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第108話 邂逅

「この村みたいですね。」


 アルス村。領都から1日の距離。農業が盛んで領都へ新鮮な野菜を運ぶ商人で賑わっている。私とアイシャは村の入口で警備の兵士に身分証を提示した。


「領都でワープホールに関わるお仕事をしているのですか?」

「はい、倉庫の物流に関わっています。」


 私もアイシャも本来の身分は隠す。ラブリーエンジェルスの偽物を捕まえるためだから仕方がないよね。


「はい、確認しました。ようこそ、アルス村へ。」


 朗らかな兵士に満面の笑みで挨拶された。


「あの…、この村にラブリーエンジェルスのお二人が滞在されていると聞いたのですが…」

「ああ、その二人ならトーマスの宿にいるよ。でも、お嬢さん方…。あまり関わらない事をおすすめするなあ。」

「でも王国の英雄ですし。お会いしてみたいなあって。」


 おずおずという感じで私は兵士のおっちゃんに問いかけた。


「ああ、あの二人…。評判悪いんだ…。宿代や食事代を払わなかったり…。支払いを即すと脅してきたり…。」


 な、なんと!碌でもないな。


「そうなんですね。ちょっと残念だな。」

「まあ、がっかりするのもわかるよ。アグリーデーモンズといえば竜殺しの英雄だ。しかも何度も国を救っている。あんなにせこい人達だとは思わなかったなあ。そういえばお姉ちゃんの頭の上にいるのは竜…」

「ああ、早く農作物の確認をしなくちゃ!アイシャ、行くよ。」


 危ない危ない。ピー子はどう見ても竜だもんな。そうだ。これからはエルマ精霊国に特有なでっかいトカゲという事にしよう。そうだ、それがいい。私の思考を読んだのか、頭の上でピー子がガルガルと騒ぐ。


「しょうがないでしょ。ピー子が竜だってわかったら騒ぎになるよ。」

「ピーピー」

「え?今更だって?ピー子。こういうのは信じる心と勢いだよ。」


 隣を見るとアイシャが遠い目をして私を見ていた。


「な、何かな?アイシャ?」

「ナルミさんって結構、天然キャラですよね?」

「そ、そうかな?しっかり者って言われるけど…。」


 アイシャはふっと笑うと私の手を取って歩き出した。


「大丈夫!私が付いてますからね。」


 む、む、む。どういう事かな?アイシャ?



 

 

 結局、ピー子はアイシャに睨まれて掌サイズまで小さくなり、私の胸のポケットに収まっている。何、何。ピー子ってこんなに小さくなれるんだ。え?私の頭の上が気に入ってるから本当ならこんなに小さくなりたくない?


「じゃあ、どうしてこんなに小さくなってくれたの?」

「ピーピー」


 アイシャに妙な迫力があったから?そおっとアイシャを見てみるととても自慢気な顔。


「ふんす!」


 はい、参りました。

 その後、私達はトーマスの宿を探して村を歩いた。しかし、村に宿屋は数軒しかなかったのでトーマスの宿はすぐに見つかった。


「きれいな宿ですね。」


 トーマスの宿は高級な感じではないが雰囲気が良く、こぢんまりとはしているが居心地の良さそうな造りだった。早速、私達は部屋の空きを確認した。


「はい、お二人様ですね。ご一緒のお部屋でよろしいですか?」


 感じの良いエルフの女性がハキハキと答えた。


「はい、お願いします。」

「かしこまりました。ではこちらの鍵をお使いください。」

「ところで…、この宿にラブリーエンジェルスのお二人が泊まっているとお聞きしたのですが…。」


 途端にエルフの顔が曇った。


「はあ、いらっしゃるのですが…。」


 エルフが答えた時、ちょうど上の階から二人の?女性が降りて来た所だった。


「あの方達です…」


 はあ、どちらもユーリとは似ても似つかない。もちろん、私とも。何より所作が全くなってない。隙だらけだ!まあ、もっともユーリも隙だらけだったが…。


「ちょっと!いつも言っているでしょ!もっと静かにして!」

「あの…、私どももお仕事なので…。」

「あーもう!客を入れなきゃ良いでしょ!」

「そ、それは…」

「竜殺しのユーリ様の言うことが聞けないと言うなら二度と商売できないようにする事もできるのよ!」


 女はそうヒステリックに叫ぶと部屋へと戻っていった。


「あ、あれが…?ラブリーエンジェルス?」

「はい…。」


 となりではアイシャが目を吊り上げて怒っていた。


「何なんですか!あれは!あんな奴ら!ぶちのめしてやる!」


 アイシャは剣を抜くと今にも駆け出しそうだった。


「アイシャ、ちょっと待って。」


 いきり立つアイシャを私は宥めた。私だって腹が立っていた。ユーリの評判を下げるような態度は許せない!でも…。私は違和感を感じていたのだ。


「なんでですか!あんな奴ら、ボコしましょうよ!」

「うーん、アイシャ。まあまあ。あ、お姉さん。お部屋の鍵をありがとう。しばらくの間、お世話になります。」


 プリプリと怒るアイシャを連れて私は部屋へと歩き出した。


「5人か…。暗殺者だな。かなりの使い手がいる…。」


 私はわずかに気配を感じていた。あの偽物ラブリーエンジェルスは囮だ。ターゲットは私?なのか。この宿は敵の魔法士が監視していると思った方が良い。どうする?

 部屋へ入ると私は口元に人差し指を当ててアイシャに黙るように指示した。


『3人、暗殺者、見られてる。』


 私は紙に殴り書くとアイシャへと示した。アイシャは目を見開き、周りを探りだすがしばらくしてから首を横に振った。アイシャには感知できないらしい。

 私は首から遮蔽の石を外すとアイシャへ渡した。


『アイシャはピー子と待機』


 アイシャは不満そうな顔をしたが、足を引っ張る事は自覚していたのだろう。首を縦に頷いた。


「ピー子、アイシャをお願い。私は偽物のところに行ってくるよ。」


『5分後に遮蔽の石を発動』


 アイシャは私を見上げて頷く。


「じゃあ、行ってくるよ。」


 私は敵の魔法士に会話を聞かせるように話すとアイシャとピー子に目配せをして部屋を出た。部屋を出た私はわざと隙を見せながら『偽アグリーデーモンズ』の部屋のドアをノックした。


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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