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第76話 サバド男爵領

 私達はアリシアさんを起こさないように静かに外に出た。本当だ…。キングマリオネットがある…。


「ああ、皆さんおはようございます。これは古代の遺物ですか?」


 ソーマエル師がキングマリオネットの事をしげしげと観察していた。


「えへん!そうにゃ!すごいだろ!」


 マムが胸を張って威張り散らす。


「あ、ソーマエル師。これがミシマ分室の陰です。」

「ナルミ!僕の扱いが雑にゃ!これって言うな!」


 もう、マムは"これ"で良いよ…。ソーマエル師が苦笑してるじゃないか!


「でもさ、キングマリオネットがあるならサーラに頼んだ小隊は要らないかもしれないな。でもキングマリオネットは目立つからなあ…。小隊が到着するまで時間もかかるだろうし…。

 迷うなあ…。まあ、キングマリオネットに乗って行けばサバド男爵領には早く着くかもね。」


 確かにこれからは時間がおしい。サバド男爵領までもキングマリオネットに乗って行けばそんなに時間をかけないで到着できるだろう。でも…


「ユーリ、マムと一緒に来た猫人族達がぶっ倒れているのですが…。マム、キングマリオネットにどうやって乗るの?」


 マムは不思議そうな顔をした。


「乗る?乗るってなんにゃ?しがみつくにゃ!」


 おお、やっぱり…。これは却下かも…


「ならば後ろに荷台をつければ良いと思う。2時間くらいもらえたら取り付けるが?」


 ソーマエル師!何て素晴らしい!


「ならば、あの猫人族達にも休憩させてやろう。ナルミ、ソーマエル師に防具をお借りしよう。マム、荷台をキングマリオネットに付けるのに立ち会っておいて。」


 マムはわかったにゃ、と答えるとキングマリオネットに魔糸を結びつけ始めた。



 

 

 ソーマエル師に甘えて私達は胸当をいただく事にした。私達の着ている魔鋼糸のジャケットをさらに進化させた胸当だ!魔鋼糸にオリハルコンを糸状にして編んだ一品だ!軽くて強度も申し分なし!

 ソーマエル師からは『ラブリーエンジェルスに使ってもらえるなら!』との事でいただける事になった。本当に本当にありがとございます!

 キングマリオネットには幌つきの荷台が無事に取り付いた。サスペンション?という物が付いており、揺れが少ないそうだ。

 水と食糧もご厚意で分けてもらった。


「ソーマエル師、皆さん、ありがとうございました。」

「無事の任務遂行を願ってます!」


 私達はソーマエル師の工房に別れをつげ、街道をサバド男爵領に向けてキングマリオネットで爆走した。


「ぐあ、…おう、君達、が、よくこんなのにしがみついて森を踏破…ぐふ、し、して、がは!」


 し、舌を噛んだ…。


「マムさんは鬼にゃ、鬼畜にゃ、でもこれなら全然平気にゃ!」


 そ、そうなのか。猫人族、恐るべし。


「アリシアは大丈夫?」

「へ、へ、平気で、です…」


 アリシアは青い顔をしてユーリに答えていた。本当に弱音を吐かない。強い子だ…。


「もう少しでサバド男爵領にゃ!」


 も、もう?は、速い。徒歩だと3日はかかるぞ?工房を出発してからまだ一日も経っていない。(マム、夜中も爆走するんだもん…)ちょうど今は地平線に太陽が昇ってきた時間だった。


「関所が見えて来たにゃ!」


 ちょっとちょっとマム!関所が見えたならスピードを落としてよーー。ほらほら、槍を持った兵士がたくさん出て来たよ。しかもすごく殺気だってる!やる気だ!


「マム!ストップ!!」


 ユーリが叫び、マムがキングマリオネットを止めた。があああ、急停止しないで!!

 アリシアさんを抱き抱えて咄嗟に丸まったが、強かに身体をぶつけた。マム、後でぶっ飛ばす!!

 急停止したキングマリオネットを兵士が取り囲んだ。


「何者か?」


 兵士に鋭く誰何された。


「私はサバド男爵の娘、アリシアです。責任者はどなたですか?」

「アリシア様?本当だ。本当にアリシア様だ。ご無事だったのですね。」


 年嵩の兵士が槍を下ろしてアリシアに礼をした。


「サバド男爵邸が襲撃されて、男爵も家令の方々も行方不明。我々はどうする事もできず…」

「ご苦労様でした。王都にはお父様の危機は伝わっています。国王陛下が手を差し伸べてくださるでしょう。」


 アリシアさんは荷台から降りると跪いている兵士達の前に進み出た。


「私はこれからラブリーエンジェルスと一緒にお父様を救出します。あなた達はこの関所をそのまま管理してください。王都から軍が来たら通信機で連絡をお願いします。その時に指示させてもらいます。」

「アリシア様、かしこまりました。あの…、ラブリーエンジェルスというのはアグリーデー…」


 ユーリ、そんなに睨まないであげて。皆さん、怖がっているから。


「し、失礼しました!」


 兵士達は一斉に私達へ敬礼した。私は答礼する。あれ?ユーリ?

 キュピン!ユーリは満面の笑みを浮かべると顔の横でピースサインを決めた。


「皆んな、ラブリーエンジェルスだよ。よろしくね!」


 兵士の皆さんは一瞬ポカンとした顔をしたが…。


「はい、よろしくお願いします!あの、あ、握手してください!」

「あの、俺も握手してください。」


 いつも思うが、ユーリは精神操作魔法が使えるのかしら?私からしたら、気持ち悪い笑顔なんだけどなあ…

 


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ユーリの意外な一面があるとは……これはこれでありかもですね。
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