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第64話 銀灰の竜

「あそこだね…。遺跡かな??」


 僕達の目線の先には人工物と思われる塔が立っていた。30mくらいか?そんなに大きな物ではない。大きくはないが異様だった。塔の周りをあらゆる魔獣が取り巻いているのだ。その数、80くらいか…


「うーん、やっぱり室長の仕事は何かあるんだよ。こんなの見たことないよ。イーロン達は見たことある?」

「バンが昔から古代遺跡の探索には詳しいんです。どうだ?バン。」


 バンさんは首を傾げた。


「あのタイプの塔はたまに見かけますよ。魔道具などが封印されている事が多いんです。でも魔獣が塔を取り巻いている光景なんて見たことも聞いたこともない…」


 ユーリさんとナルミさんは顔を見合わせていたが何かを決意したかのように頷きあった。


「ムーンとアイシャ、マルバに遮蔽の石を渡す。君達はここで待機だ。私達は塔を攻略だ!イーロン、付き合ってくれる?」


 イーロンさん達は顔を見合わせて大きく頷いた。


「もちろん。俺達への冒険者ギルドからの依頼は魔獣が集まる事への調査だ。逆にラブリーエンジェルスの同行があるのは心強い。」

「やっぱりS級が派遣されるだけに難易度が高いよ…」


 へへへ、と5人で笑いあっていた。悔しいが僕達では戦略にならない。足を引っ張るだけだ。


「わかりました。僕達はここで待機します。」


 ナルミさんがアイシャに遮蔽の石を渡した。


「魔力を込めると認識魔法や気配を察知する相手から隠れる事ができる。うまく使ってね。」


 5人はそれぞれの武器を手にした。


「それじゃあ、行くよ!」


 僕は悔しかった。次に同じような事があったらユーリさんの横にいたいと思った。だが今は見送る事しか出来ない。


「ご無事を祈ってます!」


 アイシャの言葉を合図に5人は塔をめがけて走り出した。



 

 

「へへへ、ムーン達にはカッコつけたけど。このくらいの魔獣なら蹴散らせるけどやって良い?」

「そう思っていました!お願いします!」

「それじゃあ、ヒソカ。防御をお願いね!雷を落とす!」


 ユーリは刀を空に向けると魔力を放出した。あれは武闘大会の時に使っていた雷魔法!しかも武闘大会の時よりも多量の魔力。


「いくよー」


『バリバリバリ』


 轟音がして無数の落雷が辺りを明るく照らした。ヒソカさんが必死にレジストしている。


「は、は、は!我の力を思いしれーー」


 ユーリ…。完全に悪ノリしてる…しかも悪い顔してるよ。はあ、また残念美女だな…


「ユーリさん!もうそのくらいで…塔まで壊れちゃいそうです。」

「えー、これから私の大魔法が炸裂するんだけど!」

「そ、それはまた今度の機会に…」


 まあ、良いんだけど。ユーリのおかげで魔獣は一掃されたと言って良いだろう。


「バン、塔の中を見たいけど先導をお願いできる?」

「ユーリさん、かしこまりました。では行きましょう。」


 私達はバンさんを先頭に塔の入り口まで進んだ。


「ナルミ。」


 私はクロスガンに魔力を込めると塔の入り口に石弾をぶっ放した。入り口にぽっかりと穴が空いた。


「よし、中へ入ろう。」


 バンさんが頷いて塔へ一歩を踏み出した。その瞬間だった。塔の中で大きな魔石が光出した。


『ユーリ様!空間が歪んでいます!何かが転移してきます!!とても大きな魔力です!!』


 カガリさんの絶叫が通信機越しに聞こえた。


「ユーリ!あそこです!」


 それは塔の上空だった。広範囲の空にヒビが入り、それは現れた。


「ど、ドラゴン!!」


 バンさんの悲鳴にも似た声が聞こえてきた。


「ユーリ!」

「あれは『銀灰の竜』だね。とても賢く、魔力の強いドラゴンだ。」


 ドラゴンは空間に空いた穴からその巨体を現しつつあった。


「でかい…」


 イーロンさん達はドラゴンを前に死を覚悟したのかもしれない。惚けたように銀色の体躯をしたドラゴンを眺めていた。


「矮小なるものよ。この塔に入り、我を呼び出したものよ。その契約を我に示せ。さもなくばその力を我に示せ。」


 ユーリはドラゴンの前に進みでると、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「銀灰の竜よ。私はユーリ・ミコシバ。炎赤の竜に認められしもの。」

「確かにお前に宿る魔力は炎赤の竜の息吹を感じる。」


 ドラゴンはかすかに身震いをしてユーリを見下ろしていた。


「我らはあなたの契約を司るものではない。できればこのまま、この場を去りたいと思っている。」


 ドラゴンはユーリの言葉にゆっくりと首を振った。


「炎赤の竜を倒した娘よ。その力は我も認めよう。だが我は古の契約に従い、契約を示したものに従わなければならぬ。我の契約はあのものにより示された。」


 私はドラゴンの視線を追った。


「マルバ!」


 そこには奇妙な仮面を手にしたマルバがいた。


「あれはシバの仮面…」


 マルバはシバの仮面を両手で掲げると苦々しい声で銀灰の竜へと言った。


「銀灰の竜よ!古からの契約だ!あいつらを殺せ!!そしてこの仮面に力を与えよ!!」


 銀灰の竜はユーリを再び見やると首を振りながら答えた。


「炎赤の竜を倒した強き娘よ。我にとって契約は絶対のもの。邪悪で弱きものにも従うのが古よりの掟。」


 ドラゴンは空に向けて咆哮した。その声は巨大な魔力に満ち、私達の心に恐怖を植えつけた。


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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マルバを倒さなければ戦いは終わらない。どうなるのか気になります。
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