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第83話 領都攻略

「アルファジオ!門が破られたぞ!どうするんだ!!」


 アルファジオは30歳。バルムンドラ帝国の傭兵軍の副軍長を務めている。性格は苛烈。だが分別のある冷静な男だった。それがゆえに帝国でも一二を争う強さを誇りながら冷遇されていた。今回も死の商人という得体の知れない者達との共同作戦だ。しかも指揮官は帝国公爵のバカ息子だ。


(なぜに俺はこんな無能とこんな田舎の領地を守っているのだ…。)


 アルファジオは死の商人の目的を知らされていなかった。受けた命令はサバド男爵領都の制圧とサバド男爵の身柄の確保。

 領都の制圧とサバド男爵の拘束は難なくこなせた。これはアルファジオの高い能力による。しかし、そこからが悪かった。

 指揮官のムリボンがサバド男爵の娘を我が者にしようとしたのだ。しかもサバド男爵の目の前で娘を犯そうとしたらしい。

 その際にサバド男爵に隙をつかれて数名の家令とともにサバド男爵と娘のアリシアを逃してしまう。信頼のできる部下に山狩を行なわせていたが連絡が途絶えてしまった。

 そして領都の正門が砲撃された。非常に高い魔力だ。


「キングマリオネット…か。山狩は失敗したとみて良いだろう。さて…」


 アルファジオにしたらこんな領都を守る大義はないのだ。バルムンドラ帝国が関わっている事を隠蔽してこの地を速やかに離れるべきなのだ。


(なぜ、ムリボンはここに留まろうとする?)


「ムリボン様。この地に留まる理由がございません。王都から近衛騎士団がこちらに向かっているとの情報もございます。囲まれぬうちに脱出するべきかと思います。」


(忍んでこちらを監視している者もいるしな…)


 アルファジオはマム達が領都に侵入した事に気づいていた。


(いっそ、この無能を暗殺してほしいものだが…。そうも行かぬか…)


 アルファジオはマムが忍んでいる場へ殺気を飛ばした。その行為はマム達を萎縮させた。


「アルファジオ!ダメダメだダメだ!なんとしてもここは死守する。ニュークロップ様が到着されるまではな!」


(ニュークロップ?死の商人の"店主"と呼ばれている男か?なぜ?)


「ですがサバド男爵の身柄は拘束できていないでしょう。あの正門にある魔道具はキングマリオネットです。おそらく山狩の部隊は制圧されているかと…」


 お前がバルムンドラ帝国の兵を全て差し向けるから、今ここには薄気味悪い死の商人の兵しかいないのだ。こんな手勢でこんな地を守れるか!とアルファジオは心の中で毒付いた。


「ダメだ!ここのワープホールは死守するのだ!俺はその成果を持って皇帝となるのだからな!!」


(ワープホールだと?どういう事だ…?)


 アルファジオは訝しみながらもこの無能な指揮官を見限る事とした。


(それにしても…。正門に陣取っている奴らは2人、しかも小娘だ。キングマリオネットがあったとしてもサバド男爵を救出するだけの能力があるとは思えない…が。)


 アルファジオは王国の近衛騎士団が到着したらここの指揮を放棄するつもりだった。リビングコープスを使ってもムリボンにはここの防御は不可能だろう。近衛騎士団とぶつけてお互いに潰し合えば帝国のためにもなる。

 その時、アルファジオは一つの噂を思い出した。


「アグリーデーモンズ。王都最強の特別チーム。若い女の2人組だと聞いた…。ははは!あいつらだ!あれが最強の特別チームか!!」


 アルファジオはその苛烈な性格ゆえに強者を求めた。いわゆるバトルジャンキーである。


(面白い!この退屈な任務に目的ができた!あいつらは俺が狩る!!)


 アルファジオはその瞳の奥に暗い情熱を燃やした。



 

 

 私達とミットフィルさんの小隊が合流したのは次の日の昼だった。


「ミットフィルさん!お疲れ様です!」


 私はミットフィルさんにペコっと頭を下げると元気に挨拶した。ふふふ。なんだかちょっと楽しいな。そう思っていたら。


「痛い!!」


 ユーリにお尻をつねられた。何するの!ユーリ!


「ふんだ!」


 ユーリにプイッとそっぽを向かれた。


「ユーリさん、ナルミさん。遅くなりました。近衛騎士団小隊200名。ラブリーエンジェルスの指揮下に入ります!」

「よし、ミットフィル。これより小隊は30分の休憩。各班長はこれから作戦会議だよ。」

「かしこまりました。ナルミさん、よろしくお願いします。」

「はい、こちらこそ。よろしくお願いします。」


 ユーリ…。そんな目で睨まないで…。



 

 

「作戦は単純だ。少数の戦闘なので数で圧倒する。50名は後ろから魔法で援護!これはナルミに指揮をとってもらいたい。門から出てきた所で狙撃しちゃっても良いよ。」

「はい、わかりました。」

「それから150名は3人で1グループだ。必ず3人で1人を相手にすること。必ずだ。敵は50のリビングコープスだ。」

「リビングコープス?ですか…。」

「そうだ。奴らに感情はない。手負の野獣だと思って対処してほしい。」


 各班長は顔を見合わせる。


「魔人化を知っている?」


 ユーリは各班長の顔を覗き込みながら聞いた。


「はい…。出くわしたくないですね…」

「リビングコープスは命令に従順な魔人と思ってくれたら良い。今回に限っては有効な指揮下でリビングコープスの運用はない。なぜなら指揮官はバカだ。行き当たりばったりの指揮命令だろう。だがリビングコープスは強い。統制の取れた群れで襲ってくる魔獣狩りと思ってくれたら近いと思う。布陣は…」


 ユーリは中央に私の部隊。両翼に近接戦闘部隊を配置して正門を取り囲むような陣を示した。


「右は私、左はミットフィル。それぞれの指揮に従ってもらう。マム!」

「はいにゃ!」

「マムと陰はナルミの部隊だ。キングマリオネットを使っても良いけど、光線とロケットパンチは禁止!」

「はいにゃ!」


 マム、返事は良いけどわかってるかな…


「じゃあ全員。配置について。」


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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