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第62話 それぞれの実力

 次の日は森林地帯に入る。僕とアイシャはヒソカさんにマッピングのやり方を教わりながら進んでいた。


「教科書の通りにやると地形によってはズレるんだ。だから魔法を組み合わせる。ただし、自分のスタイルってあるだろ?だから自分なりに修正するんだ。」


 なるほど!経験を積んだ冒険者の言葉はとても勉強になる。そうだよな。自分なりの工夫が大事なんだよな。少し前をユーリさんが歩いていた。あれ?あの覗き込んでいるのは何だろう?


「げ!ユーリさん、何を見ているんですか?」


 変な声をあげてヒソカさんがユーリさんの覗いていた物を見ていた。


「ああ、"マッパー"だよ。地形や魔獣の位置なんかがわかるんだ。あ、でも君達には使えないよ。ミシマ分室の魔法士にしか使えない魔道具なんだ。」

「何て規格外な物を持っているんですか…はあ、ラブリーエンジェルスが最強の特別チームと言われるのが何となくわかりました。」

「あ、ちなみにあと3分で狼型の魔獣に遭遇するよ。えーと、14匹だ。」

「はっ!俺が全て叩き斬ってやる!」

「あ!ダメです!マルバ!」


 マルバはナルミさんの制止を振り切ってユーリさんが示した方向へと走りだした。


「本当に!あいつは!」


 イーロンさんがマルバの後を追った。


「ナルミ。」

「はい。」


 ナルミさんは背中のバッグから長い筒状の武器(クロスライフルと言うらしい。)を取り出すとマルバが走って行った方向へ構えた。それにしてもあんなに長い魔道具をどうやってあの小さなバッグに入れていたのだろう??

 ヒソカさんとバンさんがそれを見て驚いていた。


「ナルミさん、そんなに複雑な魔道具で大丈夫なんですか?」

「ふふふ、まあ見ててごらんよ。」


 なぜか、ユーリさんが自慢げに答えていた。ユーリさんのドヤ顔もかわいいなあ。


「あ、ムーンとアイシャも狙撃の用意をして。ヒソカとバンにアドバイスをもらうと良いよ。ナルミは参考にならないからね。さあ、そろそろ戦闘が始まるよ。」

 




 マルバが走っていった方向は木が覆い、視界がほとんど遮られていた。わずかに獣道があり、マルバとイーロンさんはそこを進んだようだ。まもなく怒号と獣の吠える声が聞こえてきた。


「マルバ!下がれ!お前の腕では無理だ!下がれ!」


 イーロンさんの声が聞こえる。マルバは濃い森の木々に邪魔されて思うように剣を振えてないのだろう。私は前方に意識を集中して見えない魔獣を見た。クロスライフルを構える。


『パス、パス、パス』


 とりあえずの3連射。当たった!


「おおー、ナルミさん!すごいなあ。」


 ヒソカさんとバンさんが感心していた。


「確かにこの射撃はムーン達の参考にはならんな。」


『パス、パス、パス』


 続けて3連射。イーロンさんが4匹倒したみたいだな。


「ムーン、アイシャ!4匹こっちに来るよ。」

「ユーリさん、見えないんですが!」


 ヒソカさんがムーンの肩に手を置いた。


「見えないのは当たり前だ。お前、魔力は感じるだろ?」

「はい!」

「こっちに向かって来る異質な魔力がわかるか?」

「はい!」

「よし!それを打ち抜け!アイシャはどうだ?」

「はい!わかります!」


 ムーンとアイシャはロッドに魔力を込めると光弾を放った。うん!上出来!光弾は過たずに魔獣を撃ち抜いた。


「やるね!」


 ユーリはそう言うと刀に魔力を込めて光刃を放った。ユーリの放った大きな光は2匹の魔獣を粉砕した。周りの木々諸共…


「ユーリさん、やり過ぎでは…」


 ムーンのつぶやきが聞こえたが、ユーリが狙ったのは狼型の魔獣ではない。


「ムーン君、あれを見てごらん。」

「な、な、何て事だ!」


 私が指し示した方向にはきれいに分断されて落ちてきたロック鳥が見えた。


「魔獣のテリトリーに入ったんだ。ヒソカ、バン!イーロンを呼び戻せ!固まって無いと各個撃破されるぞ。」


 すぐにバンさんが光の玉を上空に打ち上げた。ほどなくしてイーロンさんとマルバが戻ってくる。


「よし、皆んな。私達の目的はこの魔獣の発生の原因を調べる事にある。ここはもう魔獣のテリトリーだ。私達はもう探知されている。ならば魔獣が発生している原因を叩き潰すのが良いだろう。

 前衛は私とムーン。ヒソカとバン、アイシャは魔法で私達の援護。イーロンとマルバは後衛。ナルミは遊撃。手数の足りない所をフォローして。

 カガリ!半径5km内!魔力の高いポイントを探して!」

『ユーリさま、異常な魔力ポイントがあります。マッパーに示します。』

「皆んな、目指すはここだ!」


 ユーリがマッパーを示す。


「待て!何の権利があってお前が仕切っている?」


 マルバの言葉にユーリが目を細めた。


「ユーリは極級騎士です。一番実績がある。サーペントの皆さんはどうですか?」

「ユーリさんが指揮するのが自然でしょ。私達はユーリさんに従います。」

「は!この腰抜けが!ではお前は今までどんな場面で指揮をした事がある?俺は小さい頃から指揮官としての…」


 私はマルバの物言いにとても頭にきていた。大人気ないとは思ったが…マルバの言葉を遮って言い放った。


「地方貴族の反乱。知っているでしょ?」


 私の問いかけに反応したのはムーンだった。


「この間、ゼミの課題でそれぞれの指揮官の指揮能力や戦術についてシュミレーションしたんです。

 王立軍の偵察隊を率いていた指揮官は天才です!統率力、戦術、組織をまとめあげる力!どれをとっても最高レベルです!

 2,000からの守備隊を100名の偵察隊で攻略するなんて普通ではありえない…」

「ユーリだから。」

「は?」

「偵察隊の指揮官はユーリだから!」


 ムーンはポカンとした顔でユーリを見ていた。それはイーロンもアイシャも同様だった。


「は!そ、そんな真偽もわからない話をされてもな…。」


 しかし、明らかにマルバは動揺していた。それ以降、ユーリが指示することに何も言わなくなった。


「えーと。ユーリさんって何者なんですか?」


 アイシャが気まずそうにおずおずと聞いてきた。


「ふ、ふ、ふ。知りたい?」

「はい、是非!」

「私は皆んなのアイドルだよ!」


 キュピン!ユーリはウインクしながらダブルピースをして舌をペロッとだした。

 だからユーリ、気持ち悪いですから!!なのに…


「可憐だ…」

「う、う。素敵すぎる。」

「思い残すことは…無い。」


 ムーンもヒソカさんもバンさんも。目が腐ってるんじゃないの??まあ、ムーンはアイシャに脇腹をゲシゲシと殴られていたが…


「はい、はい。それでは魔力ポイントまで急ぎますよ。」


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

★や『フォロー』をいただけるととても嬉しいです。

気に入っていただけましたら是非、評価の程をよろしくお願いします。

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