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第63話 ナルミの訳

(強い。目の当たりにすると強さがよくわかる。)


 サーペントの3人。とても連携がうまい。後衛のイーロンさんが牽制して足を止めた人型の魔獣ゴブリンをヒソカさんとバンさんが光弾を撃って仕留める。


「マルバ!足を止めるだけでいい!魔術士の攻撃に任せろ!」

「ふん!腰抜けが!俺はやれるんだ!!」


 マルバは闇雲に剣を振るうがゴブリンには当たらない。動きが場当たりなので足止めにもなっていない。イーロンさんはそんなマルバを庇いながら剣を振るっていた。まだまだ余裕がある。一方…

 ユーリさんの動きは魔術としか思えなかった。最低限の動きでゴブリンが振るう剣をかわしている。守りの動きが最小限なので剣撃が鋭い。しかも刀には多量の魔力がのっている。

 そして、ナルミさん。何やらアイシャに教えていた。


「アイシャ、見ててごらん。」


 ナルミさんはそう言うと刀を抜いた。あ、あの構えは朧流・月華乱舞。月華乱舞は連続する円の攻撃。水平、下段から上段。連続して円を描くことにより、連続した攻撃と守りを同時に行う朧流の型。しかも、


「美しい…」


 斬られて舞い散るゴブリンの血が花弁のように舞う。


「アイシャ!」

「はい!ナルミさん!月華乱舞…」


 アイシャも剣を振るう。ナルミさんのように連続した円運動。ナルミさんには及ばないが様になっている。数匹のゴブリンがアイシャに斬られて倒れた。


「はあはあはあ。」


 アイシャは肩で息をしていたが、ナルミさんは平然としている。すごいなあ。


「月華乱舞!」


 僕もナルミさん同様に連続した円運動を行った。ゴブリンを4匹切り伏せる。


「おー、ムーン!やるじゃない!」


 はあはあはあ、ユーリさんに褒められた。しかし、この技は体力を消耗する。ナルミさんの体力はどうなってるんだ…?


「とりあえず、魔獣は追い払えたね。少し休もうか。体力を回復しよう。」


 ユーリさんは僕達の様子を見て言った。


「ムーン、アイシャ!ちょっとおいで。」


 ユーリさんに呼ばれた。何だろう?


「あなた達は身体強化魔法は使える?」

「はい、使えます!」

「ナルミの動きを見て、何か気づかない?」


 うーん、僕にはわからない…


「もしかしてナルミさん、身体強化魔法を使ってるんですか?」


 隣で水を飲んでいたナルミさんが頷く。


「でも、身体強化魔法を長時間使ったら魔力が尽きちゃう。体力は持つと思いますが…」


 ナルミさんはちょっと考えてから説明してくれた。


「私の周りには体力、魔力が無尽蔵にある化け物美女がいるんです。ユーリとか、サーラさんとか、ユーリとか。」


 ユーリさんの事を2回言った…


「化け物美女に付き合っていたらそれこそ身体が持ちません。私はユーリと違って繊細ですから、繊細な事をしています。」

「ナルミ…私だって繊細…」


 ユーリさんがちょっと悲しそうな顔をした。


「私は刀を振るう時、防御の時など必要な時に必要な力で必要な身体の部位を身体強化しています。」


 な、な、ナルミさん。すごい事をさらっと言ったぞ!隣で聞いていたイーロンさん達も口を開けて呆然としている。


「難しいですよ。刀を振るう時にどの筋肉がどのくらいの力で強化すれば良いのか?走る時にどの筋肉をどのくらい使っているか?わからないと自分をコントロールできなくて自滅します。でもこれくらいの事をやらないとユーリには追いつけない…」


 アイシャもすごく難しい顔をしていた。


「でも一つだけ習得するのに簡単な方法があります。練習が必要だけどね。朧流の型の反復練習です。身体強化魔法を使いながら…ね。そのうち、意識しないでも必要なだけ必要な所へ魔力をコントロールして送りだせるようになります。」


 か、簡単ではない。簡単ではないが努力すればできる!


「ナルミさん、こんな秘伝を簡単に教えてしまっても良かったんですか?」


 イーロンさんが真剣な顔でナルミさんへ聞いていた。


「うーん、別に秘伝ではありません。それに私の話はきっかけでしかありません。ここから極められるかどうかは自分の努力次第でしょ?」


 本当に本当にこの演習に参加して良かった。


「さて、休めたかな?そろそろ次の魔獣が来るよ。」


 ユーリさんはそう言うと立ち上がった。イーロンさん達も立ち上がる。


「じゃあ、魔力ポイント目指して進みましょう!」



 

 

 過酷だった。魔獣の大量発生。こんなに一つの地域に魔獣が集まる事があるのか?しかし、ユーリさんの指揮は的確だった。確実に最小限の行動で目的地に近づいていた。


「どう?まだ大丈夫?」

「そうですね…。マルバとアイシャがそろそろ限界ですね。」


 イーロンさんもきちんと皆んなの事を見ている。


「そうだね。あまり無理しても良くないね。ナルミ。」


 ユーリさんはそう言うと胸元をトントンと叩いた。


「はい、わかりました。」


 ナルミさんはそう言うと胸元に光っていた青い石に魔力を込めた。青い石が赤く美しく光り出す。あれ、魔獣が引いていく?いや、僕らを見つけられないのか…。


「ああ、遮蔽の石と言うんだ。ナルミがララーシャからもらったの。魔力感知、気配を断つ事ができる。まあ、最初から使っても良かったんだけど、演習にならないからね。」


 さすが王都最強の特別チーム。すごい装備を持っているなあ。うん?ララーシャ?


「ララーシャってエルマ精霊国のララーシャ女王ですか?」

「そうだよ。私もほしかったなあ。ララーシャ、もう一個持ってないかな。」


 もうユーリさん達の事では驚かない!と思っていたが、ララーシャ女王と知り合いなのか?


「えーと、なぜにララーシャ女王とお知り合いなのですか?」

「え?友達だから。」


 と、友達??ララーシャ女王と?ドラゴン討伐の英雄、ララーシャ女王と?

 僕は吟遊詩人が謳う詩の一節を思い出していた。


『かくして金の髪を靡かせた少女はドラゴンの羽を切り落とし、邪悪なるドラゴンを地に落としめた。そしてララーシャは地に落ちたドラゴンに氷の息吹を吹きかけ、その巨体を永遠に封じたのだった…。』


 ナルミさんが複雑な表情をしていた。ユーリさんは…無表情。


「え、えっとー、ララーシャ様のドラゴン討伐…『金の髪の少女』ってユーリさんなんですか??」


 アイシャがおずおずとユーリさんへ問いかける。


「うん、まあ、そうだよ。でも恥ずかしいからあまり言わないでね。」


 ユーリさんの言葉にはさみしさが混じっているような気がして、皆はそれ以上この話をしなかった。

 それにしても僕の女神様(ユーリさん曰く、皆んなのアイドルらしいが)は規格外だ。本当に素晴らしいぞ!なんて素敵なんだろう。


「ともかく、身体を休めながら魔力ポイントを目指すよ。ほら、ムーン。ん?私の顔に何かついてる?」


 僕はユーリさんの顔に見惚れていたらしい。


「い、いえ!」


 また、アイシャに脇腹をゲシゲシ殴られた。本当に痛いから!勘弁してくれ!

 


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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アイシャ……もしかすると嫉妬しているのでは?
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