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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第三章 地球編
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第80話 鋼の英雄

【ビートゥ・サリー・アイディール】

 諸悪の根源である、ビートゥの真なる名。

 アイディールとは英語で理想を意味する言葉である。

 深海一万メートルを超えたその先、海の底とは到底思えない光景が広がっていた。


 そこに在るのは、まるで古代ギリシャのドリーア式建築。


 より直感的に言えば――。


「……神殿、だよね」

「地球の神殿はここまで深い海の底に作る……って訳じゃないよな」

「そもそもそこまでの技術はないでしょ」

「深海だからね……」


 敵の拠点であることを、一時的に忘れてしまうほどに、神秘的な光景。


 本来ならば太陽の光すら届かない場所で、にもかかわらず神々しさすら感じさせる輝きがある。


 明らかに異常な感覚の中で、若い男の声が響き渡る。


「……クレアーツィ、まさか人々を見捨てて俺を倒しに来るとはな」


 世界同時攻撃が始まったことを、クレアーツィは理解していた。


「まぁ、仕方がない話だよな? お前たちは俺を追ってやってきた」


 男の声をクレアーツィは知っている。


「だからこの世界の人間のことを、どうでもいいと放り捨てて、俺を殺しに来た……だろう?」


 嘲る様な声色で、男はやってきた戦士に問いかける。


 世界を救うために、他の全てを捨てたのだろうと。


 だから、この世界の人間が何人死んでも構わないのだろう。


「ふふっ、ふふふふっ、はっはっはっはっはっ!!」


 だからこそ、その問いかけに対して、クレアーツィは高らかに笑う。


 それはもう、問いかけそのものがバカバカしいにもほどがあると、それを示すかのように笑い続ける。


 彼の行動に対して、エスト達もまるで気にしていない様子を見せる。


「な、何がおかしい!?」

「これはさすがに、笑うなという方が無理があるぜ」


 クレアーツィの言葉に追随するように、面々も笑いをこらえきれないといった様子を見せて、ついには吹き出してしまうほど。


 深海だとは思えないほどに、人々の笑いが木霊した。


「この世界はこの世界の人間だけでも、本当は守れるんだよ」




「そらそらそらっ! 適当に撃っても撃墜できらぁ!!」


 迫る機械人形の軍勢相手に、アイアン・ウォーの軍勢はまるで怯むことなく砲撃を繰り返す。


「ははははっ、生きて帰ったら英雄としてモテモテじゃい!!」


 無限の敵を相手にして、どうして気丈に振る舞えるのか?


 そもそもの話として、彼らは立ち向かう術がなかったとしても、それでも立ち向かった英雄たちだ。


 であれば、とうの昔に数が多いだけの木偶人形を恐れるものなど居はしない。


 そんな彼らが、互角以上に立ち向かえる力を得たとすれば、それはすなわち――。




「一騎当千の勇者が力を合わせて立ち向かう、夢と希望に満ち溢れたものに早変わりだ」


 たとえその命が尽きるとも、戦わなければ未来はない。


 彼らが提示されている現実とはそういうものだ。


 出来の悪い脚本で、どこかで見たことがあるような舞台設定だとしても、役者そのせかいにいきるモノにとって、受け入れて前を見据え演じる(いきる)のだ。


 だから、決して諦めずに立ち向かえる。


 現実を受け入れ、その上で立ち向かうと決めたのだから。


「だから、お前のくだらない小細工なんて、俺たちには通用しない」


 仲間を見捨てたなどという言葉で、心に傷をつけるつもりだったのだろうと、クレアーツィ(しゅじんこう)声の主(ただのコマ)に問いかける。


「ふざけるな」


 だからこそ、クレアーツィの言葉を彼は肯定しない。


 彼の役割は理想の物語の主人公。


 妥協した未来にこそある希望など、決して認められはしない。


「お前のようなド三流の! くだらない駄作の主人公がっ! 俺を馬鹿にするなっ!!」


 クレアーツィに、男の言葉の意味の半分も理解はできていない。


 だがそれでも、彼に負けてはならない事だけは――。


「どんなバカでも理解できることだろうな」


 クレアーツィの言葉と共に、神殿が崩壊していく。


 ただの言葉で戦いが終わったのか?


 答えは否、むしろ世界の滅びは今から始まる。


「……多少は使える役者だと考えていたが、お前はだめだ」


 神殿の中から現れたのは一人の青年の姿。


 ボディラインを隠すような漆黒の外套をまとい、金と銀の瞳を持つ男。


 奴をクレアーツィ達は知っている。


「出たなっ! ビートゥ・ネルトゥアーレ!!」

「いや、違う、違うぞクレアーツィ」


 確かにその男は、クレアーツィの語る通り、ビートゥ・ネルトゥアーレの姿と声だ。


 だがしかし、それは偽りの名。


「魔鎧戦記ゴウザンバーの世界を滅ぼすために俺が用意した偽りの名だ」


 絶対的な力の奔流が、深海の底で解放される。


 荒れ狂う渦の中、ゴンザンバーコキュートスは動きを封じ込められ、生身で崩壊の中から現れた男を見ることしかできなくなる。


「俺の名は――」


 男は口を開けば、ただそれだけで強力なプレッシャーが、ゴウザンバーコキュートスにのしかかる。


 直接は何もしていない、だというのにそれだけでコキュートスが破壊されるのではないか、そう思わざるを得ないほどの力が叩きつけられている。


「ビートゥ・サリー・アイディール」


 彼が自らの名を名乗ると共に、力の奔流が止まっていく。


 簡単な話だ、ただ力を抑えただけ。


 意識しなければあれほどの力が、天災として世界を砕き続ける。


「……感謝しろ。わざわざお前たちのルールで戦ってやるんだからな」


 ビートゥの言葉と共に、崩壊していた神殿が再び集まっていけば一つの形を形成していく。


 お前たち(ロボットモノ)のルールで戦うというのであれば、それはつまり――。


「これは、そうだなユースティティア・プラエドーとでもするか」


 巨大なる人型の化身。それも、コキュートスに登場した段階でもそう見えるほどのバカみたいな大きさ。


 その中に彼は吸い込まれて行った。


 突如現れたビートゥの機体、強大なる威圧感を振り払うように、コキュートスは突撃を開始する。


 一挙手一投足が必殺の一撃であるコキュートスの、全力での攻撃が確かに直撃した。





「ハエが止まったかと思ったぞ?」


 されど傷一つ付かないし、一ミリも動いた様子がない。


「うっ、うそでしょ!?」


 エストの嘆きの言葉など聞く耳持たぬとばかりに、ユースティティア・プラエドーと名付けられたソレが、勢いよく腕を振るう。


「がっ!?」


 ただそれだけで、コキュートスは吹き飛ばされ、一気にマリアナ海溝の底から上空まで吹き飛ばされていく。


「どうした、ド三流……これで俺に勝つつもりだったか?」


 どこまでも滑稽な相手を馬鹿にするように、言葉を選んでは視線を向けるビートゥ。


「……貴様は、モブどもに力を授けて人が守れると思っていたのか?」


 ビートゥの言葉と共に、空中に映像が投影される。


 世界各地で、エクスタームに対抗し続けるレジスタンスの面々の姿。


 ――ではなかった。


「ラビッシャーの者たちの攻撃が始まった、ただのつぎはぎでしかないアレで、何かが守れるなどと息巻いていた姿は、実に滑稽だったぞ」


 無限の敵の性能が格段に向上した。


 ただそれだけで、劣勢ではあった戦場が絶望的にまで追い詰められるのは仕方がないことだった。


 いかに諦めない英雄だとしても、ただの木偶人形相手の話でしかないわけで――。


「諦めろ、慈悲として序盤に雑に倒される雑魚程度の扱いはしてやる」


 ただただどうでもいいことのようにビートゥは口にする、もうお前に勝利の目はないのだと。


 その言葉にどうしようもない、頭の中では理解できてしまったその時だ。


「クレアーツィ、ここであきらめるなんて言わないわよね?」

「世界最強の国に単独でも立ち向かうとした貴方が、高々この程度の敵相手に屈すると?」

「そんなの誰も許してくれないですよ」

「死すらも利用した人が、この程度で止まるわけないですよね?」

「世界を救うヒーローなんだからさ!!」


 仲間の声に、意識を取り戻す。


 弱気になってはいけない、あのような邪悪に屈してはいけない。


 それは生きとし生ける命全てのあるべき姿。


 ならばこそ、強く闘志を燃やし、コキュートスに正義の火を灯す。




「そうだ、それでいい」


 だからこそ、その場にいないはずの人間の言葉に、面々は意識を寄せる。


「う、ウサンクさん!?」


 だからこそ、エストは視線の先にいた男に驚きを隠せなかった。


 自らを転生者と名乗った、自分たちの世界の人間が、何故かここにいるのだから。


「はっはっはっ! それは気にしない……吾輩も……貴様が直接戦闘の舞台に立つのを待っていたのだからな」


 ウサンクの視線の先にいた、ビートゥの姿を積年の恨みとばかりに睨みつける。


 ビートゥの方はと言えば、まるで思い出せないとばかりに困惑を隠せない様子で――。


「集え、我が祈りに応じた英雄たちよ」


 彼の言葉と共に世界が眩い閃光(ひかり)に包まれた瞬間を見た。




「おい、アレって――」


 戦場で戦うレジスタンスの面々は、もはや誰も撃墜はされていないのが奇跡ともいうべき地獄にいた。


 そんな彼らの視界が、一瞬だけ白に染まった次の瞬間の話だ。


 そこにはつい先ほどまではいなかったものがあった。


 小さいモノは三メートルにも満たないもの、大きなものは百メートルを軽々と超えた巨体。


 その全てが、この戦線に加勢にやってきた鋼の勇者たちの姿。


 そしてどこかで、リモコンのレバーが動かされる音がした。

【鋼の勇者】

 突如として現れた、世界の壁を越えて駆け付けたスーパーロボット軍団。

 それはどこかの世界で、確かに世界を救った英雄たち。

 その中には、かつてビートゥが襲ったが返り討ちにされた世界の英雄もいるとかいないとか。

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[一言] お待ちかね! ウサンク・サイーゾの晴れ舞台じゃああああああ!! 頑張れ! ファイトだ! 負けるな!!
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