第48話 3人の冒険者
ー6日目ー
平原。街道沿い。
シーナの頭にスライムのスイスイ。
仔龍のリュウノスケはゴトーの頭に乗っている。
トラキチとケルローは狩り中。
『ミィーー♪』
『ピューイ♪』
ゴトーの股間には獣の角。
「しかし、うまい具合に角が上斜めに反るもんじゃのう」
< / ←角 >
「せめてネコちゃんパンツではダメか? それならギリギリ許容範囲だが」
「ありゃワッチの中古じゃ。ゾウさんは新品じゃ」
「・・・確かに、使用済みパンツを渡されるのはどん引きだな」
「ゴトーから引かれる日が来るとは…ショックなのじゃ…」
『キュピーーー♪』
リュウノスケはゴトーの頭から飛び降り、股間の角にぶら下がる。
「ーウッ!」
『ピィーー♬』
「あーー! またゴトーの敏感な所に!これリュウノスケ、離れるのじゃ!」
リュウノスケは勢いよく回転し出す。
「ーーッ!」
「うおっ、メッチャ回っとる!」
<グルグルグルグルグルグル>
「――――ッ!」
「やめんか、リュウノスケ!」
<パキーン!>
角が割れる。
リュウノスケは地面へと落下。
シーナは抱きかかえ、
「ダメじゃろが、リュウノスケよ」
『キュゥゥー』 ↓
「ゴトーよ、大丈夫か? あ……」
「・・・・・」
――
(注)
倫理に反する描写の為
カットさせていただきます
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―
ー
・
地面には真っ二つの角。
「キングの角など、鋼鉄の剣でも割れんのじゃがな…」
「俺のモノは「○ティハンター」の○羽獠並みだからな」
「チキュウ人には凄い奴がおるんじゃの…」
「これはもう使い物にならない。腰蓑の出番か」
「葉っぱや腰蓑じゃ魔虫が群がってくるじゃろが」
「「威圧」すれば虫は集ってはこない」
「威圧はリュウノスケやスイスイが怯えておったろう」
ゴトーは諦めたように天狗の面を空間収納から取り出し装着。
「ゾウパンより、そっちなんか?」
「ゾウさんは選択肢にはない」
「そこまでかい…」
地面に落ち、割れた角。
「それよりゴトーよ、この角は割れてもハシタ金で売れるのじゃ」
「金には困ってない」
「「銭貨1枚を笑う者は銭貨1枚に泣く」いう言葉を知っとるか?」
「その格言も広まっていたか」
「小さい時からパパに聞かされての。小額でも軽視してはならんのじゃ。しっぺ返しを喰らうのじゃ。ゴトーは金を粗末にするタイプなんか?」
「その格言には賛同するが、
待て、斜め前方200メートルに人族3人を感知。
相手はまだこちらには気付いてはいないな」
「野盗か冒険者じゃろうな。野盗なら問題ないが、真面な冒険者ならできるだけワッチの姿は見せとうないの(恥ずかしい)。
認識阻害で姿を消すわ。一応、リュウノスケとスイスイにも阻害を掛けとくでの」
進行方向の森の手前から外れた100メートル先に、少年1人、少女2人がこちらを見つめ様子を伺っている。
3人は濃緑の縞模様の服装姿。
「野盗ではないな」
「若者じゃな。どっかの村から出てきた新人冒険者かもしれんな。ゴトーの姿を見て茫然としておる」
股間に天狗の面。
「屈強な冒険者と予測していたが、若者にこの姿を見られるのはさすがのダメージだな。俺の精神が削がれていく・・・」
「ワッチにはなんも思わんのか? いつも見せられてるんじゃが。なんなら生で」
若い男女はこちらを凝視し続ける。
ゴトーはそっとシーナの後ろへと移る。
「ゴトーは不屈の精神と思っておったがの」
「俺の心臓はガラスのような透明で繊細、ガラスの少年だ」
「少年違うじゃろ。お、おい、天狗の鼻がツンツンとケツに当たっとる!
さすがにこれは少年少女らにはマズい絵ズラじゃろ!
あ、ワッチの姿は阻害で見えんか。おい、隠れても意味ないぞ」
「・・・・・」
「動揺しとるゴトーも珍しいの。ワッチには生で晒しても欠片の動揺も見せんが」
冒険者3人はこちら側を注視。ヒソヒソと会話をしている。
「さすがに不審者に思われてるの」
「顔を覆い隠せば心のダメージが軽減される」
空間収納から購入したナマハゲの面を取り出すと、リュウノスケとスイスイはビクッと怯えシーナの後ろに隠れる。
「その面も怯えるじゃろ。従魔にそんな仕打ちをするんか?」
「・・・・・」
諦めてナマハゲの面を収納に戻す。
「こっちはこっち。他人は他人じゃ。ゴトーは対面を気にし過ぎじゃ」
「記憶を消す精神干渉の魔法がある」
「闇魔じゃろが! 恐ろしいこと言うでない。
そうじゃ! ゾウさんパンツを履いて、その上から天狗を被せればええんじゃないんか?」
「その閃きは、天才か」
「じゃろ! これじゃと生尻も隠せるし、万全じゃの」
「この機転に感謝しかない。森の中に入ったらパンツを履こう」
「あの冒険者らはスルーでええんじゃな」
「ああ」
ゴトーとシーナは3人の冒険者を横目に前方の森の中へと進み、ゾウさんパンツを履き、その上に天狗の面を被せる。
シーナは尻側のパンツのゾウさんの刺繍に気付く。
目がニコッとしている絵。
⊂^ し^⊃
「あ……」
ゴトーは振り向く。
「どうした?」
「い、いや…なんでも、ないわ…」
ゴトーとシーナは森の中を進む。
★★
森の中の道。
冒険者3人は一定の距離を置いて後をついてくる。
「行き先は同じ所か。天狗に不信感は募っとるが(ゾウさんパンツも)、明確な敵意はないようじゃ」
ゴトーは後ろをチラチラと見ながら警戒。
「そう警戒せんでもええ。歳は10の中頃、何があっても余裕でかわせるわ」
「俺は子供でも警戒心を怠らない。この世界では赤子でも警戒対象だ」
「そうじゃったな。ワッチと出会った瞬間テッポウを向けたくらいじゃからの。
ゴトーは猜疑心が強い言われたことはないんか?」
「他人からはそう思われていただろうな」
「語るような友や相棒はおらんかったんか?」
「信頼する者か・・・」
「おらんか? 結婚してたんなら妻だった女子が居たじゃろ」
「・・・マリアか」
「名はマリア言うんか?」
「マリアは唯一の例外。俺の心の拠り所だった」
「いや、子供らもおるじゃろ。そっか、物心つく前に出てったんじゃったな」
「子には親らしい事は何ひとつしてやれなかった。姿を現さない父親に対して恨み言のひとつもあるかもしれないな」
「ワッチの耳にも痛いわ」
「今は独りではない。この世界ではシーナが精神的、俺の拠り所と言ったところか。まだ出会って浅いが時間には換算できない繋がりができたと思っている。背中を任せられるような、心地よくも頼れる関係だ」
「ゴトー……」
横を歩くゴトーに目を向くと、目線には股間に天狗の面。
「たまには服を着た状態で決め台詞を言うてくれ。なんでいつも視覚的に落としてくれるんじゃい。響くセリフも台無しじゃ!」
ゴトーの頭に乗っているリュウノスケが天狗の鼻をターゲットする。
『ピキューー♪』
寸前でゴトーは両手で捕まえる。
「うお、危なっ!さすがにギャラリーがおる時、これが割れたら大惨事なのじゃ。
リュウノスケ、メッ!」
『キュゥゥゥーー』 ↓
シーナはゴトーから仔龍を受け取り、チラッと後ろを見る。
「少し注意は必要かもじゃ。真ん中の女子が殺気めいとるの。念のため会話を拾っておくか?」
ゴトーは頷く。
2人は「聴覚」スキルを発動。
後ろの3人の話し声が耳に聴こえてくる。
◦―――
『絶対あれは龍だって!すげー!』
『かわいいねぇー。あのゼリーっぽいのスライム?』
『やっぱりあれは、お約束のテイムかな?』
『エモいねー、龍も使役できる?』
『これは夢が広がるな』
『アタシらはないけど、姉のギフトに「使役」があるんだよねー』
『最高じゃないか!』
―――◦
「なんと! ギフトの「使役」があるじゃと?」
「ギフトの中でも80番台クラスか」
「あんな若い小娘がのう、世は広いもんじゃ…」
◦―――
『ちょっとアンタたち。龍よりあの男が気にならないの? どう見ても股間に天狗は不審者以外何者でもないでしょ』
『だね、どう見ても変態にしか見えないねぇー』
『あの子、誘拐されて連れ回されてるのよ。助けなきゃ!』
『いやいや、その断言はまだ早くないか?』
『奴隷にされてるのかもしれないよー』
『え!?…奴隷?』
『違ってたらどうするんだよ。何か訳があるのかもしれないだろう?』
―――◦
ゴトーとシーナは無言で会話を聞いている。
「ここまで拒否反応が強い思わんかったわ」
「あれが世間一般的な反応だ」
「のう、ゴトーよ。今からでもネコちゃんパンツに履きかえんか? ほれ、天狗が落ちたりしたら、まずかろう」
「必要ない。俺の股間も尻も鉄壁だ」
「………」
「それより、シーナのことが見えてるようだが」
「…ホントじゃ。ワッチのことを言っておる! 阻害が効いておらん。リュウノスケもスイスイも見えとる!」
「阻害が効かないということは、あの歳でシーナよりLVが上ということか」
「信じられんのう。いや、若くとも上な奴も稀におるんじゃが…」
「とりあえず、続きを聞いてみよう」
「お、おう…」
――
48 3人の冒険者 終わり
49 転移人
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次回 最終回