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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第三章 地球編
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第77話 祈りの砲哮

【零式ヤマト機関銃】

 ツギハギノヤマトが装備しているマシンガン。

 どちらかというと牽制用の装備であり、火力はそこまで高くはない。

 しかしながら、それを補うかのように毎秒七十発の弾丸を連射する超兵器。

 装甲の薄いエクスタームであれば、これだけでも問題なく撃墜することができる。

 四方八方から放たれる、無数の攻撃の雨霰。


 破壊の嵐の中をツギハギノヤマトと呼ばれる、新たなる勇者はすり抜けてゆく。


 死ぬかもしれない、それでもなお前に出る。


「こうでもしないと、周りに被害が出るっ!」


 その間も当然の様に、迫る敵機目掛けてフォーティファイブマグナムを撃ち続ける。


 適当に撃ったとしても何かしらに命中する気がするほどに敵の数は多い、それでもなお外れないように、正確な照準を心掛けて。


「確実に当てないと、無駄玉厳禁!」


 ザンバーと違い、ツギハギノヤマトの動力は魔導力ではなく、核動力である。


 地球の技術でいくらでも再建造が可能であるようにするため。というのも理由としてはあるのだが、そもそもの要因として、魔導力で動かすための魔導石の入手が困難である代用品としての側面が強い。


 さて、これに何の問題があるのかというと、至極シンプルな点が挙げられる。


 魔導力を使った、エネルギー兵器の類が全て運用できないという点だ。


 結果としてだが、ツギハギノヤマトの一切例外なく、全てが実弾兵装となっている。


 同様に射撃武装が豊富なブラストザンバーと比較した場合、大きく劣る部分が出てくる。


 弾切れの発生だ。


 一撃一撃の威力が同じだとしても、継戦能力という観点で大きな弱点となる。


 搭乗者の疲労そのものが戦闘時間の限界とも言えるザンバーとは違い、たとえ疲れていなかったとしても、弾が切れれば戦闘はそこで終了させなければならない。


 無限にも等しいビートゥの軍団と戦うには、致命的なまでの問題がそこにはあった。


「あまりにも正確すぎるな」

「それだけ焦っているんだよ、確実に一人でも多く倒したいんだ」

「自分の力を示すためにもね」

異世界人(ゲストキャラ)に良いところを持っていかれるわけにもいかないしね」


 ラビッシャーたちの語る言葉、鎧塚にその意味は理解できない。


 理解できないが、どこか見当外れでありながらも、意味がある言葉のように感じられた。


「訳が分からんが、できるだけ数を減らすッ!!」


 とは言え、鎧塚が焦っていたのも事実ではあった。


 ラビッシャーの言葉とは関係ない。


 彼らの搭乗機が、エクスタームとは比べ物にならないほどに堅牢な装甲をしていた。


 フォーティーファイブマグナムが叩き込まれれば、エクスタームならば確実に撃破できていた。


 だが彼らのマシンには、数発叩きこんでようやくといった有様である。


 残弾を気にしなければならない鎧塚にとって、一撃で倒せるのと数発叩きこむ必要があるというのは大きな違いがあった。


「とは言えそれでも――」


 例え不利だとしても、例え勝ち目がないとしても戦わねばならない時がある。


 一撃でダメでも何発も叩きこめば倒せるのならば、諦めない理由になる。


 いくら叩き込んでも倒せないという訳ではないのだから。




 これまでに何機撃墜したのであろうか。


 数えるのもばからしくなるほどに砲撃を続ける。


 残弾の確認はすれば、そろそろ限界も近い。


 さらに言えば、敵の数はまるで減ったようには見えない


 つまり結論は――。


「もう少しで戦えないんだろう」

「全部実弾っていうのの弱点だよね」

「そろそろ諦めたら?」


 約束された敗北、倒しきる前に戦えなくなる。


 撃墜されなくとも、攻撃手段を失えばそうなるのは火を見るよりも明らか。


 されど――。


「攻撃できなくなるだけで諦めるかっ! そんなもんで諦める奴はなぁ!!」


 ヒーローではない。


 決して諦めてはならない、どれだけ強大な相手であっても、許してはならない邪悪相手に膝を折ってはならない。


 たとえそれが原因で死ぬとしてもだ。


「そのためにも最後の花火を打ち上げる!」


 ツギハギノヤマトに搭載されているのは、フォーティーファイブマグナムと零式ヤマト機関銃だけではない、既にその多くは弾切れとなっていたものの、唯一まだ使える武装があった。


残弾はそれ一発。


「四十号弾装填っ!」


 両腕を一つの方へと変えていきながら、天高く突き上げてゆく。


「千輪先金!」


 そこから放たれたのは一つの砲弾。


 敵陣のど真ん中に向けて放たれたソレは、空中で展開される。


 内部から展開されるのは無数の小型砲弾――。


「最後に勝つのは決してあきらめない、ヒーローがいる方だっ!!」


 その全てが空中で炸裂、無数の美しい火花が咲き誇る。


 広範囲を焼き払う、苛烈にして可憐な花が邪悪の手駒に突き刺さる。


 鮮烈な光が、世界全てに刻み付ける。


 確かに今ここで、一人の英雄が立ち向かっているのだと。


 決してあきらめてはいないのだと告げられたそれが、世界の全てを照らし続け。


「ならばこれが貴様の葬式の供花としてくれるっ!」


 されど、その一撃の中を潜り抜けてきた敵がいた。


 その機体の持つ、悪趣味なペイントが施された剣が、確かにコックピット目掛けて振り下ろされんとした。


 この距離まで詰められてしまえばツギハギノヤマトでは対応できない。


 近接戦闘用の武装のテストは別日行う予定だった、そもそもあったとしても間に合わなかった。




「ザンバァァァァッ!! インッフェルノォォォォォォッ!!」


 そう、間に合わないのはツギハギノヤマトの話だ。


 飛び込んだラビッシャーの一機が、突如発生した火柱に焼かれていく。


 地獄の業火が、仲間の危機に燃え盛る。


「……最高のタイミングだ」


 コックピットの中で鎧塚はそう呟いた。


 彼の視界に入ったのは、ラビッシャーの多種多様な機体群の中で最も大きなものですら、小さく見える絶対的な巨人の姿。


 ゴウザンバーコキュートス、地獄からの使者が今この地に降臨した瞬間である。


「テメェらが何者なのかはどうでもいい、俺たちの仲間にやってくれた分、お返ししてやるぜっ!」

「非道を働く悪党の手先……か、ある意味私たちにとっては原点に近い戦いになりそうね?」

「巨悪の尖兵、いえ……性質の悪い子悪党にすぎませんわ」


 ツギハギノヤマトの前に立ち、一度引いて弾薬の補給をしてくるように促す。


 その間もラビッシャーの軍勢目掛けて、じろりとにらみを利かすゴウザンバーコキュートス。


「クレアーツィ! 奴らはラビッシャー!! エクスタームとは違うぞ!」

「了解っ!!」


 今までとは異なる新たなる脅威、その存在を理解すれば覚悟を決める。


「……あの、クレーアツィさん、なんだか彼らの機体……違和感がありませんか?」

「それはピュアグリッターとしての意見か。それとも人間、星川未来としての意見か?」

「両方です」


 そんな中での未来の感じた違和感、クレアーツィはそれがどういったものなのかを問いかける。


 世界を一度救ったスーパーヒロイン、ピュアグリッターとしてみた場合の違和感と、地球人としての星川未来の違和感は別のモノである。


 ピュアグリッターとしてみた場合、あまりにも敵の基本デザインが違いすぎるのだ。


 一つの組織として運用する場合、否が応でもある程度の統一感というものは出てくる。


 それは採用する人間の趣味であったり、技術的に効率を重視した結果であったりといろいろあるのだが、どれであるにしても、方向性は同じのはずである。


 にも拘らず、あまりにも統一感がなさすぎる。まるですべて別世界で制作されたモノであるかのように。


 では、地球人星川未来としての違和感とは何なのか、それは――。


「あまりにもデザインがヒーローヒーローしている気がするってことですよね?」

「うん、竜希ちゃん」


 機体のデザインの方向性、統一感がないとは言ったが、その中で感じ取れた悪趣味なペイント、リベットで無理やり固定しているような装甲、そして全身に取り付けられているトゲというものだけはある。


 その全てを無いモノとしてみた場合、あまりにも……ヒーローとしてのデザインに見えて仕方がなかったのだ。


「……どういうことか分からないけど、クレアーツィ、気を付けて」

「……あぁ、なんとなく感じるものはあるけど……それよりも今はこいつらを追い返すのが先だ」

【四十号弾千輪先金】

 ツギハギノヤマトの最終兵装。

 広範囲を超高温の火花が焼き払う特殊弾、放たれた砲弾の中から小型の砲弾が拡散そのすべてが爆発することでの攻撃を行う。

 その際に生じる火花は、兵器というよりも花火のような美しき光景を発生させる。

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