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第85話 命懸けのレジスト

「お、おまえはいったい何なんだ!」


 アルファジオの攻撃は凄まじかった。剣筋が全く見えない。思いもしない位置から斬撃が来る。だが、ユーリには通用しない。ユーリは全ての剣筋が見えているのだろう。身体を傾げるだけでアルファジオの攻撃を交わしていた。


「アグリーデーモンズがこれほどとは思わなかった。ユーリ!ゾクゾクするぞ!」


 アルファジオは腹の底から声を出して叫んだ。


「う、う。やめてよ。ほら!鳥肌が立ったじゃないか!」


 ユーリが心底嫌そうに返事をした。


「ならばとっておきの奥義をお目にかけよう。」


 そう言うとアルファジオは詠唱をはじめた。


「暗き暗き地の底より出し黒き黒き影よ。ゆらゆらと震えて形となせ。ゆらゆらと、ゆらゆらと。」


 朗々たるアルファジオの詠唱に合わせて地面から影が幾つも立ち上がる。


「古代の魔法か!しかも詠唱?」


 ユーリがアルファジオから距離を取った。


「ふるふると凪せ、影よ。ふるふる、ふるふる。」


 地面から立ち上がった影は人の形となった。


「えーい!」


 私はクロスガンでミスリル弾を打ち込んだが影にダメージを与えられない。

 ユーリが銀の刀を構えて斬りつけた。だがその攻撃も影を捉える事はできなかった。


「ナルミ!離れて!」


 ユーリは両方の刀を鞘へと戻した。ユーリ、何かを狙ってる?!私は急いで2人の間合いから離れた。


「ほう、潔いな。」


 アルファジオが印を結ぶと影は暗く立ち上がりながらユーリへと手を伸ばした。


「あれは!攻撃する時だけ実態になるんだ…」


 影の攻撃を受けて、ユーリの頬に赤い筋が走る。


「アルファジオだっけ?ちょっとびっくりしたよ。でも、あなたの技はことごとく私と相性が悪い!」


 ユーリはそう言うと腰の両刀を鞘から抜き放つ。金と銀の魔力が瀑布となって影を薙ぎ倒した。


「空間だ!空間ごと切り伏せたんだ!」


 やっぱりユーリはすごい!すごいすごい!さすがは怪物美女だぜ!!


「な!空間ごと影を斬ったのか…。ははは!俺の負けだ!ユーリ!次は俺が勝つ!」


 アルファジオは身に影を纏うとそのまま見えなくなった。ユーリはアルファジオを追わなかった。


「ナルミ。今、あいつは追わない。バカな指揮官の身柄を抑えるよ。」


 ユーリはそう言うと正門に向かって歩きだした。

 騎士団はリビングコープスを制圧していた。あとは領都の中だけだ。



 

 

「何なんだ!どうしてだ!」


 今、ムリボンを守る兵士は3人しかいない。ムリボンが他のリビングコープスを王国の騎士団との戦いに送り出したからだ。副官のアルファジオもいない。領都を囲むように魔法障壁を配置したので逃げ道もない。


「なぜ?どうして?」


 ムリボンの無能さが招いた結果なのだが、ムリボンは理解していなかった。


「全部!全部全部!!アルファジオのせいだ!!」


 盛大に責任転嫁したムリボンは王国騎士団に一矢報いる事にした。


「どうせ死ぬのだ…ならば道連れは多い方が良い!!」


 ムリボンはニュークロップから預かっていた宝珠を握りしめた。


「魔人となって魔力暴走を起こしてやる…」


 ムリボンは3人のリビングコープスを傍に領都中央の広場へと進みでた。


「道連れだ!!」


 ムリボンは吹き飛ばされた正門をにらみつけた。



 

 

 正門を抜けると領都の中央まで広い道が続いていた。マッパーによると先には広場があり、そこに4人の反応がある。

 私とユーリ、ミットフィルさんは広場へと進む。


「おまえが指揮官だな?」


 ユーリの問いにその小太りな男は答えなかった。傍のリビングコープスが剣を抜いて襲いかかってきたが私達の敵ではない。2体を私が狙撃して倒し、もう1体はミットフィルさんが斬り伏せた。小太りの男はがっくりと肩を落とすと膝をついて泣き崩れた。何とあっけない。


「ナルミ…。ナンブが着いたみたい。ちょっと話をして来るよ。」


 マッパーを覗いていたユーリが手をひらひらさせて正門へ向かって歩き出した。


「はい、わかりました。」


 私はミットフィルさんと一緒に男へと近いた。もちろん刀を抜いて警戒する。


「私は王国上級騎士ナルミ・ジェイドです。騒乱罪の疑いで拘束します。」


 私は刀を突きつけながら男を拘束しようとした。

 その時、正門に向かっていたユーリがこちらを向いて叫んだ。


「ナルミ!!そいつから離れて!!!」

「ふはははは!もう遅いわ!」


 男はこちらを見た。その口には宝珠が噛まれていた。ニヤッと笑った男は宝珠を噛み砕いた。妖気が立ち込めて男の身体に吸い込まれていく。


「ミットフィルさん!破裂する!!」

「ナルミさん!」


 ミットフィルさんは私を抱えるように男との間に壁となった。ミットフィルさんの身体からも魔力が湧き上がるが…。


 私が警告したのと同時に男の身体が膨れ上がり、破裂した。

 私は咄嗟に魔力を身体に巡らせる。

 レジスト、レジスト、レジスト!魔力が足りない!レジスト、レジスト!


「ナルミ!!」


 ユーリの絶叫が聞こえた。

 ミットフィルさんが私を守るようにレジストするのが感じられた。

 くそ!魔力が欲しい!!この土壇場な状況下で私はレジストしているミットフィルさんと目があった気がした。

 もっと魔力がほしい!レジスト、レジスト!

 ダメだ。全てのレジストを突き破って妖気のような魔力が迫ってくる。や、やられる!

 その時、脳裏をよぎったのは…ニカっと笑ったユーリの笑顔だった。


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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