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歩美ちゃんは勝ちたい  作者: 秋谷イル
高校生編

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娘vs七不思議(1)

「七不思議?」

「うん、せっかく学校に泊まれることになったんだしさ、肝試しも兼ねて七不思議ツアーなんてどう?」

 文化祭準備中、時間が押していて一日だけ泊まり込みでの作業許可が下りた私達は日が暮れた後も校内に残っていた。

 話しかけてきたのは、この学校で友達になった新聞部所属のクラスメート・彼方(かなた) 千里(ちさと)ちゃん。ついでに取材もするつもりだろう。手にはデジタルカメラを構えている。

「肝試しって、もう九月だよ?」

 苦笑しながら困ったなと考える私。この学校の七不思議のうち五つは真っ赤な嘘だって知っている。そして残り二つは本当だった。だから──

(時雨さんと雫さんが片付けちゃったんだよね……)

 私に危険が降りかからないようにと入学が決まった時点で調査に入り、本当に存在していた怪異を祓っておいたそうな。雫さんだけならともかく、時雨さんからも聞かされた話なので冗談じゃないと思う。

 あれ? でも、ということは何事も起こらず肝試しは終わるってことだし、むしろ良いことなのか。千里ちゃんはがっかりするかもしれないけど。

 ちなみにこの子、苗字でも下の名前でも名前っぽいので、どっちで呼んでも親しみやすいと評判である。小柄でいつでも元気良く走り回っていて、一緒にいると友美を思い出したりもする。友美も父さんがプレゼントであげたトイカメラを使って色々撮影して遊んでたっけな。

 肝心の作業は、この時間まで頑張ったおかげでかなり進展している。これなら間に合うはず。そもそも私達女子の担当分は終わっていて、今は男子達の仕事が終わるのを待っているだけ。手伝いを申し出たんだけど、何やらこだわりがあるらしく女子は手を出すなと突っぱねられてしまった。なので暇を持て余している。中にはすでにコンビニまで買い物へ行った子達も。

 二十時からは先生に引率してもらって近くの銭湯まで行く予定。それまで三十分。これだけ時間があれば大丈夫かな。

「いいね、行ってみよう」

 私より先に同意したのは、やはり高校に入ってからの友達で背が高く凛とした顔立ちの御剣みつるぎ 勇花(ゆうか)さん。同い年だってわかってるんだけど、先輩どころか社会人って言われても納得してしまいそうなほど大人びている。だからついついさん付けで呼んでしまう。

「校内をぐるっと一周するくらいの時間はあるだろ。大塚君もどう?」

「う〜ん……」

 勇花さんにまで誘われ熟考。何も起こらないはず。はずだけど、ほら私には例の重力があるから万が一も考えられる。余計なことには首を突っ込まない方がいいかもしれない。

 とはいえ、この二人だけで行かせるのもそれはそれで心配なんだよな。勇花さん見た目は大人びてるけど実はドジっ子だし、苦手なものも多くて、いざという時ほど頼りにならない。一方、千里ちゃんは恐れ知らずでなんにでも猪突猛進に突っ込んで行く。

 頼れるさおちゃんは別のクラスで帰宅済み。この学校は毎年クラス替えがある。来年は同じ教室になれるといいな。

 いや、そうじゃない。肝試しをどうするかだ。しばし考え込んだ私は、ふとあるものの存在を思い出して立ち上がる。

「オッケー、行こう」

 時雨さん達の調査に見落としがあった場合、私がいなくても二人は危ない目に遭うかもしれない。なら私が一緒に行った方が安全なはず。

 なにせこっちには、これがあるんだから。




 クラスメートに断りを入れ、それから教室を出た私達は、廊下を三人並んで歩き始めた。日中なら他の通行人の邪魔になるけど今は夜だし横並びでもいいでしょ。他の生徒は全く見当たらないし。

「あの、歩きにくいんだけど……」

「ふ、ふふ、ふふふ、だが大塚君の安全のためにはしかたない処置さ」

「そうそう、しかたないしょちなのだ」

 左手に勇花さんがしがみつき、右手を千里ちゃんに掴まれている。二人ともそんな怖いならやらなきゃいいのに。

「本当に大丈夫なの、勇花さん?」

「に、苦手は克服しないと。それにほら、警官になったらもっとおどろおどろした場所に入ることもあるかもだし」

「御剣ちゃんはおまわりさんになるんだもんね」

 う~ん、警官になった勇花さんか。きっと見た目はすごくかっこいいだろう。でも実態を知ってる私としては不安にしかならない。

「警官もいいけど、個人的には勇花さんにはお花屋さんとか向いてる気がする」

「それは無理だよ。花ってけっこう虫がついてるじゃないか」

「ああ、虫も苦手だったね……」

 むしろこの人、何なら平気なんだろう? 運動も勉強も平均以下なんだよね。警察官て両方必要なんじゃ……。

「大塚ちゃんは流石だね。夜の校舎なんてたいてーの人は怖がるのに」

「ここはまだ電気ついてるじゃん」

 他にも居残って作業しているクラスがあるため、教室に面した廊下は明るい。人の声や作業音も聴こえて来るので全然平気。

 それに私、前にもっと怖い体験もしたし。

「それで、最初はどこだっけ?」

「えーと、3Eの教室の隅っこにある花瓶だね。何故かその教室にだけ飾られてて、噂によると何年か前にいじめを苦にした子がそこで自殺してたって」

「じゃあ上の階か」

「待ってくれ大塚君。ちょっと急ぎ過ぎだよ。こっちは腰が抜けそうなのに」

「もう勇花さんだけ教室に戻った方がいいんじゃない?」



 というわけで3Eに到着。

「花瓶はあるけど」

「とっ、特に何も無いね。ははっ、大したことはないな」

「写真だけ撮っとこ」

「彼方君! あんまり長居しちゃ霊を怒らせるかもしれない! もう行こう!」



 図書室。

「あるー?」

「背表紙に何も書かれてない本って言われても……こう暗くちゃ探しにくいよ」

 流石にこんな時間に勝手に図書室に入ったことがバレたら怒られそうだし照明は点けずスマホのライトで探索中。

「やだー、もう出たいー、暗いー、怖いー、狭いー」

「あらら、御剣ちゃんが限界だ」

「それじゃあ出ようか」

「たすけてー、おおつかくーん、かなたくーん」

「今行くから、って」

 この本、背表紙が無い……ここの七不思議は“背表紙が無い本を開くと良くないことが起こる”だって千里ちゃんが言ってたけど……。

「よし」

 私はその本を人目につかないよう、棚の上の誰も気付きそうにない死角に隠してやった。

(後で時雨さんに報告しよう)

 ぢぐじょおおおおおおおおおおおおおおおおお! という声がどこからか聴こえた気がしたけれど、無視して図書室を出た。



 音楽室。

「ベートーベンの目が光るって、またベタな」

「たしかに光ってるけど」

「ライトの光が目のところの白い絵の具に反射してるだけだね」

 勇花さんですらタネがわかってスンと冷静になってしまう。

「ははは、所詮七不思議なんてこんな他愛もないオチがつくものなんだろうね」

「あっ、シューベルトが笑ってる」

「ひゃあああああああああああああああああああああああああっ!?」

「勇花さん!? お、追いかけなきゃ!」

「まって本当に笑ってるの! ほら、あれ!」

「いいから!」

「撮影させてえええええええええええええええええええっ!!」


 ──後日、昼間に改めて観察したらシューベルトは元々笑ってた。こういうのじっくり見ることってあんまり無いもんね。知らなかった。

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