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第79話 防衛戦

「うーん、たくさんいるにゃー。」


 猫人族は夜目がきく。マムには小屋を取り囲む多くの兵士の姿が見えた。


『マムさん、聞こえますか?』

「何にゃ、アカネ。僕は忙し…」

『ユーリちゃん達が敵の魔法士と指揮官をやっつけたよ。』


 マムは不気味に笑った。


「そうか…。なら自由に動いても良いにゃ。」

『あ、ちょっと。マムさ…』


 マムは通信機を切ると闇夜の空に向かって光魔法を放った。その魔法は暗闇の中で大きな光を花咲かせた。


「マムさん、あれは?」

「どうせ、この場所はバレてるにゃ!ならば攻勢あるのみにゃ!」


 マムの放った魔法は陰に全力で任務を遂行せよという合図だった。陰達は合図を見て動き出す。

 食糧を焼いた。水瓶に毒を入れた。見張りの心臓を短刀で突き刺した。


「も、申し上げます!」

「何だ。これから総攻撃だぞ。」

「はい、本部と連絡が取れません。それに何者かに侵入され、兵士に犠牲が出ています。」


 この攻撃にあたり指揮官を任されていたのはマントを被った黒ずくめの男だった。名をカブレラと言う。死の商人の中では武闘派と呼ばれる一派に属していた。


「連絡が取れないだと…、しかも撹乱されている…?」


 カブレラは内心で不安を抱えた。サバド男爵側に援軍があるのかもしれない。しかし。カブレラは思った。通信できないのは通信が撹乱されているからだろう。こちらの内部に入り込まれたとしても少数。援軍があるにしても本体はまだ到着してないのであろう。ならば今のうちにサバド男爵の身柄を抑えてしまおう…。


「総攻撃だ!急がせろ。何としても夜明け前にサバド男爵の身柄を抑えるのだ!」

 




「おお、来たにゃ来たにゃ。陰を呼び戻すにゃ。メラニン、魔法攻撃は僕が防ぐ。キングマリオネットを突破して小屋に取り付く歩兵は陰とメラニンに任せるにゃ!」


 マムはそう言うと合図の魔法を空に放ち、陰を呼び戻した。そして、キングマリオネットを小屋の前に進める。


「メラニン、あのからくり人形は目立つな。」

「はい、敵の攻撃の的になってくれています。」


 サバド男爵の問いにメラニンが答えた。確かにキングマリオネットは魔法攻撃の良い的だった。


「軽い、軽い攻撃にゃ!」


 マムは魔法攻撃をキングマリオネットの魔法障壁を広げて防御しながら歩兵を蹴散らしていた。


「数が多いにゃ。」


 マムは良く歩兵を抑えていたがキングマリオネットは大きい。隙を突かれて数名の突破を許してしまう。


「マムさん、気にせず!私達もいますので!」


 メラニンが叫び、数名の歩兵を斬り伏せた。


「メラニン!やるにゃ!」


 しかし、攻防はここから膠着する。死の商人の攻撃が遠方・広範囲からの魔法攻撃へと変化したからだ。四方八方からなされる攻撃をキングマリオネットは受けきれない。小屋に魔法があたり出した。一方の死の商人も歩兵を進める事ができずにいた。


「カブレラ様!」

「今度は何だ!」

「水を飲んだ兵士が腹痛で倒れ出しました。」

「くそ!毒を盛ったな!あの人形もだが…、そうか!陰の仕業か!」


 カブレラは決断した。夜明けも近い、ここで時間を浪費させる訳には行かない。援軍が来たら厄介だ。


「魔人化だ!兵士達を魔人化させる!」


 魔人化には2パターンが存在する。自ら魔石を体内に埋め込み、自身の魔力で魔人化する方法。これは自身の魔力を媒介とするために大幅な力の増強は見込めない。

 しかし、自身の魔力であるため、精神を崩壊させるような事はない。一方、外部から魔石を作用させて他者の魔力で魔人化する方法もある。この場合、外部より魔力を注ぎこめるので身体が持つ限りは力を増強できる。だが普通は外部からの異質な魔力に心が耐えられず身体よりも先に精神崩壊する。

 カブレラが行おうとしている魔人化は後述の方法だった。


「100名ほどで良いか…」


 カブレラは呟くとニュークロップから託されていた魔石を地面に叩きつけて割った。割れた魔石から瘴気のような魔力が立ち上がり、兵士達へと吸い込まれていった。


「ぐあーー」


 兵士達の苦悶の声が響いた。


「ふはははは、あの小うるさい人形と陰を叩き潰してしまえ!」




 

「マムさん、あれはやばいのにゃ!」

「あれは魔人にゃ!たくさんいるにゃ」


 メラニンは密かに覚悟を決めていた。あの数の魔人を相手にするのはいくらキングマリオネットでも無理であろう。


「サバド男爵。お覚悟をいただきたい…」

「ああ、メラニン。こんな事になり、お前には申し訳ない。」


 だがマムだけは戦意を保っていた。


「お前達!何を弱気な事を言ってるにゃ!」


 確かにマムの操るキングマリオネットは強かった。多数の魔人を相手に一歩も引かなかった。一人づつ、確実にキングマリオネットは魔人を減らしていた。しかし、魔人の数が多すぎた。

 キングマリオネットに魔人が取り付き、装甲を叩く。


「ああ、イライラするにゃ!」


 マムはそう言い放つとキングマリオネットに魔糸を通してありったけの魔力を注いだ。


「目から光線を撃つにゃーー。」

 


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