表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/110

第104話 作戦会議

 僕達がエルマ精霊国に来てから2日がたった。ナルミさんが僕にだけよそよそしい。なぜなのか??アイシャに聞いてもため息をつかれるだけで要領を得ない。不思議だ…。

 その日、商会の支部にはムライ殿がやって来た。何でもナルミさんに協力要請だそうだ。しばらく経った頃に僕はナルミさんから呼び出された。


「あー、ムーン。魔獣の討伐依頼だよ。国境付近で商隊が襲われているらしいんだ。ムライさんの騎士団と共同作戦です。」

「はい、かしこまりました!編成は?」

「傭兵隊から野郎共Aチーム、Bチーム。ムーンは…、そうだな。30人で編成して。」


 野郎共Aチーム、Bチームというのは連合商会の発足当時からナルミさんの指揮下にある傭兵隊のチーム名だ。今は4チームある。それにしてもやっぱりネーミングセンスが無いな、ナルミさんは…。


「ユーリだからね。」

「は?」

「野郎共Aチームと名付けたのはユーリだからね。」


 な、なぜ僕の言いたい事が分かったのだろう?それにしても、よくよく考えたらなんて素晴らしいチーム名なんだろう。感動した!


「な、何かございますか?」


 ジトっとした目でナルミさんに一瞥された。


「ムーン。まず、君は考えている事が顔に出過ぎです。戦闘中に考えを読まれたら命取りになります。気をつけて。」


 そ、そうなんだ。気をつけよう。


「それと…」

「はい。」

「お酒はほどほどに。酔っ払ったムーンはユーリよりも面倒くさいです。」


 え?そうなの?何かしたかな?うー、思い出せない…

 動揺する僕にムライさんが声をかけて来た。


「それじゃあ、ムーン殿。役割分担をしましょうか。」


 僕はそのまま、ムライさんに部屋から連れ出されてしまった。




 

 ムライさんに連れて来られた部屋にはアイシャと傭兵隊隊長のモンシアさんがいた。どうやらこの作戦には衛生部隊としてアイシャが同行するらしい。だがどう見てもアイシャは怯えていた。


「どうしたの?アイシャ?」


 アイシャは僕を見るとホッとした顔を見せた。


「モンシアさんと二人で怖かったの…。迫力あるんだもん。」


 確かにモンシアさんは歴戦の勇者という感じがして貫禄がある。


「ははは、嬢ちゃん。それはすまなかったな。」


 モンシアさんは素直にアイシャへ向かって頭を下げた。何だ。良い人じゃない。はにかんでゴニョゴニョ言っていたアイシャは元気の無い僕に気がついて問いかけてきた。


「それよりもムーン?元気ないね。」

「は、は、は。ムーン殿はナルミさんから酒癖の悪さを指摘されてしまったのですよ。」

「あー、そうなんですね。この間、ムーンたらナルミさんはセンスが無いってさんざん絡んでましたから…。」 

「え?そうなの?」

「そうよ。私もムーンに絡み酒の気があるなんて知らなかったな。」


 その話を聞いていたモンシアさんがふむふむと相槌をうった。


「ほう。ムーンは見どころがあるな。誰もナルミさんのセンスが無い事を指摘しないからな。ユーリさんは素晴らしい美的感覚をしていたのになあ。」


 ぼくはその言葉に大いに賛同した。


「モンシアさん!!ですよね!ユーリさんは素晴らしい人です。モンシアさん!わかってますね。」


 手を固く握った僕達を呆れて見ていたアイシャがため息をついた。


「ムーン、またナルミさんに嫌な顔されるよ?」


 むむむ、それはまずい。


「ムーンってナルミさんの事を尊敬してるんだよね?」

「そうだよ。ナルミさんとサーラ親衛隊隊長は僕の目標とする騎士だ。すごく尊敬している!」

「ユーリさんは?」


 え?アイシャは何でそんな当たり前の事を聞くんだ?


「え?ユーリさんは僕の女神様だよ。何でそんな当たり前の事を聞くの?僕はユーリさんを崇拝し、崇めているんだ!!」


 モンシアさんが大きく頷き、また握手を求めて来た。この人は信頼できる人だ!僕の中でモンシアさんの評価が爆上がりした。

 アイシャは諦めに似た表情をすると首を振り、ムライさんに向き合った。


「ムライさん、私は諦めました。もう良いので魔獣討伐の話をしましょう。」

「はい、ではお二人もよろしいですか?」


 まあ、はい…


「魔獣の被害が出ているのは王国との国境付近です。目撃されている魔獣はゴブリンが主なのですが…、ゴブリンに混じってサイクロプスが確認されています。」


 サイクロプス?大変じゃないか!


「ムライ殿、数はどのくらいなのですか?」

「報告ではゴブリンが200、サイクロプスが3。」


 モンシアさんはニヤッと笑うと僕の肩をバシバシと叩いた。


「やりがいがあるじゃないか!王国の騎士の強さを見せてやれ!」


 まあ、そのくらいのゴブリンなら今の戦力で大丈夫だ。問題はサイクロプス。


「ナルミさんがピー子と一緒にサイクロプスは任せてと言っているので、そちらはお任せしても良いかと。」

「ナルミさん一人で?大丈夫なのですか?」


 アイシャが心配そうだが…。


「まあ、問題無いでしょう。ワープホール攻防戦以後、ナルミさんは相当強くなりましたよ。ピー子との連携も素晴らしい。」


 僕とアイシャは顔を見合わせた。あの銀灰の竜を討伐した時よりも強い?まさか?


「わかりました。ではムライさん、モンシアさん。我々はゴブリンに集中しましょう。アイシャは後方支援だ。魔法士はどうするのですか?」

「魔法士はエルマ精霊国騎士団から派遣します。」


 モンシアさんも頷く。


「わかりました。では具体的な作戦を…」


 この日は4人で侃侃諤諤、大いに議論した。初めてエルマ精霊国騎士団、傭兵隊との連携だ。このたくさんの意見のでる議論はとてもありがたかった。だが…一つだけ不安があった。もちろん失敗した時のフォローも作戦として立案したのだが…


「ナルミさん一人でサイクロプス3体の相手ってやはり無謀じゃないですか?」


 この僕の問いにはムライさんもモンシアさんも大丈夫と言うだけだった。何事もなければよいが…


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

★や『フォロー』をいただけるととても嬉しいです。

気に入っていただけましたら是非、評価の程をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ