変なテープ
これは私が小学生の頃の話し。
だいたい高学年ぐらいだったと思う。
実家にある自室の窓を開けると、転落防止の白い柵がある。その柵の下部、下端と呼ばれる5cm幅ぐらいの枠の上に横たえるようにカセットテープが置かれていた。
もちろん、私はそんなところにテープを置いた記憶はない。
『兄のいたずら?』
と一瞬思ったが、すぐに
ないない。
と思い直す。
10歳年上の兄は「蜜柑って実が下に連なっていくんだよ。皮の下の部分が、ちょっと膨らんでるところがあるだろ?あれが大きくなるんだ」
と、とんでもない嘘を私に吐いてくる、わりとお茶目な兄だ。(迫真の語りに私は騙された)
しかし、テープを準備して妹の部屋に入り、柵と外壁の間という、兄の腕より細い隙間を縫ってテープを置くような手間はしない。
というか、10cmあるかないかの隙間に小学生女児以外の腕は通らんよな。と今振り返って気づいた。
怖い。
一先ず、新事実は置いておくとして。
外から誰か置いたのか?とも当時考えてみた。
住んでいる集合住宅の外階段には、各階に踊場が一つずつ設置されている。
その踊場の柵に足を掛け、雨樋のパイプを掴めば各家の窓柵に移ることもできるが、しかしテープを乗せるためだけに4階の窓に手を伸ばすのは自殺行為だ。
不思議に思いながら、取り敢えず私はテープを再生機に入れて、ボタンを押す。
途端に、よく分からん男性の声が、凄まじい勢いで喋り出したのだ。
早送りみたいに。
怖くなってテープを止め、そして、めちゃくちゃ興奮した。
私は次の日に学校に持っていくと、経緯を話ながら友人にこのテープを手渡してみた。
友人は怖がりながらも、自宅で聞いてみる!と受け取ってくれた。
『きっと怖がってくれるはず!』
どんな反応が返ってくるか、期待しながら次の日に感想を聞いてみると、友人はつまらなそうな顔でテープを返してくる。
「テープ、どうだった?」
「知らない外人さんが英語の練習してるテープだったよ。途中で間違えた、とか言ってた」
何がなんだか分からない。
私は首を傾げながら、テープを受け取った。
自宅に戻ってもう一度、テープを再生する。やはり凄い勢いで男性が喋っていた。
ちゃんと再生ボタンを押している。
間違っていない。
恐ろしくなって、私はテープを捨てた。
当時を思い出しながら書いてみても、やはり訳が分からないな、と思いました。