第41話 獣人少女
雑貨屋。
店の店内で買い物中のゴトーとシーナ。
「キャーーー!」
「おらっ!大人しくろ!」
店の外から怒声と悲鳴。
「イヤーーー!」
「何事じゃ?」
ゴトーとシーナは店外へと。
どっぷりと豚のように肥え太った男が、少女の腕を掴み馬車に押し込もうとする。
母親らしき中年女性が、
「勘弁してください! お金ならなんとかします!」
「じゃあ今月の利子分をキッチリと払え、今すぐにだ!」
「後生です、もう少し、待ってください……」
「待てねーな」
「娘の代わりに私を!」
「お前みたいな年増は需要がねえんだよ!どけ!」
男は母親を突き飛ばす。
「お母さん!」
「カシナ!」
「借金取りか。娘は借金のカタじゃな。ゴトーはこういう場面で同情するタイプか?」
「・・・・・」
「あんなんここでは日常茶飯事じゃ。平民などいくら助けてもキリがない」
「地球の歴史上、発展途上国でもよくある光景だ。冷酷無比の俺に同情は無縁の言葉・・・ん?」
少女は人型の顔。肌は褐色。
頭に小さい猫の耳。お尻には細い尻尾。
――あれは!?
尻に尻尾、頭にケモ耳・・・。
遂に来たか、ケモノフレンズ!
「シューティング・スターは半獣人じゃったが、これがゴトーの目当ての獣人じゃな。
あの母親カタにハメられたのう。借金取りは初めから獣人少女目当てじゃろ。奴隷商の馬車もあるしの」
「奴隷、人身売買か・・・」
「街中で堂々としてるんは合法じゃな。あれだけの器量よしは愛玩用として、獣人嗜好の金持ち連中に売られるかもじゃ」
「無垢な獣人少女が、汚ない男の毒牙に陥るということか・・・」
「お母さん!」
「カシナ!」
泣き崩れる母親。
「私が病弱な為に……」
獣人少女は馬車の中に押し入れられる。
「不当じゃなきゃどうにもならんわ。冷たいようじゃがワッチらに、」
ゴトーは太った借金取りの元へ。
「お、おい、ゴトー」
借金取りの男は、
「何だ、てめえ!」
「借金額はいくらだ?」
「あ!? 赤の他人のお前が支払うっていうのか?」
「借金額を言え」
「金貨8枚(80万円)だ。たかが冒険者に払える額か?」
男の見下す視線に、シーナが割り込んでくる。
「嘘つけい、平民にそんな大金、買し付けるわけなかろうが?」
「利息って知ってるか?」
「高利貸しかい、質が悪いのう。どうせ元金は1、2金貨ぐらいじゃろが」
「領地が定めた正当な金利だ。商売の邪魔するな、去れ去れ!」
ゴトーは布袋から金貨を取り出す。
「金貨8枚だ。これで解放しろ」
男は驚く。
「こいつは物好きな男だな」
金貨の入った重みの袋を見て、男の目の色が変わる。
「悪いな。たった今、利子が増えてプラス金貨10枚。予定外の交渉の手間賃の金貨10枚、あと20枚の加算だ!」
ゴトーはニヤつく男の顎を右手一本で掴む。巨体が宙に浮く。
苦痛の悲鳴、絶叫。
「ぐぇえええ!!」
「何か言ったか?」
「や、やめぃ……」
「追加の金も法が定めた金利なのか? なら払うが」
「い、いらん、いらねええ」
顎を離し、膝から崩れ落ちる咽ぶ男に金貨8枚を投げつける。
「借用証を寄越せ、そして失せろ」
馬車からケモ耳少女を解放。
「くそっ! 覚えてやがれ!」
借金取り、奴隷商の馬車がこの場を去っていく。
「捨てセリフはどこも一緒じゃのう」
「俺にとってはこの程度、ただのNPC以外何者でもないな」
「えぬぴーしー?」
「お母さーん!」
「カシナ!」
ケモ耳少女は涙ながら母親に抱きつく。
「ええのか?」
「かまわない」
「ゴトーは利なしに動く男とは思えんが」
「なに、ここに来て、初獣人だからな」
母親がゴトーの元に。
「あの、有難うございます」
「あ、ありがとう……」
ゴトーは膝を曲げ、少女と同じ目線。
「怪我はなかったか?」
「だいじょうぶです……」
「怪我がなかったなら、良かった」
――これが、ケモ耳・・・念願の・・・。
ケモ耳少女の頭を撫でる。 <ナデナデ>
――初耳ゲット。
思いのほか、弾力があるな。
獣人フィギュアや、秋葉メイドのカチューシャのケモ耳とは雲泥の差。
感触をかみしめながら、ピコピコ横に動く長い尻尾に注目。
「・・・・・」
母親が地面に膝をつく。
「ありがとうございます! いまは返せませんが、お金は必ず一生を掛けてでもお返します」
目線は尻尾にロックオンのまま、
「気にするな。あぶく銭だ」
少女の尻尾を凝視。<ゴクリ>
触れようとする瞬間、
「ちょいこっち来い」
シーナはゴトーの腕を引き、親子から距離をとる。
「ゴトーがチキュウでイッヌやネッコに愛情を持っておるんは、シャシンやドウガで見て知っておる。
まさか借金を払ったんは、獣人の尻尾を触るためなんか?」
「!」
「図星かい。瞼の5ミリ、今までで一番動いたわ」
「・・・・・」(汗)
「ゴトーの性癖は耳や尻尾なんか?」
「性癖ではない。地球には「○ものフレンズ」というアニメが・・・いや、それはいい」
「異性の獣人尻尾を触れるいうことは、その気があるいうことじゃが、ゴトーはロリじゃなかろう」
「先にも言ったが成人女性の巨乳が好みだ」
「まあロリうんぬんはなかろうが、耳や尻尾のために金貨8枚かえ。チキュウ人の価値観はよう分からんわ」
「ファンタジー物では鉄板。ケモ耳尻尾の借金イベントでは、正義感から救う行動は必須」
「その行事いうのが意味分からんわ」
――触れるのが無理なら、
スマホを取り出し、動画を録画開始する。
少女に近づきスマホを構える。
意味が分からず、ビクつきながらおとなしくしている親子。
撮影を終え、シーナの元に。
「か弱い女子供を狙う盗撮や差し向け行為は、卑劣な犯罪行為だ。
この世界ではそのような概念はないが、これは金貨8枚の対価と思ってくれ。
断っておくが、地球ではこのような法律を犯すような行為はしない。
コミケのコスプレ会場、
ケモ耳、尻尾を売りにした地下アイドルの撮影には、正規のオプション料金を支払い撮影に臨む」
「……なんかよう分からんが、ゴトーは殺し屋なんじゃよな?」
「そうだ」
「感なんじゃが、チキュウではそれ、相当なギャップがあるじゃないんか?」
「・・・・・」
「……これは言わん思うておうたが、獣人に触れたきゃ歓楽街に行くことじゃ。成人した獣人もおろう。そこなら金次第で色恋は存在しないからの」
「!」
シーナは親子の元へ。母親に銀貨10枚 (10万円)を手渡す。
「もう高利貸しから借りんようにな」
「いえ、受け取れません!」
「こんな奇跡はもう起こらんぞ。薬でも買って身体を治すことじゃ。この国では獣人は保護の対象じゃが絶対ではない。今後隙を見せんようにな」
母子は何度もお礼をして、その場を離れる。
「ワッチも甘いのう。……これでええか?」
「悪いな」
「おし、乗合馬車の前に市場で食糧を買わんとな。行くぞい」
「で?」 「……ん?」
「どこだ?」 「んん……?」
「歓楽街だ」 「………」 「・・・・・」
「ワッチが知るかい。酒場にでも行って聞いてこんかい」
「出発は明日に伸びるがいいか?」
「………」
真顔のゴトー。
「別に、ゴトーがええなら、ええけど……」
「宿を頼む。朝帰りコースになると思うが」
その場を去るゴトー。
「速攻、行くんかい……」
★★
翌日。宿屋。
――結果的には2日宿で休めて良かったの。魔量も完全に戻ったわ。
ゴトーは昨日帰って来たんかの?
階段を下りると宿の食堂。
食事を終え、ゴトーがテーブルでスマホを眺めている。
――ほんに表情筋が動かんのう。感情あるんか?
気のせいか満足そうな感ではあるが。
ドウガか? まさか昨日の歓楽街の?
ゴトーに話しかける。
「昨日は帰ったんか?」
真剣な表情でスマホから目を離さず、
「朝帰りだ」
「ワッチも「すまほ」を覗いてもええか?」
「好きにしろ」
横からスマホの画面を覗く。
様々な角度からの成人女性の獣人ケモ耳、尻尾が映る動画。
お触りナデナデしてるのはゴトーらしき手。
――引くわー。
「何人もおるのう」
「獣人は全て貸しきりだ。通常の倍額だったがな」
――ブレんわー。
「ゴトーよ、聞きたいことがあるがええか?」
「何だ」
「昨晩、性的な一発はやったんか?」
「やっていない」
スマホの動画には色気のある大人のケモ耳獣人。女児獣人。
「幼子もおるのう」
「童女幼女少女には性的欲求は1ミリ足りともない」
「獣姦にも興味はないと?」
「性的目的は皆無。純粋に動物を愛でるような感覚と思ってくれ」
「……そうか」
「そうだ」
ゴトーはスマホの電源を閉じる。
「用を足してくる。その後はこの街を発つ」
「お、おう……」
――ワッチも急いで朝飯を、ん?
机にゴトーの手帳。
表紙に 「秘密の手帳」と文字。
「………」
手帳を捲る。
――
ー 十三の異世界イベント予定 ー
目指せテンプレ
消化するまで帰れま10
優先順位順
全獣人 ケモ耳尻尾を愛でる 触る 動画
犬獣人 猫獣人 クリア
多種多様なモンスター(魔獣魔物)をテイムする
ケルベロス 済
ブラック・ヘル・タイガー 済
マスコットとなる魔獣のテイムが必要 癒し担当
スライムを望む
シーナを助ける 息子娘関連
純獣人との接触
シーナの知古の虎獣人予定
ホトライト 弱小領地を発展
砂糖 ウィスキー等
各酒類 入手
米 入手
コーヒー豆 入手
エルフと出会う
ドワーフと出会う
マヨネーズ
プリン ケーキなどの甘味
酒場 冒険者ギルドで輩に絡まれる
盗賊 野盗を殲滅する
野盗に襲われるお姫様馬車
もしくは商人馬車を救出
孤児院を救済する (獣人っ子)
孤児院設立も有り
高級娼館におもむく
迷宮探索
カレーライスを作る 食べる
ハンバーグを作る 食べる
タマゴかけ御飯
かつ丼
天丼
龍と対峙 済
備考
龍のイベントは早すぎた。
RPG的、バランス的に後半でもよかった。
これからのインフレが心配 (´・ω・`)
――
「…………」
手帳をそっと閉じてテーブルに置く。
――魔王討伐どこいったん?
獣人好き過ぎて目標変わっとるし……。
――
41 獣人少女 終わり
42 ゴトー テラウスの地にて死す
――