第43話 夢の国
「マヨネーズやプリン、ケーキはどうしてくるんじゃー!!!」
『キューンキューン』↓
大声で叫ぶシーナ。泣き叫ぶ仔龍リュウノスケ。
「――――――」 <ぺチぺチぺチッ!>
平手打ちからパチリと目が開くゴトー。
「お?」
ゴトーは上体を起こす。
「お、おい……」
「苦しかったな。まさか身体全体を覆われるとは・・・」
リュウノスケは喜び復活のゴトーの周りを飛び跳ねる。
「ピュウーイ ピュウウウイ!」↑
「すまんかった! スライムに全身包まれると自力では抜け出せんのじゃ。火が弱点と教えんかったワッチの落ち度じゃ」
「弱点が火力か。力技では抜け出すのは不可能と悟り、雷で攻撃したら通電、気絶、窒息のコンボをくらった」
「……ゴトーでも負けることがあるんじゃのう」
「鑑定を怠った俺のミスだ」
「最弱モンスターじゃぞ。子供でもこんなんならんぞ。全体に被らなきゃいくらでも剝せるはずじゃ。ゆっくり時間を掛けて被って侵食するんじゃが、その間なにしてたのじゃ」
「観察して、感触を楽しんでいた」
「………」
「スライムが徐々に顔全体、身体全体を覆う様を観察していたが、まさか全体を包まれるとはな」
「……そ、そうか。ゴトーの癖はよう分からんわ」
「癖ではない、未知なるモノの探求心の表れだ」
全裸のゴトー。
「驚きじゃの。スライムに溶解性の液があるとは知らんかったわ」
「最弱の魔物ということだが、今までそのような事例はなかったのか?」
「新種なんかのう? 注目されん魔物じゃし研究も疎かだったかもしれんの」
「魔法耐性の服をも溶かす。これがスライムの隠れた潜在能力か……」
「スライムポテンシャルあなどれんわ。
いずれにせよ身体に異常がなく、服だけ溶けるならそこまでの危険性はないみたいじゃな」
「予備の服が一着ある。この醜態はノーカウントでいいか?」
「そうじゃの。ワッチが注意喚起せんかったし今回はノーカンでええわ」
予備の服を着て、魔法耐性の付与を掛ける。
「一連のお気に入りのモンスターは全て愛でる予定だ。気に入った場合は使役する」
「スライムに殺されかけて、それでもするんか?」
「スライムのテイムは異世界物の定番、夢と言ってもいい」
「………」
ゴトーは木の陰に逃げたスライムを捕まえる。
『ミィー キィー キィー 』
「名前は……、スイ太郎、スイ衛門、」
「ゴトーの名付け、センスがないんじゃが」
落ち込むゴトー。
「わ、悪かったわ。なにもそんなに落ち込まんでも……」
「「すらりん」「りむる」「すい」、どれがいい?」
「……勘なんじゃが、その名前らええんか? マズくはないんか?」
「平仮名なら問題はない」
「んー、名前かー。「ミー、キー」と泣くから、「みっきー」はどうじゃ?」
「それだけは容認できない!」 <クワッ!>
<ビクッ!>
「瞼が1センチは開いたぞい。今までの最高記録じゃ。え? そこまでその名はマズイんか? チキュウでは禁忌とかかなんか?」
「著作権、賠償問題に発展する事案だ」
「……ちよさく? 意味分からんが、名前にそんなん関係するんか?」
「名前に伏字をしないと、運営カンパニーから苦情が寄せられ、投稿サイトの運営からの警告も発せられる」
「……うんえい、が、よう分からん」
「○ャスラックや○ィズニーは特に厳しいからな」
ゴトーはスマホを取りだし、アルバムの画像を見せる。
「便宜上、ネズミのランドと呼ぶ」
「……ネッズ?」
大きなネズミの着ぐるみと、
スーツにサングラス、マスクの男とのツーショット画像。
男はネズミと同じ大きな耳を付けている。
「これはゴトーなんか?」
「そうだ」
「おっきなネッズの化けもんと、同じような耳がゴトーにも生えとる!」
「夢の国だからな」
「後ろに城が建っておる。チキュウにも城があるんか?」
「夢の国だからな」
アルバムの画像を次々とスライドさせる。
黄色い大きな熊とのツーショット画像。
「なしてこの黄色いクッマ獣人は下半身なんも履いてないんじゃ? 周りに人もおるし、これこそ事案モノじゃろ」
「夢の国だからな」
「ネッコ、デカッ! わっ! 一つ目の化けもんが! こっちは3つ目!チキュウ、コワっ!」
「パレードを見せよう」
パレードの動画を流す。
――
パレードの車に乗る獣人 たち。
――
「のう、これ中に人が入ってるんじゃないか?」
「中の人はいない」
「そ、そうなんか?」
「それ以上の追及はやめてもらおうか」
「お、おう……。
なんじゃこのどデカイ馬車みたいなんは? ウッマがおらんのに動いておるぞ!」
「夢の国だからな」
「面妖なもん、可愛いいもんもメッチャ乗っとる!コイツら手振っとる!コイツら何しとん?」
「パレードだ」
「……凱旋、か? おっ、キラキラのお姫様が乗っとう。こっちは王子様か?」
「夢の国では1日1回凱旋を行う」
「ここの領地はなんぼ金を掛けるつもりなのじゃ?」
「この夢の国の1日の来場数は最低でも5万人。入場税は銀貨1枚 (1万円)だな。休日や大型連休時はその倍が来場する」
「……銀貨1枚?5万人……銀貨5万枚 (5億円)!?
倍なら10万枚じゃと!? 1日でその金がこの国に入ってくるんか?」
「それだけではない。土産の菓子やグッズ、飲食もその領地で行い、その収入の収益も見込まれる。
マニアは入場税の数倍はこの夢の国でキャラクターグッズなどを購入して散財する」
「おいおい、そりゃ儲けすぎじゃろが……」
「夢の国に宿屋は5棟。提携する宿屋と合わせれば部屋数だけで軽く1000室は超えるだろう。一晩の金額は銀貨2枚(2万円)から、高級宿ともなれば金貨1枚以上 (10万円以上)」
「……王都の凱旋でもそんな経済効果は生まんわ」
「俺は夢の国を訪れる場合、アトラクション全制覇。隠れ○ッキーの有無、最低2週間は滞在する」
「……2週間、宿に泊まるんか?」
「これが俺の泊まる「デラックス・スペシャル・スイートルーム」だ」
建物の外装画像を見せる。
「立派で豪華な建物じゃの……」
部屋の内装を見せる。
「まるで王城の部屋のよう豪奢じゃ。
お、このゴトーは別の耳を付けとるの。
この手に持っとるんはクッマの人形か?」
「コレクターだからな。キャラクターグッズは可能な限りコレクションをする。限定物を手に入れる為には前日から並び、仕事が立て込んでいる時はオークション等を利用する」
「人形なぞ一部の貴族の令嬢くらいしか持っとらんぞ。ゴトーは獣好きじゃから何個も持っとるんじゃな」
「個数を数えたことはないが、グッズ関連だけで数万はあるはず」
「は? 数万?」
「数が多くて専用の別宅を用意したくらいだ」
「……もう想像の範囲外なんじゃが。そのガゾウはないんか?」
「このスマホのアルバムにはないな。・・・これぐらいか」
客室に実物大の人形が飾られている。
○ッキー、○ニー、○ッフィ、○ナルド、○ーさん。
↑
「……ゴトーが下半身晒すんは、この黄色いクッマが起因なんか?」
「そんな伏線はない」
他の画像には、
ガラスケースに飾られている6分の1サイズV○uberのフィギュア。(ケモ耳系)
アニメキャラ。(ケモ耳系)
「ミックのようなのが、いっぱいおるの……。
あ、これは前に見せてもろうた賢狼の女子じゃ」
「うむ」
○3PO、○2D2、○ースベイダー、○バフェット、○ートームトゥルーパーの実物大フィギュア。
「こいつら、なんなん?」
「他星の住人だな」
「???」
○ターファイター、○ニファルコン、○ウィングの模型。
「これは?」
「・・・地球の乗り物だ」
「ほえー、想像もつかんわ。チキュウは凄い所なんじゃのう。
行けるならワッチも行ってみたいわ」
「・・・・・」
「ゴトーの飼っておるペットも見てみたいもんじゃわ」
「もし、シーナが地球に訪れるなら夢の国でも希望の場所、どこへでも連れて行ってやろう」
「無理思うがのう、でも行けたらええのう……」
――
(ピコーン!)
シーナさんの地球行き、夢の国のフラグが発生しました! 20日後に!
スライムも同行
――
夜のシンデレラ城の動画を流す。
「お、これは、花火じゃ!」
「この世界にも花火はあるのか?」
「あるぞい。しかし細長い城じゃの」
ライトアップした城。
プロジェクションマッピング・ショーが始まる。
数々の色彩のライトが目まぐるしく動きシンデレラ城を照らす。
――
プロジェクションマッピング
で検索しよう!
――
「この城「ゴーレム」で、生きておるんか……?」
「アニメーションや光の加減の手法で演出している」
「さっきのネッズがちょこまか動いておるの」
「獣が城をよじ登ったり壁を走り回っとるんじゃが……」
「なして船が城の壁を動いとるのじゃ?」
「海賊とネッズが闘ってるおぞ!」
「魔女みたいな者もおるのう」
「このネッズ、どう見ても魔術師じゃろう?
ゴトーよ、チキュウにも魔法あるんじゃないんか?」
20分の動画を見終える。
「正直、理解に及ばんかったが、見ごたえはあったわ」
「楽しめたなら幸いだ」
「凄いもん見せてもらったの。もっとこんな動画があるんか?」
「ああ。年代別に全てを網羅、タブレットにはいくつかあるな。いずれ解説付きで見せてやろう」
「おー! 楽しみにしてるぞい」
「スライムの名だが、スイスイにしよう」
『ミィーー♪ 』
「最弱とはいえ魔族なんじゃが、やっぱ従魔できるんじゃな……」
『キィーキィー♪ 』
「これからも魔獣魔物を増やし続けるんか?」
「ああ。○ケモン・トレーナーのようにコンプリートを目指す」
「……ぽっけもんって、なんじゃ?」
スマホの画像を見せる。
「なんじゃ、この尻尾がカクカクとしている黄色いネッズは?」
「雷攻撃が得意な魔獣だ」
「魔獣が魔法じゃと!」
「雷を発生――
――
(注)
長くなるのでカットします
――
10分後。
「―151匹、いろいろな魔獣魔物がおるんじゃのう」
「いま現在1000を超えている」
「1000!?」
「この話はここらで終わりにしよう。脱線してしまう」
「まあ、無事でよかったわ。心臓が止まっておったのには驚き、……待て! ゴトーは心臓が止まって死んでおったんじゃろ?」
「そのようだ」
「どうして息を吹き返したんじゃ?」
「ギフトの「復活」だ」
「復活…?」
「自動発動する仕組みだ」
「……復活て、闇魔じゃないんか?」
「カテゴリーは闇属性だな」
「………」
「他にもギフト「不老」がある」
「…………」
「不死もある」
「………………」
――
43 夢の国 終わり
44 喋る従魔
――