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第84話 一騎討

『ナルミ!正門を完全に吹き飛ばして!』


 通信機ごしにユーリの声が聞こえてきた。


「はい、わかりました。完全に吹き飛ばしても問題ないですか?」

「ナンブはお金持ちだから大丈夫だよ。」


 そ、そういう問題なのかな?


「わかりました。では撃ちます。」


 私はクロスライフルに魔力を込めた。髪が銀色に輝き出す。


「いけーー。」


 私は80%の出力でミスリル弾を撃った。正門に弾着すると同時にものすごい爆風。そして正門が跡形もなく消え去った。


『ひゅーー、ナルミ!相変わらずすごいね!さて、どうする?無能な指揮官!』



 

 

「アルファジオ!正門が吹き飛んだぞ!あれはあの魔道具の力か?」


 アルファジオはそれがキングマリオネットのちからでは無いことをわかっていた。


(面倒くさいな…)


 アルファジオはこの地を防衛することを放棄する事にした。


「さすがはムリボン様。ご慧眼ですな。私があの魔道具には対処いたしますので、ムリボン様はリビングコープスを使って奴らを撃退してくださいませ。」


 できるものならな!心の中でアルファジオは思っていたが態度には出さない。


「そ、そうだな。あの魔道具以外は普通の兵だ。俺がリビングコープスで蹴散らしてくれるわ!」

「ムリボン様、それでは私はこちらで失礼します。」


 アルファジオはニヤッと笑うと腰に差した魔剣をグッと握った。そして正門があった所を見やる。その目にはもうムリボンの事は捉えていなかった。




 

『ナルミ、ミットフィル!1人、正門から出てきた奴がいる。あれは私が相手する!ナルミ、すまないが右兵の指揮も任せる!』

「はい!ユーリ、気をつけて!」


 あの正門(吹き飛ばしちゃったけど…)から出てきた男が副官だろう。威風堂々としている。黒い甲冑、腰にはロングソード、左手には取り回ししやすそうな盾を構えていた。剣からも盾からも強い魔力を感じる。


「この隊の指揮はアグリーデーモンズとお見受けする!私はここの副官アルファジオだ。手合わせを願いたい!」


 咆哮だった。あの副官、かなりの胆力だ!しかも私達の事をわかっている?!(ラブリーエンジェルスだけど…)


「私はラブリーエンジェルスのユーリ・ミコシバだ!」


 右翼からユーリが進みでて副官と相対した。ユーリからはいつもの飄々とした雰囲気は感じられない。しかももう魔力も全力だ。髪の色が銀色に光り輝いている。ユーリが本気になる程の相手なのだろう。

 相対した2人はゆっくりと向き合うと腰の武器に手をかけた。


「ほう。貴殿が噂に名高いバーサクデーモンか!応じていただき、感謝する!では参る!」


 アルファジオは剣を抜き放つと一気にユーリとの間合いを詰めた。ユーリも両手に刀を構える。


「でやあ!」


 ものすごい気合い。アルファジオの上段からの一撃は離れた位置から見ていた私でも鳥肌が立つ程の剣圧。だが、このすさまじい一撃をユーリは身体を傾けてかわす。重心は全くブレていない。


「えい!」


 ユーリの銀の刀の一振りは銀の粒子を撒き散らしながらアルファジオの首筋に迫るがアルファジオは盾を構えてこの一撃を防いだ。


「な、なんという剣撃か!ははは!ユーリ!相手に不足無し!!」


 アルファジオはユーリから間合いをとると剣に魔力を込めた。闇の魔力!


「この魔力はどうだ!」


 アルファジオは魔力を込めた魔剣を水平に振った。アルファジオの魔剣から黒い魔力が迸る。ユーリは金の刀に魔力を載せた。


「バルムンドラ帝国の兵士は闇魔法が好きだね。」


 ユーリは金の刀でアルファジオの黒い魔力を無造作に斬った。黒い魔力が霧散する。


「なぜ、私がバルムンドラの兵だと思う?」

「だってグランバリ流の剣術だ。バルムンドラ帝国の兵士でしかあり得ない。」

「ふっ。」


 アルファジオはその問いには答えず、大上段に剣を構えるとユーリに向かって距離を詰めた。なんて速さだ。


「グランバリ流の真髄をお見せしよう。」


 アルファジオの上段からの鋭い斬撃は黒い魔力を帯びて太刀筋が見えなくなった。あれは私には分が悪いがユーリには通用しない。

 なぜならユーリは魔眼を持つ。見えるのだ。



 

 

 ユーリとアルファジオが激闘を繰り広げる中…


「ナルミ、正面!出てくるにゃ。」

「うーん、なぜ?一塊になって正面から出てくるのでしょう?」

「指揮官がバカだからじゃにゃいか?」


 うーん、作戦じゃないのか…。ユーリも指揮官の評価が低かったな。


「撃ちます。」


 私は一塊となって出てきた敵兵をクロスライフルで狙った。そして撃つ!光が濁流となって敵兵を捉えた。間髪入れずに2撃、3撃を撃つ。砂塵が舞う。


「マム、どうかな?」

「半分くらい潰したんじゃにゃいか?」


 そうか、じゃあやっぱり指揮官はバカだったんだ。


「右翼、突入してください。」


 私は通信機で右翼に突入の指示をだした。


「中央はそのまま待機。マム、キングマリオネットで援護をお願いします。」

「わかったにゃ!」


 マムはキングマリオネットを操るとうれしそうに飛び出していった。

 左翼も良いタイミングで展開している。うまく敵兵を挟みうちにできている。だが…


「な、なんだ?こいつらは!」


 リビングコープス。やつらは強かった。砲撃にさらされ、半数を失った恐怖をまるで感じていない。挟撃されてなお、戦線を維持していた。


「中央!10人、私について来てください。残りの指揮は副官に任せます!」


 私は左手のクロスガンに魔力を込めた。右手に魔刀を持つ。


「行きます!」


 私達は戦線の膠着を打破するべく、正門へ駆けた。騎士達はユーリの指示通りに3人で1人のリビングコープスに対処している。

 数は圧倒的にこちらの方が多いが、リビングコープスは恐れを知らない。疲れを知らない。恐怖を知らない。しかも連携すると厄介だ。まるで野獣の群れだ。少しずつ騎士達が押されてきているように感じられた。


「ナルミさん!」


 やっぱりミットフィルさんは強いなあ。剣で牽制しながら光弾を撃ち、1体のリビングコープスの頭を吹き飛ばした。

 よし、私も!私はクロスガンを構えるとミスリル弾を発射した。2体のリビングコープスの胸に穴を開けた。続いて魔刀で剣で斬りかかってきたリビングコープスを袈裟斬りにする。


「ナルミさん!」

「マムが中央に飛び込みます!敵兵を分断して各個に倒します!マム!ここ!!」


 私の指示にマムが飛び込んでくる。ちょうどリビングコープスが展開している場所の中央。


「散れ!にゃ!」


 キングマリオネットが4本の腕で剣を振り回す。よし、うまく分断できた!


「敵を各個に撃破してください!」


 私は魔刀で襲いかかってきたリビングコープスの腕を斬り飛ばした。ミットフィルさんと目線を交わす。うん、ここはもう大丈夫!騎士達も多人数で個々のリビングコープスを攻略している。


(ユーリは?)


 私はユーリの事を振り返った。

 


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ユーリとアルファジオ、戦いの行方はどうなるのか心配になりました……
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