茂り、動物の数も多い。なんと言っても森から力をもらうようで気持ちが良いのだ。


「エルフと森は共生しているからね。エルフがいる事によって森は魔力が安定する。その安定した魔力を利用してエルフは生活する。エルフと森は魔力を介して循環して支え合っているんだ。」

「へえー、ユーリは物知りですね。」


 川がすぐ脇を流れている。とても澄んでいて川底を泳ぐ魚も良く見える。木を見上げると色とりどりな鳥がさえずっている。


「ナルミさん、本当にきれいな森ですよね。」

「ええ、本当に。アリシアさんはエルマ精霊国は初めて行くんだよね。」


 私の問いにアリシアさんはにこやかに微笑んだ。


「はい、この感じだととても良いところなのではないかと期待しちゃいますね。」

「ぴーピーピー」

「え?竜体にも心地の良い魔力で溢れているの?へえ、そうなんだ。」


 相変わらずピー子は私の頭の上にいる。重さを感じないのでたまに忘れてしまうぐらいだ。

 のどかなひと時を満喫していた私達だったが、


「皆んな、抜刀!気をつけて!10人だ!」


 ユーリが鋭く警告した。

 メラニンさんと騎士達がアリシアさんの前に出て、防御陣を敷く。


「ナルミ!できるだけ殺さないで!」


 やはり…そうか。気配が人間じゃない。


「わかりました。野郎共Aチームもアリシアさんの護衛に回って!」


 私はクロスガンを右手に魔刀を左手に構えた。

「来るよ!」


 魔力が込められた矢が飛んでくる。ミカさん達メイドさんが風魔法で矢の軌道を逸らそうとしているが、矢に込められた魔力の影響で軌道がそれない。

 だが矢はユーリの操る銀の粒子に阻まれて地に落ちた。私は矢の飛んできた方に向けて泥弾を撃った。

 うーん、手ごたえが無い!じりっじりっと相手が包囲を狭めて来るのを感じる。そしてそれは突然だった。私の頭上の木の上からものすごい速さで斬りつけられた。でもこれは予期していた攻撃だ。私は魔刀に魔力を込めて斬りつけられた短刀を弾き返した。


「!!」


 やっぱりエルフだ。チラリと見えた長い耳で私は確信した。


「ユーリ!エルフです!」


 ユーリは刀を構えながら頷いた。だが、私の発した言葉は予想外に働いた。


「ユーリ?ユーリ様か!」

「そうだ!竜殺しのユーリ・ミコシバだ!敵対するなら手加減しない!斬り捨てる。」


 相手が動揺するのが伝わって来た。良かった!戦闘を回避できる、と思ったのだが。


「バン!誑かされるな!偽物だ!」


 私が弾き飛ばしたエルフが叫び、ものすごい速さでユーリに迫る。短刀が鈍く光る。でもユーリは見えている。短刀を身体を傾げてかわすと金の刀をエルフの肩口に打ち据えた。ユーリの金の刀に刃は付いていない。


「うぐ…」


 エルフは肩を抑えてうずくまった。


「バグ!引くぞ!」


 リーダーと思われるバンと呼ばれたエルフがバグを支えると森に姿を消した。うーん。一瞬だったがユーリに一礼したように見えたな。


「皆んな、大丈夫?」


 ユーリの言葉に皆が頷いた。


「ユーリさん…『竜殺し』って…。もしかしてララーシャ王女のドラゴン討伐…」

「うーー、そうだよ。恥ずかしいからあまり言わないでね…」

「恥ずかしいって…?」


 私はアリシアさんに目配せすると首を振った。


「あ、いえ…」


 アリシアさん、後で説明するからね…。


「ああ、えーと。皆んなには言っておくよ。私はララーシャとドラゴン討伐をした。エルマ精霊国では"英雄"と言われている。ラブリーエンジェルスが随行武官に選ばれたのはそのためだ。」


 皆、一様に口をポカンと開けてユーリを見ていた。


「うん!この話は終わり!あのエルフ達はもう襲って来ないと思うけど、注意しよう。アルファジオの事もあるし…」


 ユーリはちょっとだけ難しい顔をすると国境に向けて歩き出した。

 


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― 新着の感想 ―
エルフの襲撃がありましたが、無事で良かったです。 彼等は一体何故襲撃してきたのだろうか……
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