表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/110

第78話 蠢く者達の予兆

 サバド男爵もメラニンもこのマムと名乗った猫人族を信じる事にした。腕は確かだ。しかもこのキングマリオネットというからくり人形からも強大な力を感じる。


「詳細は…。」


 マムからはアリシアとラブリーエンジェルスが邂逅した経緯や、作戦について説明された。


「という訳にゃ。これから私達はここの防衛と敵の撹乱をするにゃ。」

「マムさん、敵の数や位置はわかるんですか?」

「この小屋の周りには300にゃ。位置は全て把握してるにゃ!」


 マムは胸を張って自慢げに答えた。


「明日の朝にはユーリさん達もここへ辿り着くと思うにゃ。それまでメラニンも気合いを入れるにゃ!よし、お前達!散れにゃ!」


 マムの号令で5人いた猫人族達は暗闇の中に溶け込んでいった。


「さて、キングマリオネットの力を思い知るが良いにゃ。」


 ふふふと不気味に笑うマムに頼もしさを感じながらも、サバド男爵はメラニンを見やると肩をすくめたのだった。



 

 

「あそこだね。」


 ユーリはマッパーと暗闇に浮かぶ地形を見比べて言った。

 遮蔽の石は今、アリシアさんの胸元で赤く輝いている。よしよし、アリシアさんは遮蔽の石をうまく使えている。


「アリシア、しばらく不安だろうがここで潜んでいて。後で迎えにくるよ。よし、ナルミ。行こうか!」

「はい!」


 私は背中のバッグからクロスライフルを引き抜いた。そして気配を消しながら敵が陣を張る場所を見下ろせる高台へとユーリと移動した。マッパーによると約100人いる。おそらく山狩の後方支援なのだろう。


「あそこにいるだろう魔法士を潰せたらうれしいなあ。」


 ユーリが私にニヤッと笑いかけながら言った。


「ユーリはどこら辺だと思いますか?」

「そうだな、あのでかいテントかな?魔力が高い。」


 私はユーリが指差したテントをクロスライフルで狙った。威力は1/7くらいかな??


「撃ちますよ…」


 私は炎弾をぶっ放した。灼熱の炎の濁流がテントを直撃して蒸発した。


「ふう!やるね、ナルミ!」


 私達は刀を抜くと一気に高台を駆け降りた。


「な、何ごとだ!!」

「魔法士達が消え去った!!」

「火を!火を消せ!」


 混乱している敵陣へ突っ込む。敵兵を数人、刀で斬った。うん、この魔刀はやっぱりすごい。手にしっかり馴染む。


「何をやっておるか!!」


 怒号が聞こえ、敵兵の混乱が収束した。大きな盾とロングソードを持った背の高い男が数人の兵士を伴ってこちらへと歩んで来た。


「ナルミ、あいつは強いよ。」


 ユーリは両手に魔刀を握ると魔力を込めた。ユーリの髪が銀色になる。私も魔刀に魔力を込めた。うん、あいつは強い。私の髪もユーリと同じ色になったはずだ。


「あんた、バルムンドラ帝国の兵士だな。」


 ユーリの問いかけに男は答えなかった。ニヤッと笑い、


「死にゆくお前らに答える事はない。」


 殺気を込めて剣を構えた。構えに隙が無い!私は緊張した。


「ふん!」


 ユーリは鼻を鳴らすと一気に銀の刀を振り抜いた。銀の粒子が男に迫る。しかし、男は動かなかった。大楯に魔力を込めると銀の粒子の攻撃を散らした。


「この力は何だ…」


 男が驚愕の表情を浮かべる。その時にはもうユーリは男の足元まで迫っていた。


「でやー!」


 ユーリは魔力を乗せた金の刀で男の大楯を斬りつけた。


「簡単には行かないか!」


 金の刀と大楯がぶつかり、魔力の火花が散った。男は思わず片膝をつく。


「お前ら、何者だ…」

「ふん、死んでいくお前に答える事は無い!」


 お、ちょっとかっこよかったんじゃない?どうよ、私の返答は?

 ユーリを見ると悲しそうな顔をしていた。も、もしかしてユーリ、名乗りをしようとしていたの??


「そうか…」


 男は魔力を全身に循環させた。あれは闇の魔法!男が持つロングソードに禍々しい魔力が満ちる。


「ならば死ね!」


 男が振ったロングソードから獣の形をした妖気が放たれた。こ、これはやばい!私は魔刀に魔力を込めて獣の形をした妖気を跳ね返した。だが、まだ私はこの魔刀を使いこなしていない!

 銀色の刀で弾いた妖気は男の肩口を掠めた。く、頭を狙ったのに…。男の肩口から鮮血が飛び散った。


「お、お前らは何者だ!」


 ユーリがすかさずに男に金の刀を振るった。男の姿が闇に溶け込む。くっ、闇魔法は厄介だ!私には男の気配がわからなくなったが…。ユーリには見えている!


「はっ!」


 ユーリは気合いとともに2振りの刀を居合の型で振り抜いた。金と銀の光が混じり合い、刃となった。


「く、空間を斬ったの!!!???」


 輝く光は男が潜んだ闇を斬り開いた。私には空間が切り裂かれ、男ごと斬ったように見えた。男の大楯が真っ二つになり、地に落ちた。男は胸から血が吹き出していた。


「お、お前らはアグ、アグり…デー…」

「ラブリーエンジェルスだ。」


 ユーリは短く答え、男の胸に刀を突き立てた。


「よし、ナルミ。アリシアを連れてサバド男爵に合流しよう。」


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

★や『フォロー』をいただけるととても嬉しいです。

気に入っていただけましたら是非、評価の程をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
取り敢えず男を倒しましたが、今後がどうなるのか気になります!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ