最終回 魔鎧戦記よ、永遠なれ
クレアーツィ帰還の報告は大陸中に届いた。
世界を救った英雄、その中心人物の帰還。
誰しもが沸き立つ中で、クレアーツィは館から出てこなかった。
自らの子であり、自分自身であり、戦友である存在。
「ゴウザンバーをちゃーんと元通りに直してやらないとな」
彼にとって最も重視すべき事象、それをするために帰ってきても誰にも連絡を取らなかったのだという。
「皆の前に出るなら、ゴウザンバーと一緒にってな」
世界を救った、などという肩書を彼は誇示しない、というよりもそもそも興味がない。
自分だけではビートゥは到底倒せなかったし、あの戦いに参加できたのはゴウザンバーのおかげである。
だからこそ、仮に自分が戦いでたたえられるようなことがあるというのであれば、ゴウザンバーと共にでなければならない。
「皆が求めてるのが英雄だというのなら、俺だけではだめだ。英雄クレアーツィ・プリーマなーんてのは嘘っぱち、正しくは英雄ゴウザンバーとその搭乗者クレアーツィ・プリーマだぜ」
苦笑いを浮かべながら、そう語るところをエストは何度も見ていた。
ゴウザンバーのダメージは、もはや見るも無残と言っても過言ではない。
全身の装甲にひびが入り、ひどい部位には穴がいくつも空いている。左腕は関節から先が失われ、まるで潰されたかのように、右目には大きな傷跡がある。まともに立たせることも難しいのか、膝立ちの状態になっているのもあり、あの戦いのダメージが想像以上に大きな影響を残したことが目に見えて分かる。
当然だが人々にこのような姿を晒すわけにはいかない。
求められるのは、世界を救った勇者ゴウザンバーの姿、まかり間違っても重症患者ゴウザンバーでは断じていけない。
クレアーツィの考えは、エストにもよく分かるものであった。
ブレイドザンバーを筆頭に、先に帰還していた彼女たちのザンバーのダメージはあまり酷いモノではなかった。
なにも彼女たちが楽をしていたなどという話ではない、戦闘のほとんどは各機が合体したコキュートスで行われていた。むしろ敵からのダメージだけで考えるのならば、ゴウザンバーはコアユニットとして内蔵される形であったため、そう大したことはないはずだった。
であれば、何故ゴウザンバーが最も大きなダメージを負ったのか、言うまでもないグローリーモードと、ザンバーバーニングの合わせ技、自爆は必然ともとれるそれを使ったとどめの一撃だ。
――と、エストは考えていたのだが、それは不正確であった。
「ゴウザンバーはさ、俺と一緒に裁かれに行ってくれたんだ」
ぽつりと彼がつぶやいた言葉は、エストの耳に入った時いったい何を言うのかと目を細めた。
「裁かれた? いったい何に?」
「死んだけど、無理やり帰ってきた、覚えてるだろ?」
クレアーツィ・プリーマは一度死に、同じ世界に転生を果たした。
結論から言えばその方法は正規の手段ではない、ビートゥですら正規の手段を使って転生をしていたし、転生者を呼び出していた。
それが罪の一つ。
「で、マギアウストを作り、この世界に戦乱を巻き起こした」
だからこそ、裁かれ地獄へ行くはずだった。
そう、行く"はず"だった。
結論から言えば、彼は地獄へと堕ちていない。
「代わりにウサンクさんが行ってくれた、もともと裁かれる予定だったし――」
奴を止めるために戦ったヒーローが、奴を止めるために行った行動で裁かれるのは、きっと誰にとっても寝覚めの悪い話だから。
「なんて言ってな」
それでも、戦乱を引き起こす要因となった罪故に、裁かれ帰ってきたのだという。
「実に平等。いや、むしろ寛大な裁きだ、どちらにせよ死んだ人間として、正規の手段での転生が当然の扱いだろうに」
元々は、裁かれそこで終わるつもりだった、などという本音をクレアーツィは語るつもりはない。
彼が生きているのは、生きて欲しいと望んだ誰か、そう誰かがいたからだ。
まだ自分に生きて欲しいと望む人々の思いを知ったからだ。
それに――。
「あの時駆けつけてくれた、スーパーロボットたちにお礼を言いに行きたいしさ」
クレアーツィがゴウザンバーの修復を終えて一月が経過した。
その間大陸中の至る所で、式典に参加しては笑みを振りまいて見せた。
世界を救った英雄としてふるまい続け――。
「じゃ、俺行ってくるわ」
クレアーツィは、一人の男はそう語った。
苦笑いを浮かべながら、異なる世界へ向けて旅立つことの宣言、ゴウザンバーと共に行くのだと。
「じゃ、あんたが旅してる間、帰ってくる場所を私たちは守ってるわ」
にぃっと満面の笑みを浮かべながら、エストは、一人の女はそう告げた。
別れは寂しくないのか? 否、次会った時に、今よりも楽しく話をすればいい。
別れとは再開のための準備だ、時には離れることも絆を強くするためには大切なモノ。
故に自分たちの絆を信じ、より強くするために二人は笑みを浮かべて別れる。
ずっと笑顔の、最も美しい自分を覚えていてもらうために。
「さぁ、行くぞゴウザンバー!」
別れを決め、クレアーツィはゴウザンバーへと乗り込んでいく。
「いってらっしゃい、クレアーツィ! ゴウザンバー!」
エストの言葉を背に受けて――。
「バーンドアップ!!」
赤き魔鎧の勇者は今日もどこか、助けを求める声を求めて飛んでいく。
いずれまた、彼が、そして彼の仲間たちが皆様の前に現れることもあるでしょう。
それまでは魔鎧戦記、ゴウザンバーの物語はおやすみです。
【魔鎧戦記ゴウザンバー 完】
2021年7月13日、皆さまの前に私が送り出したスーパーロボット、ゴウザンバーが登場しました。
大体5ヵ月という短い期間でしたが、しっかりと書き上げてきました。
楽しんでいただけたでしょうか?
50年以上人々はスーパーロボットたちの活躍に心を震わされ、手に汗握る彼らの活躍を応援してきました。
当然私はその全てを知りません、ですがその全てがその時代の人々のために雄姿を見せてくれたことでしょう。
私なんかが、その影響を受けて執筆した魔鎧戦記ゴウザンバーは、その全ての作品にかかわった人々への賞賛、そしてすべてのスーパーロボットたちを応援してきた皆さまへの賛歌としたものです。
あの日テレビの前で声援を送った日を思い出していただければ、それは実に私としては嬉しいものです。
さて、ぐだぐだ語りましたが、ゴウザンバーとクレアーツィ達の物語はいったんここでおしまい、はい、一度お別れです。
もしかしたら、劇場版みたいなノリで何か書くかもしれないですが、それはそれとしてという話です。
ですが、思い出したように読み返してくれれば、彼らはいつでも皆さんの前にやってきてくれることでしょう。
それでは最後に……スーパーロボットは永遠です!!
追記:新作、絡繰武勝叢雲という作品を執筆中です、どうぞそちらも楽しんでいただければ




