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第42話 ゴトー テラウスの地にて死す

  ー5日目ー


平原。

テラウスの街を出発。

平原の道を歩く冒険服を着たゴトーと、街での変装を解いたシーナ。


「街道じゃなきゃ魔獣に乗るんじゃがの」


ケルローとトラキチは放し飼いで遠くへと狩り。

仔龍のリュウノスケは2人の周りを飛び回っている。


『ピッキーイ♪』


「まさか歩きになるとはのう。ワッチらが居りゃ安全言うておろうが、御者も人を見る目がないわ」


「この世界、世紀末救世主伝説のように賊や盗賊が多いようだな」


「せいきまつ? は分からんが、根無し草の犯罪者が街の壁外で組織化しておる。

領からの取り締まりやギルドの盗賊依頼討伐などあるんじゃが辺境の地、うまくはいってはおらん」


「これでは治安維持や流通の安全は保障できていないということか」


「街のギルドも質が低いしの。おかげで無法地帯を歩きじゃ」


「モラルのない層はどの時代、どの世界にでもいるんだな」


「民度が低い輩はどこも変わらんか」


「そのようだな」


後方から8台の馬車が2人を追い越していく。

先頭と後方には馬に乗る複数の護衛の姿。


「交易しているキャラバンか」


「盗賊は護衛を雇う大きな商会には手を出さん。

高確率で高位魔術師が雇われておるからの。

小さい商隊、弱そうなパーティ、単独で行動しとる者しか襲わん。

ワッチも1人の時は絡まれるのが億劫で認識阻害でスルーじゃし」


「それでも強い相手が現れたらどうするんだ?」


「LVが下がったとはいえ伊達に「ドラゴン・スレイヤー」呼ばれておらん、修羅場の数が違うわ。数の差や大物相手でマズイ思うたら逃げるがの」


後ろから馬車を追ってきた、粗末な身なりな男4名が走ってくる。


「隊商を狙おうとして諦めワッチらに狙いをシフトしたか。

ウッマでも持ってりゃ歓迎じゃったんじゃが」


喚き散らして近づく男たち。


「ゴトーばかりに任せるんはな、これぐらいのカス共はワッチが相手してやるわ」


剣を手にする4人組の野盗。


「コイツ、亜人じゃねえか?」

「上物来たー!」

「貧乏くさいと思っていたが、これは思わぬ拾いモノだな」

「これだけの美形なら大金貨はくだらないな」


「飛んでるの、ワイバーンの仔?」

「そんな下竜じゃねえ、龍?」

「おいおい、龍がお宝背負ってきたんじゃないか?」

「仔龍なら孫の代まで贅沢できるぜ!」


「運が向いてきたー」

「男の方は強そうじゃねえか?」

「4人相手に敵うものか。お前の氷や雷攻撃で殺れるだろう」


下卑た笑いの男たちにシーナは口を開く。


「ワッチは元宮廷魔術師シーナ・アルフレッタじゃ」


「「「「!!!」」」」


「お、おい、金髪赤眼の悪魔? マズくねーか?」

「ハッタリじゃね?」

「本物なら命はないぜ……」


「しかし、そんな大物がこんな所歩いてるか?」

「いや、秘境や迷宮帰りならあり得る」


困惑する盗賊たち。


「ちょ、ちょっと待って。相談させてくれ」


「……ええが、早くせいよ」


4人は一旦後方に引いて相談を始める。


「大抵は名乗るだけで引いてくれるが、信じん奴、頭が弱いんは相手せんといかん」


「格の違う者を見抜けなければ、待っているのは死か・・・」


相談が終わり、リーダーらしき男が、

「相手が悪かった。オレたちは引かせてもらう」


「それは賢明じゃの」


「お、おい、勿体なくねーか」

「コイツの氷魔法、LV5だぞ」

「馬鹿! ドラゴン・スレイヤーが相手になるわけないだろうが!

帝国では懸賞金がついてて悪魔とも呼ばれてるんだぞ!」


「チッ」

「くそー」


4人組は小走りで元の来た道を嘆きながら去って行く。


<シュッ>

シーナは風魔法「風切り」を発動。

4人の首が宙に飛び、バタバタと倒れ屍と化す。


「襲ってくるようなら死なん程度に脚を切断、痛みと恐怖させ放置するところじゃ。

手間を掛けさせんなら死んだことも気付かず殺めることにしておる」


「これはお前なりの慈悲ということか」


「屑どもは犠牲者が出る前に駆除するんが鉄則。見逃しても弱者に同じことを繰り返すでの」


「放置でいいのか?」


「ハイエーナが血の匂いに誘われ始末してくれるわ。この先いくらでも屑どもが湧いてくるぞい」


「強者の冒険者以外、迂闊に街の外から出られないということか」


「クラスの高い魔物も大陸中繁殖しとるし、移動だけはどうにもならんかもしれんのう。次の街での乗合馬車もあやしいわ。ウッマが売っておればええんじゃが」


「お前の魔法は、」


「ゴトーよ。いいかげん「お前」呼ばわりはなかろう。相棒ならそれなりの呼び方があろうが」


「・・・分かった。見た目の割に精神年齢が高いということで「姐御」と呼ぶのはどうだ?」


「……下っ端感がある奴ならええが、ゴトーは強者で違うじゃろ」


「一応、魔法を教わったということで「師匠」呼びはどうだ?」


「ワッチより強いくせにそれはない」


「……では兄妹設定の「妹者」はどうだ?」


「ゴトーを兄者と呼ぶのはこそばいわ」


「では親子設定で「娘子」と呼ぼう。パパと呼びなさい」


「普通にシーナと呼べや」


★★


森の中を歩く2人。

ゴトーは歩きながら「サーチ」スキルを発動。


「・・・・・」


「何か引っ掛かっておるんか?」


「半径1キロ圏内に大物の反応はない」


「1キロて、広範囲過ぎじゃろ……」


「100キロまで伸ばせる」


「……まあ、ゴトーじゃからな」


「スライムを探しているんだが」


「スライム? それならそこいら辺におるぞ」


「サーチをしても見つからない」


「魔物最弱スライムは、気配もなしで戦闘能力1以下。空気みたいなもんで索敵にも引っかからんこともある。

ほれ、そこの木の後ろに隠れておるぞ」


木の元へと探すと子猫くらいの大きさ、半透明、不定形のスライムを発見。

ゴトーは逃げようとするスライムを捕まえる。


可愛い鳴き声で反発する。

『ミィー キィー キィ― 』


「スライムなど、子供でも棒で叩きゃ倒せるぞい」


「[クリーン]」

「洗浄」スキルでスライムに付着した泥が綺麗に洗い流される。


『ミィーー?』


「色は灰色。目は小さく口は肉眼では確認できず。

青やオレンジ色を期待したんだが・・・」


「思ってたんと違うんか?」


「これは○井雄二氏の初期のスライムモンスターのデザインだ。

スライムと言ったら、○山明先生の雫型でなければならない」


「……しづく、型? これじゃ納得いかんのか?」


「今風なら、○生したらスライムだった件、だ」


「……?」


「触り心地もスライム粘土のような触感でなければ」


「ワッチはスライムのネバネバは苦手じゃわ」


プ二プ二するゴトー。

『キィーー 』

手には粘液が付着。


「ゴトーよ、ちょいとオシッコしてくるのじゃ」


「了解だ」


シーナは遠くの木の陰へと向かう。


手に持つスライムを眺めるゴトー。

頬ずりをする。

『ミィ―?』



10分後。


「おー、いてててて。便の硬さが深刻じゃのう……。早うゴトーからマヨネーズを……」


シーナはゴトーの居た場所へと戻ると、リュウノスケが胸に飛び込んでくる。


『ピューイ↓ピュイピュイ↓』


「どうしたん、慌てて」


地面に仰向けで倒れている全裸のゴトーの姿。


「なっ!」


駆け寄ると、身体全体にスライムが覆い被さっている。


「ゴトー!!」


ゴトーを覆ったスライムに、指先から火の魔法を掛ける。

バチンっと破裂しバラバラになるスライム。


「しまった! 窒息か!」


分裂したスライムはお互いくっつき元の大きさに戻り、木の陰へと逃げ込む。


衣服は溶かされ全裸のゴトー。

――

 (注) 

モザイクをお願いします!

――


目は閉じたままのゴトー。


「ゴトー!起きい!」


両頬を叩く。<ぺチぺチぺチッ!>


「おいおいおい、冗談じゃろ!」


脈拍を確認、心臓の音を聞く。


「死んどるわ……」


安らかな眠りにつくゴトー。


「ゴトーー! エンペラーにも紅龍にも負けん奴がスライムにやられるんかー!? あり得んじゃろー!!」


「――――――」 <ぺチぺチぺチッ!>


「マヨネーズやプリン、ケーキはどうしてくるんじゃー!!!」


「―――――――――――」


――

42 ゴトー テラウスの地にて死す 終わり

43 夢の国 

――

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