生まれた日 前哨
「邪神」それは神殺しの烙印。世界の概念である「神」は七柱存在したその他は神を名乗る「強者」でしかなかった。この「強者」に人族は少なく、人という存在もまた「神」のように希少な存在であった。しかし反対に絶対的な弱さを誇り、比較として見下されてきた。
しかしもっとも不幸なのは人族ではなく彼だった。人は彼を「忌み子」とよび虐げた。物理ではなく精神に。
村八分、島流し、どういう目的であれ国を追われた。その理由はただ一つ、彼の父が「邪神」だったから。
人族最大の国家『アルカスラ』は七柱のうちの一柱、「審判神アルタレスト」を信仰していた。
そう、していただ。15年前、彼の父が殺した。そしてアルタレストの概念を自分の息子に託した。その時の思いはどうだったのだろうか。だが審判の概念を世界は恐れ、憎んだ。とくにアルカスラは神殺しを憎み「邪神」を大義名分のもとに処刑した。恐れがなくなり残ったのは憎悪。
民衆は彼を憎み、彼は父親を憎んだ。復讐を天に誓った。しかし幸運なことにぶつける相手がいなかった。
誰も殺せなかった。いつしかそんな気持ちも忘れたのだろうか。それともなにか吹き込まれたのか。彼は自分を殺した。