第76話 魔の手先! ラビッシャー軍団現る
【フォーティファイブマグナム】
ツギハギノヤマトに搭載された装備の一つ。
腕に装備された三連装砲、その名称は大和型戦艦のソレから名づけられている。
クレアーツィたちによって、新たなる鋼の勇者が今誕生した。
「さーてと、調子はどうだ!」
「こちら鎧塚、この手の兵器はまともに乗り込んだことはなかったが……ものすごく操縦がしやすいな」
搭乗者として選ばれたのは、レジスタンス日本支部の代表となっていた鎧塚。
彼を代表として、後々量産していくことでレジスタンスの面々の基本装備とするのが、ツギハギノヤマト計画という訳である。
これが成功すればエクスタームという、今まで偶然でもなければ一機も倒せなかった相手を、互角以上に立ち向かうことができるようになる。
成功しなければ、この世界に未来は来ないとも言える。
「ま、大体こっちの自動車の操縦を、少し簡単にしたぐらいの難易度にはなってると思う」
「クッソ真面目にいろいろと調べてたもんね」
クレアーツィの言葉に、レジスタンスのメカニックたちは楽しげにそう返す。
短い時間でも、命を懸けて力を合わせてきた絆が強く結びついていた。
「そんじゃ早速武装を試すぞ、まずはメインの武装になるフォーティファイブマグナム」
クレアーツィの指示に合わせるように、ツギハギノヤマトが右腕を動かす。
標的として、大きく印をつけられた岩がいくつか運ばれる。
ターゲット目掛けて、腕から延びる三連装の砲塔が、照準を合わせるために動き始めていく。
「照準合わせっ! ッてー!!」
打ち出された砲弾は正確に、印のど真ん中に命中し、岩は塵になっていく。
「ここまで正確に当たるもんか、これはまたクレアーツィの腕がいいんだろうかねぇ」
まるで射線がブレずに命中したという事実に、放った鎧塚自身が困惑を隠せないでいた。
放った衝撃から考えれば、かなりブレても仕方ないものと考えていたのだ。
「射撃武器の調整は、私が関与していますもの……、ちゃんと照準さえ合っていれば、どんな悪条件でも正確に狙った場所に当たるように! そのレベルに仕上げてありますわ」
皆に自慢するように、胸を張ってアーロはそう宣言して見せる。
その様子を見ればエストたちは苦笑いを浮かべながら、それだけ力を込めて作り上げられた傑作だと理解していた。
「そんじゃ次っ! 零式ヤマト機関銃!」
「了解っ!」
続いて、牽制用の武装として用意されたのが、この機関銃。
毎秒七十発もの射撃を可能とする代物、無論こちらもアーロが独自の調整をした代物であり、狙った場所にまるでブレずに叩き込み続けることができるという、ふざけたとしか思えない傑作中の傑作。
「どんな射撃でも外すのであれば、それは当人の実力不足……とは言え、その実力不足をある程度補えるように、道具の方が調整するのは至極当然の事でしょう」
できるかできないかではなく、しなければならないことと口にしながら、アーロは想像以上に操る人間の才能があることを認識する。
この世界のクレアーツィは、鎧塚なのだと。
「まだまだ武装は山盛りだ、敵の数は馬鹿みたいに多いからな、装備できるだけ盛っていかないと生き残れない」
クレアーツィが、まだまだ武装テストを続ける。
そう宣言した次の瞬間であった。
「レーダーに感っ! 時空跳躍反応っ!? ビートゥの奴……ここに直接攻めてきたかっ!」
ツギハギノヤマトの中から聞こえてくる最悪の通信。
時空跳躍、端的に言えば時空間を跳び越え何かが現れる、もしくは何かが消え去る現象。
つまり、この場所に向かって何かが現れるということであり、その何かなどというのは考える必要がない。
「ここは俺が食い止める」
「まだ調整も完璧じゃないんだぞ!?」
鎧塚の、一人の男の言葉にクレアーツィは止めるように告げる。
自分の作品が不完全な状態で世に動かねばならない、確かにそれは要因の一つだろう。
だがそれ以上に、そんな不完全な代物で戦わせることを止めさせたかった、それだけ彼のことを心配していたと言える。
それだけ、敵が強大だと知っている。
「それでもやらなきゃダメなんだ、時間は稼ぐ」
「できるだけ早く戻ってくる、いいなっ! 無理はするなよ!」
クレアーツィの指示に対して、鎧塚の行った行動は実にシンプルであった。
右腕を伸ばして背後にいるクレアーツィに見えるようにし、ツギハギノヤマトの親指を天に伸ばした。
「今から走る分無駄に体を動かすことになるかもな」
「頼むぜ、サムライ!」
これより死地へと飛び込もう、鎧塚という一人の侍は強く決意を固め、天を睨みつけていた。
空間が歪み、空が裂ける。
虚無の空間から舞い降りるは、エクスタームとは異なる鋼の軍団。
タイプの違いはあれど、統一されたデザインのエクスタームとはまさしく正反対。
まるでデザインに統一感を感じない、デザイナー自体が一つ一つ別人だと言われればそれで納得できるモノたち。
精々悪趣味なペイントや、雑にリベットで取り付けられた装甲、敵意を示すかのようなトゲが必ず施されていることで、ようやくそれらは同じ勢力のモノなのだと納得する。
「エクスタームとは違う、ここからが本番だってか?」
初陣でいきなりの新型、それも大軍を相手にすることになった。
その事実に鎧塚は、コックピットで冷や汗をかく。
はっきりと言って状況は最悪だ、どれだけ都合がいいように考えたとしても、生き残れる確率などほとんどない。
「だとしても、生きて帰らないとな、不可能だとしてもやって見せれば可能になる」
それでも鎧塚修二という男は、戦うのだ。
たとえ生きて帰れないとしても、命よりも優先せねばならないモノがそこにはあるのだから。
「たった一人、ここにはいないのか」
「よくあるシチュエーションだ、私もアレをしたことがある」
「ここは任せて先に行け、あぁ、俺もそれをしたな」
光を失った数多の瞳が、ツギハギノヤマトへと突き付けられる。
三百六十度全方位から、ビートゥの尖兵が出現した。
「……で、どうやって、アレ打開した?」
「そんな展開はなかった」
「……そこまで行く前に終わったな」
「ま、世の中そんなもんだ」
かつての自分たちの惨状を思い出しながら、目の前にあるツギハギノヤマトを見つめる。
どうせこれも同じ末路が待っているとばかりに。
「お前にも、この世界にも何の感情もありはしないが、お前もこちら側になってもらう」
その言葉には心がこもっていない、魂がない。
人の心がありはしない、邪悪の尖兵がそこにはある。
「……誰しもが終わりには抗えない」
「どれほどの英雄であろうとも、いずれ終わりは来る」
「それが少し早いだけだ」
あるモノは、瞳から光線を解き放つ。
あるモノは、銃口から光を叩きこむ。
あるモノは、まるで玩具の様な武装を天高く掲げ飛びかかる。
その全てが天下無双、世界を救う強大な力。
「だとしても、まだ俺は終わるつもりはないっ!!」
されど、ツギハギノヤマトは迫る脅威に向かって砲口を突き付け、撃つ。
たとえ滅びる日が来たとしても、それでもなお彼は立ち向かう。
すでに敗北した世界だとしても、そんなことは理由にはならない。
今も彼の背後には守るべき人々がいる。
彼らを救うために、異世界からやってきた鋼の勇者たちがいる。
ならばもう、敗北が許される理由も、膝を折る理由もありはしない。
「だからこそ問うッ!! お前たちは何者だ!!」
鎧塚の叫びが世界に響き渡る。
突如現れた、奇怪にして機械の軍団、今までとは明確に在りようの違う存在。
ネルトゥアーレ皇国の軍勢は、あくまでもあの世界で誕生しうる力であった。
この地球に現れたエクスタームも、この世界の技術で作ろうと思えば作れる平気でしかなかった。
だが奴らは違うのだ、技術体系も、その在り様すらも、すべてが違う。
「我らはラビッシャー」
男の問いかけにこたえるモノがいた。
ラビッシャー、自らをそう呼称する軍団は、今ツギハギの新たなる英雄の前に立ちはだかった。
【ラビッシャー】
ビートゥが差し向けた新たなる敵。
まるで統一感のないロボットを操る軍団。ロボットの共通点としては、悪趣味なペイントや、リベットで固定された装甲、そして無数のトゲが、後付けされていることである。




