第39話 相棒
ー4日目ー
39,5
39,5(2)
朝。宿屋。
シーナの部屋。
「久しぶりに熟睡できたのう……」
部屋のベットでシーナは目覚め、MPの残量を確認する。
◇
【【ステータス・ボード】】
【名前】シーナ・アルフレッタ
【性別】女
【年齢】68
【種族】亜人 (ヴァンパイア)
【ジョブ】魔術師
【LV】56
【HP】411/552
【MP】240/652
・
・
◇
「回復は240、まあまあじゃのう」
ベットから降りてローブ服に着替える。
――密度の濃い、忙しない3日間じゃった……。
グラディウス・パーティの全滅。
ゴブリン・キングとの戦闘。
転移人のゴトーとの出会い。
上位種最強ゴブリン・エンペラー。
紅龍。
仔龍。
キリーヤの死……。
それと息子娘らか。
「国王派」から「教団派」の「真龍神教教団」へ転向。
教団側から勇者パーティに選定。
子供らをほったらかしにしてきたツケが回ってきたんかのう?
キリーヤの事といい、後悔ばかりじゃわ。
ワッチだけの私怨ならかまわんが、子供らを悪事に加担させるいうなら、さすがにそれは看過できん。
全ての確執、元凶の「真龍神教教団」、似非聖女のカレアとは決着をつけんといかんかもな。
王国勇者パーティ就任式は王都で20日後。
ゴトーとはホトライトの街で別れることになるかもじゃのう……。
★★
ゴトーの部屋の前。
ノックをする前に戸惑う。
――ゴトーはある意味期待を裏切らん男じゃからな……。
ドアをノック。
「入ってもええか?」
「入れ」
ドアを開けて部屋の中に入る。
ゴトーはブリーフパンツ一丁、煙草を吸いながら窓の外を眺めている。
――パンツを履いてるんは一応ワッチへの配慮なんか?
それともギリギリのラインを攻めとるんか?
ゴトーは振り向く。<クルッ>
<ビクッ>
真顔で、
「部屋で1人の時は裸だ」
「……そうかい。散々見せつけられたからの。一応パンツ履いてるんは評価しておくわ」
「見せつけているわけではない。
俺のテリトリー内に入るということは、」
「あー、わかったわかった、別に気にしとらんわ」
―― うちのパパも家では裸族じゃったな。チキュウにも似たような奴がおるんじゃの。
「ワッチは耐性あるが他の若い娘子の前では気ぃ遣えよ」
「レディの前では紳士。そんな失態は演じない」
「ワッチの前では紳士になれんのかい……」
仔龍のリュウノスケが胸に飛び込んで来る。
『ピューーイ♪』
「おっと、おうおう。人慣れしとるのう、愛いやつじゃ」
『ピッキィー!』
頭を撫でると羽根をパタつかせ喜ぶ。
『キュイー♪』
ベットにリュウノスケを置くと、
ゴトーは空間収納から魔獣の生肉を取り出し与える。
『ピュゥウー』↑
リュウノスケはガツガツと肉を頬張る。その食事を眺めながら、
――めんちょこじゃの……癒されるわ……。
「元気がないようだが、平気か?」
「昨日の事か? まあ、思うところはあるがのう……」
「あまり溜め込むな。心身に毒だ」
「ん……」
「子供らは今どこにいるんだ?」
「ワッチらが向かっておる領地の隣り、レイブル王国都市じゃろ。子らとは数年は会ってはおらん」
シーナは俯きながらベットに腰かける。
「カレアとの因縁もあるが、今は子供らじゃ。今さら親の顔して会うんは迷惑じゃろうな。ワッチが子供らの人生にどうこう言える立場じゃないしのう」
「俺が他人の家庭環境に口を挟むのはおこがましいが、俺がお前の立場なら、子供に煙たがれようが会わない選択はない」
「………」
「1人で会うのが恐いのか? 力になれるかは分からないが、その時は俺を頼ればいい。もう相棒の悲しむ顔は見たくないからな」
「……ゴトー」
顔を上げると目の前、至近距離50センチにパンツ一丁の股間。
「………」
――ええ言葉の後に必ず落としてくるんじゃが、チキュウではこれが当たり前なんか?
「ゴトーよ」
「何だ」
「チキュウでは決め台詞の後は、股間を見せつける決まり事でもあるんか?」
「そんなものはない」
「どこの世界であろうと、ないよな?」
「ないな」
――いつも通りの天然のなせる業か?
股間はワッチを落ち込ませんよう、気を紛らわせよう意図的なものなんか?
ゴトーなりの気遣いと捉えてもええんか?
至近距離30センチにモッコリパンツの股間。
――やっぱ、考え過ぎなんかのう?
「お前が望むなら諜報や暗殺をも率先しよう。相棒の為なら俺が必要悪となろう」
「……心強い言葉じゃが、それはちと重いわ。
物騒な事はなしにしても、ワッチが迷うた時は、頼ってもええか?」
「頼れ、お前の敵は俺の敵。俺はお前の相棒だ」
――相棒。
正直、独りじゃったら耐えられんく病んでいたかもじゃ。
股間を見せつけるんがセラピー言われたら納得はできかねんが……。
「頼らせてもらおうかのう、ゴトー」
「目的地のホトライトまで数日を要する。
とりあえず先の事は街に着いてから考えればいいだろう」
20センチ手前に近づく股間。
「それで頼むわ。……それとあと早う服を着んかい。
密室で幼女とパンツ男の絵面は犯罪じゃ」
――
39 相棒 終わり
40 買い物をしよう
――
――
39.5話 キャラ4
キャリーバッグの日替わりステッカー。
「この女子の名前はなんじゃ?」
「○ロだ」
「ほろ……。見事な毛並みな尻尾じゃの」
「狼の化身、堅狼○ロ」
「狼人族か」
「俺は原作本、スピンオフ、ゲーム、コミカライズ、新旧のアニメ、フィギュア、関連商品と全て網羅、コレクションをしている」
「……ぺっこらと同じゃの」
「俺の嫁、本命だ」
「……おれの、嫁?」
「理想的で架空の女性キャラクターに対して用いる言葉。
要はお気に入りの「二次元キャラ」ということだ」
「にじげん…? チキュウ人は姿絵にも恋をするんか?」
「そういう者も一定数は存在する」
「その一定数の中に、ゴトーも含まれておるんか?」
「ああ」
「それって、絵が飛び出てイチャコラとかできるんか?」
「眺め、愛でるだけだ」
「なんかそれって特殊いうか、屈折しておらんか」
「屈折ではない。作品とキャラに対する愛情表現だ」
「……チキュウ人、変わっとるの」
「そろそろ、3次元の本物の獣人成分が欲しいんだが」
「………?」
「この街にはこのステッカーにあるような獣人は居るのか?」
「「すてっか」と同じかは知らんが、まあ、似たような奴はおるんじゃないか。
この街で会えるとは限らんが。てか、早う服を着ろや!」
――
(ピコーン!)
次の次のお話で待望の獣人少女と接触します
――
39,5 (2) 音楽
ゴトーは前日、購入した服を着る。
シーナは食事中のリュウノスケの頭を撫でる。
「リュウノスケは母龍から一時的にゴトーに託されておるが、
決して見捨てられとるわけではないんじゃよな」
『キュィー?』
「いずれ現れる言うとったしな」
「まだ元気は出ないか。
こういう時は、音楽セラピーだな」
ゴトーはスマホを取り出す。
「お、ミックか? ミックの「○本桜」、
「○風オールバック」、また聴きたいのじゃ」
「音楽療法は、不安の軽減、精神的な安定、リラクゼーションなどの効果を与えてくれる。
今回はミクではなく、○音テトだ」
「かさね、てっと?」
「元の音楽はロシア民謡、現代的にアレンジしたものだ」
――
○トリス / ○音テトSV
上記を○ouTube でコピペして聞こう!
(○は埋めてね!)(テ)(重)
――
スマホから動画、音楽が流れてくる。
<♪~♫~♪>
動画が終わる。
「どうだ? 元気が出たか?」
「なんか忙しない歌じゃの、なに言っとるか全然意味がわからんかったわ。
なしてこの女子はクルクル回って歌を歌ってるんじゃ?」
「そういう意味のないコンセプトだ」
「意味がない? こんせん、と?」
「これは刺さらなかったか・・・」
「刺すって、なに刺すんじゃ、いや、刺すな」
「ツボにハマらなかったという意味だ」
「なして壺に入らないかんのじゃ」
もう1本動画を用意する。
「ここは角度を変え、ニコニコ、古の陰陽師だな」
「にこにこ? おんみょうじ……」
――
レッツゴー!○陽師 PV
上記を○ouTube でコピペして聞こう!
――
動画が終わる。
「どうだ? 元気が出たか?」
「元気というか、男の圧が強過ぎて恐いんじゃが……」
「ニコニコ全盛期、人気を博した動画だ」
「リュウノスケがワッチの後ろで恐がってるぞい」
『キュウウウウ』↓
<ガクガクブルブル>
「この動画は封印だな」
「おんみょーじ……なんか聞いたことがあるの」
「このテラウスでも陰陽師は存在しているのか?」
「いや、たしか過去の転移人におったような?」
「安倍晴明か?」
「いや、名前まで知らん。おんみょう、五行? 魔術を使ってたと記録があるの」
「初代転移人は、500年前に召喚されたと聞く。
安倍晴明の生前は1000年前の歴史上の人物だ」
「じゃあ転移人と関係ないの」
「・・・才覚を持った、子孫という可能性もあるな」
「何気にチキュウも凄いんじゃの」
「いや、この「テラウス星」の設定には負けるな」
「……設定?」
「転移人に服部半蔵の確認もある。これが、ご都合主義か・・・」
「………」