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第71話 叙勲式(2)

 正門で私達は警備の皆さんから最高敬礼で迎えられた。


「ご活躍!いつも拝見しております!」

「今日のお姿。凛としていて素敵です!」


 口々に私達の事を褒めてくれる。ふふふ、気分が良い。ユーリもデレっとした表情をしていた。


「ドラゴンを倒して配下にしたとか。尊敬しています。」


 配下?卵ですけど…。私は卵を見てそっと思った。


「それでは控室にご案内します。」


 初級騎士君に王城内の控室に案内された。


「うわあ…」


 控室は本当に豪華だった。まばゆいシャンデリア(業火なシャンデリアとはできが違う…)が煌々と灯り、座り心地の良さそうな椅子が数脚配置されていた。

 煉瓦で組み上げられた暖炉には赤々と薪が燃え、とても暖かい。何よりも壁に飾られた風景画(春の畑で土を耕す農夫を描いた絵だ!)に私は心を奪われていた。なんて素晴らしい絵なんだろう。


「ユーリ、あの絵が素敵ですね…」


 だがユーリは絵には興味がないらしい。


「ナルミ!お菓子が置いてあるよ。」


 部屋の中央に配置された重厚で大きな木のテーブルにはティーセットが置かれていた。

 早速ユーリがもしゃもしゃとお菓子を食べ出した。


「もう。ユーリは色気より食気ですね。」


 私もユーリの隣でお菓子を食べる。


「ナルミだって同じじゃないか。」


 そこへ妙に凛とした雰囲気をしたガッチリとした体型の初老の男性に声をかけられた。


「ユーリ殿、お元気そうですね。」

「ああ、ミツルギさん。やっぱり王城の食べ物は美味しいね。」

「ははは、ユーリ殿は相変わらずですな。初めまして。ミツルギ・ワーレインと申します。」


 あれ?聞いたことのある名だな。


「ナルミ・ジェイドです。よろしくお願いします。」

「そうだ。ミツルギさん。ソーマエル師への紹介状を書いてくれるって聞いたんだけど。」


 あれ?もしかして、この人!ミツルギ宰相殿!!


「もちろんですとも。あとで届けさせますが、作りたいのはナルミさんの刀ですよね。」

「うん、そうだよ。」


 うーむ、と唸りながら宰相は私の事を見ていた。緊張するなあ…


「魔力の巡りが素晴らしい。それに体幹がブレてない。うーむ。」


 ユーリがニコニコしながらその様子を見ていた。


「どうよ!私の相棒は!素晴らしいでしょ?」


 宰相はまたうーむと唸ると両手を挙げた。


「ユーリ殿。参りました。これなら私の紹介状など要りませんよ。後で兄を連れてきます。」

「え?ソーマエル師が来てるの?」


 ソーマエル師って宰相のお兄さんなんだ!


「はい、第一王子が成人されますのでお祝いに刀が送られます。その打ち合わせのためです。」


 それよりも…、と宰相は言葉を続けた。


「ユーリ殿もナルミさんからも不思議な魔力を感じます。これは…」


 宰相は目を閉じると手を私達の方へかざした。


「ミツルギさんは優秀な魔法士なんだ。」


 ゴホン、と咳払いをして宰相は私達の事を見つめた。


「ドラゴンの力…なのか…」


 ユーリは頷くと掌を宰相に向けた。ユーリの髪が銀色に輝く。そして掌から銀色の粒子が立ち上がった。


「こ、これは。金属…なのか…」

「そう。ミスリルだよ。」

「ミスリル…」

「ナルミは物質化もできるよ。」


 宰相は大きく目を見開くとふうーと大きく息を吐いた。


「兄ならこの力を活かせる刀を打つ事ができるでしょう。素晴らしい力だ…。それではまた後ほど。」


 そう言うと宰相は手を振って他の参加者の所へ歩んで行った。素敵な人だな。




 

 式典が行われる部屋は控室の10倍豪華だった。玉座(黒檀で出来ており、座面はとてもふかふかみたいだ。宝石が散りばめられており、ピカピカだ!)の後ろには絹で織られた大きな国旗と国王旗が翻っており、近衛騎士団の精鋭が周りで整列していた。ミットフィルさんは…いないなぁ。残念。

 天井にはステンドグラスが嵌め込まれていた。すごいなあ。とても荘厳だ。

 私達は騎士として最後に表彰された。(はあ、名前を呼ばれるまで長かった…)


『特別褒賞紫章を授与する。ラブリーエンジェルス!前へ。』


 私はユーリと並んで緊張しながら国王陛下の前へ進み出た。


「ユーリ・ミコシバ極級騎士、ナルミ・ジェイド上級騎士。国の危機にあって其方らの働きは見事だった。」


 国王陛下から何やら豪華な指輪を頂いた。とてもきれいな紫色の宝石がはまっている。アメジストかな??

 その後は文官の皆さんの表彰だ。あ、あの人はサバド男爵だ。あの人も受賞したんだ。


「あの人は曲がった事が嫌いな頑固者なんだ。だからあんな事を御者に言わせたんだと思うよ。でもすごい人なんだ。商売を通じてこの国に多大な利益をもたらしている。自分は質素な暮らしをしているのにね…。

 さすがに受賞式には豪華な馬車で来ていたけどね。貧しい商家の出身なんだけど、功績が認められて一代男爵に任じられたんだよ。」


 ユーリがこんなに褒めるなんて、すごいなあ。偉そうなおじさんかと思ってた…

 しっかし、長かった。式典の間中、早く終わらないかな…と考えていた。でも!次はお待ちかねの!!


「さあ、ナルミ!式典が終わったらご飯の時間だよ!!へへへ、何食べようか??」


 へへへ、私も楽しみにしていたのだ。何食べようかな…と思っていたら。


「ユーリ様、ナルミ様。こちらにお越しいただけますか?」


初級騎士君に別室へ連れ出されてしまった…


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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式典が終わったら、大変な事に……どうなるのか不安になりました……
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