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第17話 サーラ

 その日は朝から良い天気だった。アカネがいつものようにドアをノックする。


「おはよう、ユーリちゃん、ナルミちゃん。朝ごはんができたよ。」


 今日も美味しい朝ごはん!今日はちょっと軽めの朝ごはん。鶏肉が入ったトマトスープでパンを煮た『パン粥』。器に入れた後に卵とチーズをトッピングして軽くオーブンで炙ってある。

 トロトロで美味しい。胃が動きだすのがわかる!そして食後のコーヒー。脳が動きだすのがわかる。はあ、幸せな朝だ!


「ユーリ、元気が出ますね!」


 私は隣でこれ以上は無いというくらいにどんよりとしているユーリに声をかけた。


「ははは、そうだね。」

「ユーリ、今日は武闘大会ですよ。早く準備して出かけますよ。」

「ははは、そうだね。」


 私はカガリさんに助けを求めるべく、そっと目配せをした。カガリさんはやれやれという顔をしてユーリに声をかけた。


「ユーリ様、大丈夫です。ユーリ様の方がちょっとだけ強いですし、人間的にもちょっとだけ優れていると思います。ちょっとだけ…」

「そうだよねー。カガリは優しいね。」

「だから自信を持ってください。何を言われても過去は過去。今のユーリ様には関係ありません。」

「そうだよねー。そうだよ。よし、元気出てきた。ナルミ、今日は優勝しようね!」


 うん?何だかわからないけどユーリがやる気になったみたいだ。さすがカガリさん。


「それじゃあユーリ、着替えて出発しましょう。」

 




 武闘大会の会場は軍の演習場だった。30m四方の石造の舞台が用意されている。基本、勝負は何でもあり。

 ただし、命を奪うことは禁止。全部で8チームが出場するトーナメント戦。相手を二人とも戦闘不能にするか、場外に落とすか、『まいった』と言わせたら勝ち。まあ、単純なルールだ。単純なだけに奥が深い。


「はあ。」


 ユーリはため息をついていた。


「何がそんなに嫌なんですか?」

「いや、近衛騎士団親衛隊とは関わりたくないというか…」

「えー。私、親衛隊にすごく憧れているんです。所作や振舞がかっこよくないですか?」

「そんなもんかね…。じゃあ、先ずは会場の下見をしますか…」


 会場に行くと既に何組かの選手が舞台をみている最中だった。


「皆んな、強そうだな…」

「そう?私にはナルミの方が強く感じるけどね。」

「そうですか?ユーリにそう言ってもらえると自信になります。」


 私達は舞台に上がり、足元の感触を確かめた。


「ユーリ、見てください!親衛隊の皆さんですよ。今回は副長格のお二人が出場するみたいです。

 あ、隊長のサーラさんだ。私の憧れの人なんですーー!

 あっ、こっちを見た。ねえ、ユーリ。サーラさんがこっちを見てますよー。あっあっ、目があった!あっ、こっちに来るーー!どうしよう!」


 舞い上がっている私を横目にとっても冷めているユーリ。

 サーラさんはツカツカと私達の目の前までやってきた。本当に美女!ユーリも美人だけどタイプが違う。サーラさんはクール系。

 あー、良い匂いもする。私は挨拶をしようと口を開きかけた。


「あ、あの、私は…」


「久しぶりね、バーサクデーモン。あなた、大会に出場するのね。それはそうと相変わらず、皆に迷惑かけて生きているのかしら?」


 え?何?何?


「は?何言ってるの。皆に迷惑かけているのはサーラでしょ。クラッシャーデビルって誰のことだったかしら?」

「何ですって!人が気にしている事をズケズケと。育ちの悪い人ってこれだから嫌ですわ!」

「何を!私の事をバーサクデーモンと最初に言ったのはお前だろ!」

「は?何と言ったですって?」

「ば、バーサクデーモン…」

「ほーほほほ。あなたにピッタリなお名前ですわ!」

「ぐぬぬ。口だけは一人前だな!サーラ。いつも私に負けて泣きべそかいていたくせに!」

「何ですって!!そんな昔の事を持ち出して何言ってるのよ!」

「はっ!この間だって私に負けただろ。あの時の一撃は見事に決まったなあ。自分でも惚れ惚れした。」

「きーー、悔しい!マズル、マズル!!」


 サーラさんは副官のマズルさんを呼んだ。


「大会に出場予定だったミッダーは昨日からの腹痛のために棄権します。代わりに責任をとって私、サーラ・ノーマンが出場します。手続きをするように。」


 マズルさんはギョッとした表情を浮かべていた。


「えーと。」

「決定事項です。早くしなさい。」


 マズルさんは苦笑を浮かべてユーリを見ると会釈をして下がった。


「ユーリ、私も大会にでるわ!ギッタギタにしてやるから覚悟なさい!」


 そう言うとサーラさんは親衛隊の人達の所へ戻って行った。


「ナルミってあんなのに憧れてるの?」

「え、えーと。」

「まあ、いいわ。サーラ、返り討ちにしてやる!」


 くくく、とユーリは不気味に笑った。

 な、なんか変な事に巻き込まれている?私、大丈夫かしら??


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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