第84話 終焉の戦火
【管理者】
それぞれの世界を管理するモノが、一個人としてふるまうようになってしまった存在。
ただ自らの野望のためだけに、力を振るう邪悪の罪は――。
勝敗は決した、たとえどのような世界となろうとも、力を合わせたスーパーロボット軍団には敵わない。
どれだけの策を弄しても、その全てを正面から叩き潰された。
最強チートスキルであろうとも、その全てが打ち破られたのだ。
子供たちの勝利を願うという純粋な心の力に。
故にまともな感性をしているのであれば諦め、これまでのツケを支払わねばならない
他の世界全てを踏み台とした、理想の世界の構築という野望の。
「……もう終わりだ、お前の野望もっ! お前の上にいる存在の野望も!!」
「いいや、まだ終わっていないよ」
そう、まともな感性をしていれば――。
「俺は最高の世界のためには負けられないっ!」
ビートゥは決してまともな存在ではなく――。
「そう、彼は私の理想を詰めたものなのだから」
彼を作り出した管理する者もまた、当然のようにまともな存在ではない。
「貴方が直々に出てくるとは」
「そちらが禁じ手を使ったのです、ならば同じ土俵に立つために、私も直接干渉するしかないでしょう?」
絶対的な上位概念の襲来、あまりにも異質な存在の襲来にクレアーツィ達は動きが止まる。
何をしてくるのか予測すらできない何か。
「さてと、連れてくるでとどめたそっちに合わせてやりたいところだが、残念ながらこちらはそんな選択肢を必要としないのでね」
強烈なプレッシャーが戦域を、いや世界を支配する。
それは抵抗させずに、その場にいる各機の動きを止めるため――。
「っ……ザンバーアウトっ!」
「クレアーツィ!?」
だからこそクレアーツィは、コキュートスから、ゴウザンバーを分離した。
「ザンバーインフェルノォォォォォ!!」
地獄の炎を纏い、次の一手につなげるために――。
「これより、ゴウザンバーは明日を照らす希望の光となる!!」
ゴウザンバーの分離、それはすなわち各ザンバーの分離を意味する。
合体の基盤となっているのはゴウザンバー、ゴウザンバー無しの合体は存在し得ない。
戦力として劣るはずの単独のゴウザンバー、攻め込むというのであれば行う必要はありはしない。
「まさか、あのバカっ!?」
「巻き込まないためのっ――」
「ドラゴニックザンバー! 出力最大!!」
エストとアーロは即座に理解した、クレアーツィは特攻を選んだのだと。
天才のクレアーツィはそれをしなければ世界を救えない、そう判断したのだと。
そんな中で、ドラゴニックザンバーは……竜希はドラゴニックザンバーの出力を限界にまで高める。
「久しぶりにアレを使います!」
高められた魔導力の全ては、ゴウザンバーに向けて放たれた。
「地獄に落ちるのはお前だ、駄作の、つまらない、時代遅れの子供だましのお前がなぁ!!」
ユースティティア・プラエドーの姿が変貌を遂げてゆく。
神々しさすら感じられる、白銀の姿。
それと共に、管理者がその中に吸い込まれていく。
見る見るうちに、今までの巨体すらも小さく見えるほどの、惑星をも軽々超える存在へと巨大化してゆく。
まるで彼らの肥大化し続けるエゴのように。
彼が望まぬすべてを否定するように、腕が振るわれる。
ただただ目の前の敵を打ち滅ぼすためだけに。
ゴウザンバーが殴り倒される次の瞬間。
「ははははっ、俺でなく仲間に殺されるかっ!」
ゴウザンバーにめがけて、ドラゴニックザンバーから放たれた、魔導力の光が照射された。
そのエネルギー量は、直撃すればゴウザンバーがただでは済まない一撃。
「ナイスだ、竜希ぃっ!!」
その全てをゴウザンバーは受け止め吸収し、今までをはるかに上回るスピードに加速した。
それと共にだ、ゴウザンバーの赤い装甲が、黄金に染まる。
「ゴウザンバー! グローリーモード!!」
「そんなバカな!?」
ビートゥの言葉すらも置き去りに、紅蓮の炎の中で、煌めき続けるゴウザンバーの拳が突き刺さる。
グローリーモード、ザンバーに搭載されている基本システムであり、外部から許容量以上の魔導力を無理矢理注ぎ込むことで、通常時をはるかに上回る強大な力を発揮する姿。
数度しか使っていない切札、故にビートゥと管理者はこの機能のことを忘れ――。
「ザンバァァァっ!! バーニングっ!!」
もう一つの、内部からの出力解放システム、それこそがザンバーバーニング。
瞬間的なエネルギーの増幅により、更なる限界を超えた力を発揮する。
「あのバカっ!?」
「自壊する気か!?」
放たれる力の全てを割き、空間を翔ける。
地獄の炎が、悪逆を焼くのだ。
それは世界を戦乱に導いた発明者、クレアーツィにも向けられる。
その身を、魂を焼かれながら、ユースティティア・プラエドーを殴り続ける。
その実の全てが燃え尽きたとしても、目の前の敵を打倒すため。
「ザンバァァァァァァッ!!」
クレアーツィの叫びの意図を誰かが理解した。
彼は、彼らはユースティティア・プラエドーに向けて最大の一撃を仕掛けんとする。
ゴウザンバーを巻き添えにしてでも。
「やりゃあいいんでしょ、やりゃあ!!」
だからこそ、エストは、ブレイドザンバーはその剣を手にゴウザンバーの下へと飛ぶ。
彼が為そうとする、最後の希望に賭けるために。
「コラァァァァァッジョ!!」
男の叫びに応じるために、女は剣を投げ渡した。
女の献身に応える為に、男は剣を手に取った。
ただそれだけの行動、それと共にゴウザンバーは手にした剣。
ザンバーソードにすべての魔導力を注ぎ込む。
それと共に、剣は、町よりも、国よりも、大地よりも、惑星よりも、銀河よりも、何者よりも巨大な剣へと変化した。
ソレは誰からも見えた、たとえ世界が違っても、時代が違っても誰もがそれを見た。
「全てのエネルギーをあそこへ!!」
アーロの言葉に応じるように、集いし英雄たちは、その身を動かす力を剣に託す。
「エネルギー出力、無限程度で――」
ユースティティア・プラエドーは、ビートゥと管理者はやられてたまるかと、無限の力を開放する。
無限と無限の戦いならば、後は意志の強い方が勝つ、ならばこちらの勝利だとばかりに笑い。
「こっちは無限大だぁっ!!」
巨悪は、何が起きたかも理解できないままに、一刀両断された。
真なる死から逃れようと、魂がその場から逃げようとする。
上位者である権限を使い、この場から消えようとする。
だがもう遅い。
現世でありながら、地獄の炎が二つの魂を塵すら残さず焼き尽くした。
戦いの終焉、それと共にゴウザンバーの瞳から光が消える。
グローリーモード、ザンバーバーニングの併用が待つのは自壊ただ一つ。
魔導力を全身にいきわたらせるパスがズタズタに引き裂かれていた。
力を失ったゴウザンバーは、ただ重力に従い墜ちて行った。
その光景を見ながら、この地に集ったスーパーロボットたちは、皆自らの世界に帰っていく。
彼らの物語を求める人々が、彼らの勇姿を求める人々がどこかの世界にあるのだから。
そしてそれは、この世界の存在ではないゴウザンバーたちも同じであった。
【地獄の炎】
クレアーツィが、一度死んだ時に借り受けた炎。
それは魂を焼く炎であり、罪人を焼く炎であり、罪を償わせるもの。
その者が罪深ければ罪深いほどに協力に、跡形もなく焼き尽くす。
ビートゥと管理者のような、数多の世界を滅ぼそうとした存在にとって、最も恐れるべきもの。
彼らは二度と輪廻の輪の中で転生することはなく、その先に救いがあるわけでもない。




