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第105話 サイクロプス攻略

「魔法士の撤退が完了しました。」

「うん、ありがとう。」


 私達は三隊を持って森を包囲していた。ムーンの騎士隊、モンシアの傭兵隊、ムライさんのエルマ精霊国騎士団である。総数は200。

 作戦は事前に練られている。不安要素があるとしたらサイクロプスの存在。だがこれにはピー子と私が当たる。魔獣の位置情報も入手している。エルマ精霊国の魔法士は優秀だ。エルフは魔法の扱いに長けている。魔獣の数、位置も全て把握済みだ。


「ムーン、ムライさんとの連携は大丈夫ね?」

「はい、抜かりなく!」


 ムーンが元気に答えて来る。


「うん、よろしくね。私はサイクロプスに対処する。他の魔獣の討伐は任せたよ。」


 モンシアには目配せした。モンシアは親指を立てて合図して来た。モンシアとは長い付き合いだ。この状況なら任せて大丈夫。


「よし、ピー子!私達の相手はサイクロプスだ!」

「ピー」


 ピー子は3年前に比べてかなり大きくなった。翼を広げると2mはあるだろう。もう私の頭には乗れない。逆に私一人なら背に乗せて飛ぶ事ができる。私はピー子の美しい銀色の鱗に覆われたしなやかな肢体を優しく撫でた。


「ピーピピ」

「そうだね。気を引き締めるよ。」


 私の答えに満足気なピー子の首を抱きしめた。よし、行くか!

 森の反対側で魔力が弾けたのが見えた。ムライさん達が戦闘を開始したらしい。


「騎士隊!前進!包囲網を絞れ!」


 ムーンの合図で騎士隊が前進を開始した。傭兵隊が後方から支援に周る。


「ピー」


 ピー子の声に私は頷き、その脚につかまった。ピー子が力強く羽ばたき、私の身体が持ち上がる。ピー子は空高く舞い上がると森の一点を目指して降下し始めた。そこには、


「サイクロプス。」


 大きな鉄製の棍棒を振り回す5mはあろうかという巨人がいた。腰巻きだけの身体は強靭な筋肉に覆われており、粗野な風貌をしている。その存在感は圧倒的だ。古の巨人の血をひく彼らには生半可な攻撃は通じないだろう。魔力に対する耐性も強い。

 サイクロプスは私達を見つけるとこちらを見て咆哮した。その声は私の身体をも震わすほどだった。


「ピー子。このまま行くよ!」


 ピー子は私の意図を汲むと一声鳴いて急降下した。私はサイクロプスまで10mの距離でピー子から離れた。そのまま魔刀に魔力を込める。髪の毛が銀色に変わった。


「でや!」


 私の気合いをこめた一撃はサイクロプスが振り上げた棍棒で防がれた。さすがは鍛治を生業とする一族だ。なかなかに素晴らしい武器を持っている。でも!私はサイクロプスの棍棒に弾かれた力を利用して高所から飛び降りた勢いを相殺して地面へ着地した。

 そのまま魔刀に銀の粒子を纏わせるとサイクロプスの右足を斬りつけた。銀の粒子は鋭い刃となってサイクロプスの右足を切り飛ばした。


「うがーー」


 サイクロプスは怒りの咆哮をあげながら倒れてきた。そこへ舞い降りてきたピー子の鉤爪が襲う。サイクロプスは首筋をピー子に切られ、血を吹き出しながら地面へと這いつくばった。


「ピー子!」

「ピー」


 ピー子は一声鳴くと私へ前脚を差し出した。


「ムーンの隊だ!」


 私がピー子の脚を掴むと同時にピー子は空へと飛翔した。まだ会敵していないがサイクロプスが2体、ムーンの隊へと向かっていると感じた。


「ミョール!サイクロプスの位置は?」

『はい、ムーン隊の前方200m!2体です!』


 通信機を通じてエルマ精霊国騎士団の魔法士からすぐに返答があった。


「ピー子!お願い!」


 ピー子は上空で旋回し、位置を定めると一気にサイクロプスがいるであろう場所を目指して降下した。

 



 

「ムーン、あれがサイクロプス?」


 アイシャの問いに僕は頷き返した。


「あれと戦うの?」


 まだ200mくらい離れていたが、その存在感は圧倒的だった。大きさは5mくらいであろうか?遠目にも隆起した筋肉に覆われているのがわかる。あれを倒せるのか…?しかも2体。


「ムーン、サイクロプスには手を出すなよ。」


 モンシアさんから忠告された。


「ええ。」


 しかし、あれをナルミさんは相手しようというのか…?


「騎士隊!サイクロプスには手を出すなよ!サイクロプスを避けながらゴブリンの数を減らす!」


 僕の言葉にサイクロプスを迂回しながら、森の奥へと進む。森の奥にゴブリンが固まっている一帯があった。騎士隊はそこを目指す。でもあのサイクロプスは目障りだ。反転されたら騎士隊は挟み撃ちにされる。


「ムーン、心配ない!ナルミさんだ!」


 モンシアさんが指した方向にピー子の脚にぶら下がってサイクロプスへと急襲しようとしているナルミさんが見えた。


「騎士隊!森の奥へ!」


 僕はもう一度、騎士隊へ指示するとサイクロプスの方へと駆けた。


「ムーン!」


 すぐ後ろからアイシャの声が聞こえた。


「アイシャ!ダメだ!下がって!」

「ムーンだってサイクロプスに向かってるじゃない?」


 返す言葉がない。


「アイシャ、サイクロプスに手を出しちゃダメだよ。」

「うん、わかってる。」


 サイクロプスへ向かってピー子が急降下して来るのが見えた。ナルミさんがクロスライフルを構えている。急降下しながら狙うのか?


『ドン』


 鈍い音とともに弾丸が放たれた。


「初めて見た。ミスリルの弾丸…」


 隣でアイシャが呟いた。銀灰の竜から受け取った力だそうだ。放たれた弾丸はサイクロプスの棍棒によって防がれた。サイクロプスが構えた棍棒は大きく振れ、大きな体が傾いだが、サイクロプスは立っていた。

 やはりサイクロプスは難敵だ。棍棒には魔力が込められていてあれを突破するのは容易ではないだろう。ナルミさんはどうする?


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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