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第56話 後の祭り

 逃げるように私達は広場の隅へとやってきた。


「もう!ユーリ!どうするんですか?!!」

「わ、私のせいじゃないだろ!半分はナルミが悪いじゃないか!」


 ふんだ!私達が喧嘩をしていると…


「ユーリ姉ちゃん、ナルミ姉ちゃん。喧嘩はダメだよ。」

「そうだよ。私達が喧嘩してたらお姉ちゃん達がよく言うじゃん。」


 むむむ、ぐうの音も出ない。はい、その通りです。


「ユーリ、ごめんなさい。」

「いや、私こそ言い過ぎた。ごめん。」

「うんうん、それで良いんだよ。」


 ユーリと私は顔を見合わせた。へへへ。


「ところで君達の屋台はどこかな?」

「こっちだよ!」


 子供達に引っ張られて連れて行かれた先には。


「ユーリさん、ナルミさん!いらっしゃいませ!」


 院長先生以下、孤児院の子供達が屋台でマフラーを売っていた。なかなかに売れ行きも良いようだ。


「お客さんも結構いますね。」

「はい、おかげさまで!ユーリさん達もどうですか?安くしますよ。」


 えー、そうだなー。ユーリと私は屋台に飾ってあるマフラーを一つ一つ眺めた。本当によくできてるなあ。


「あ、私これ!これがほしい!」

「ナルミ姉ちゃん!それ、私が作ったのー」

「お!そうなんだ!きれいな模様だね。」


 そのマフラーは緑をベースに白色のグラデーションがかかったきれいな模様をしていた。


「私はこれにしようかな。」


 ユーリはグレーの緻密に編まれたマフラーを選んでいた。


「ついでだからカガリとアカネにもプレゼントしようかな。」


 ユーリはいそいそとマフラーを選び始めた。


「これとこれ!院長先生、全部で4ついただきます!」


 ユーリが選んだのは紺色と橙色の緻密に編まれたマフラー。ユーリはこういうシンプルなのが好きなのかな?


「え?丈夫で暖かそうだろ!」


 なるほど、実質本位ね。

 院長先生が提示した金額はとてもお安かった。


「院長先生、これは子供達ががんばった成果だから。」


 そう言うとユーリは院長先生に多めにお金を渡していた。


「ありがとう。ユーリさん。ナルミさん。」


 マフラーを買った私達の周りに子供達が集まってきた。


「ねえねえ、ナルミ姉ちゃん!」

「なあに?」

「初代国王様の紋章を壊したのってナルミ姉ちゃんなの…?」


 以下略



 

 

「あれから大きな問題もなくて良かったね。」


 親衛隊本部。もうすぐ祭りは終わる。


「良くありません。サーラ隊長の人使いの粗さと来たら…、ユーリ様に匹敵します…」


 ドヨンとしたカガリさんとアカネを前にユーリと私は苦笑せざるを得なかった。


「うんうん、二人とも。ありがとう。おかげで楽させてもらったよ。」

「うーん、ユーリ様のお役に立てたなら、全然構いませんわー。」

「うん、私も色々勉強させてもらって楽しかったよ。」

「そろそろ、国王陛下の締めのお言葉ですよ。ユーリ、配置につきましょう!」


 そう、祭りは国王陛下のお言葉で幕を閉じる。その後は後夜祭。ゆっくりと皆んなでミハルの店のお料理をいただく予定。これを楽しみにがんばったのだ!!


「よし、ナルミ。行こうか!」


 私達は王城内の広場へと足を運んだ。貴賓席には着飾った各国の大使や貴族げ並び、壮観だった。

 周りは近衛騎士団の精鋭が居並び、警護していた。

 突然、『わーーっ』と歓声が上がった。バルコニーに国王陛下が姿を現しのだ。ミットフィルさんとサーラさんが両隣に並び、警護についている。

 あの二人は美男美女でとても絵になる。


「かっこいいなあ…」

「何言ってるの。私はナルミの方が素敵だと思うな!」

「あ、ありがとうございます。でも褒めても何もでませんよ。」

「あ、陛下の演説が始まるよ…」

 

『この国は幾多の困難に立ち向かいながら100年の時を皆とともに歩んできた。』

 

 国王陛下の演説は魔法で拡散されて王城の外の広場でも聞けるようになっていた。王城内、そして王城の外に集まった人々は国王陛下の言葉に耳を傾けていた。

 

『祭りの初日に強大な敵に襲撃されたことは皆も承知であろう。だがこの国は精鋭な騎士団により強固に守られている。余はその事を確信した。国はこの騎士団ある限り揺らぐことはないであろう』

 

『わーーー』大きな歓声が響く。国王陛下はそれを手で制して言葉を続けた。

 

『特に近衛騎士団親衛隊は未然に危機を防いでくれた!礼を言う。』

 

 おー、ミットフィルさんは報われたなあ。良かった。

 

『そしてもう一チーム。この者達に余は命を救われた。国の危機にあって何度もこの国はこの者達に救われている。最大限の謝辞を!!』

 

 そう言うと国王陛下は右手を軽く握り、胸に当てた。『うわーーー』と今日一番の歓声があがる。すごいなあ。こんなに敬意を表されるチームがあるんだ…。

 

『アグリーデーモンズ!前へ!』

 

 私はユーリと顔を見合わせた。アグリーデーモンズ?私達じゃないよね?

 だって私達はラブリーエンジェルスだし。まごまごしていると再度、国王陛下から名前を呼ばれた。

 

『アグリーデーモンズ。ユーリ・ミコシバ極級騎士。ナルミ・ジェイド上級騎士。前へ。』

 

 ユーリと私はバルコニーの下、国王陛下の前へ進みでた。とても挙動不審だったに違いない。

 

『アグリーデーモンズ。そなたらには特別勲章紫章を授与する。追って授与式を行う。ユーリ、皆に言葉を!』

 

 ユーリは目を白黒させていた。ユーリ、こういうスピーチは苦手だもんなあ。でも意を決したのか、ユーリは真面目な顔をすると広場の方を向いた。そして大きく息を吸い込んだ。

 

「私達は、、、ラブリーエンジェルスだーー」

 

 魔法士によって増幅されたユーリの声は王都中に響き渡った。はあー、また変な噂が立つに違いない…

 

 余談。その日の後夜祭に私達は参加できなかった。なぜなら、


「アグリーデーモンズのお二人!是非、お近づきに私の杯を受けてくれますかな?」

「ユーリ様!お噂は予々。昨日の剣捌きは見事でした。目に焼きついて離れませぬ。」

「いやー、ナルミ様の砲撃は見事なものですなー。ナルミ様が王立軍にいれば百人力ですなあ。」


 私達はうようよと湧いてくる貴族やその取り巻き達にもみくちゃにされていた。


「ユーリ!何とかしてください。ミハルさんのご飯が無くなっちゃいます!」

「そんな事言ったって…。私もミハルの料理が食べたいよー」


 私達が解放されたのは後夜祭も終わり、屋台も撤収した深夜0時だった。


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

★や『フォロー』をいただけるととても嬉しいです。

気に入っていただけましたら是非、評価の程をよろしくお願いします。

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