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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第三章 地球編
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第75話 役を失った役者

【神】

 人知を超えた存在。

 ある意味、作者とは作品世界の人間にとっては神である。

 光の届かない深海、マリアナ海溝の底も底。


 そこに在るのは巨悪の居城、神を祀る神殿。


「……アレは失敗したのか……。まぁ、ヒーロー(主人公)になる前に、そもそもの世界(作品)消滅(ボツ)になった奴では、一人じゃ彼らには敵わないのは必然か」


 玉座に座る、邪悪な意思は軽い調子でそう語る。


 その男の前には、幾千幾万もの老若男女、人ですらない者も含めてひれ伏していた。


 そして全ての目に生きとし生けるものが持つ、生きるという意思の光が灯っていなかった。


「……何のために俺たちは生きてるのかねぇ」


 ぽつりと一言呟く壮年の男。


 男の言葉には感情すら感じられず、虚無とでも言うべきもの。


 当たり前だ、彼らは舞台に立てなかった者たち。故にこそ(存在価値)は振り分けられず、(居場所)がない彼らが感情(人格)をもって、振る舞うなど……世界(舞台)の中であるはずなどない。


 彼らに個としての価値はなく、群としての価値もない。


 彼らは世界に生きる者(役者)として、存在することが許されないのだから。


 存在しない者が個として価値がある筈がなければ、零はどれだけ集まっても零でしかないのだ。


「まぁ、そんな無価値なお前たちを使ってやるのだ、感謝しろ」


 これは仕事(世界)を失った役者(主人公)たち、彼らに与えられた仕事(偽りの役割)


 故にこそ、そのような者たちに敗北することは、今を生きる者たちには許されない。




「正体不明、正確な目的も不明……か」


 エストが捕えた相手を確認しながらも、クレアーツィは頭を抱えていた。


 彼自身はどこまで言っても一人の機械技師、言うなれば発明家にすぎない。


 そもそも戦争をすることそのものが専門ではない。


 突如発生した捕虜の扱いなど、到底分かるはずがない。


「困りましたわね、何を聞いても分からない、捕虜としての価値は欠片もないでしょうし」


 だからと言って自由に開放するわけにもいかない、なぜなら敵の兵が一人増える。


 一人や二人増えたところで、ザンバー軍団に対しては問題はないだろう。


 だがしかし、レジスタンスの人々となれば話は別だ。


 エクスタームという、ザンバーからすれば造作もない、薙ぎ払うだけの雑魚であったとしても、生身の人間では到底かなわない相手。


 しかもそれらはただの機械人形。


 人の心を持たなければ、人の頭脳も載っていない。


 発展することのないソレ等ですら脅威なのだ。


「……アレに協力する人間がいるとは思いたくはなかったけど、皇国って前例があったしねぇ」

「まぁ、国のトップだったから納得は行くけど、今度は違うはずなんだけどね」

「……どちらにせよ、アレが強くなる可能性があるってことだよね?」


 生きる者の、前に進もうという意思の力による、進化の可能性が成立する。


 端的に言えば人が操ることで、今まで以上に強くなる可能性が在るわけであり。


 彼がビートゥの元に戻ることで、その可能性が向上するのだ。


「けれど、殺しても転生して戻っちまう可能性がある」

「死んでも終わりじゃないとはなぁ……そりゃ、無限だわ」


 クレアーツィが懸念していたことを口にすれば、鎧塚は苦笑いを浮かべる。


 それはそうだ、死んだらそこで終わりなのが当たり前の話、強くなって蘇るなど完全にファンタジーにもほどがある。


 クレアーツィ達も、可能性の一つとして考慮しているに過ぎない。


「だけど、可能性があるってことは想定しないといけないってことだ」


 最悪の中の最悪にすら対応しなければならない、たった一人で世界を支配した男だ。


 何が起きるのか分からない、分からないからこそ、想定できる範囲だけでも対策を講じていかなければならない。


 それほどの相手が存在していることを、彼らは理解している。


「世界を滅ぼす力を手にしたとしても、まだまだ足りない……何の道具も使わずに、あいつは呼吸するように世界の壁を破壊したのだから」


 現在最強の力を有しているゴウザンバーコキュートス。その最大出力であっても、世界の壁を破壊するのにそれ相応の準備が必要であった。壁の修復を考える必要があったとしても、有する力の段階が違うのだ。


「ま、結局のところ遊ばれているんだろう。まるでゲームの駒かなんかなんだろう、あいつにとって俺たちは」


 嫌になる、そう付け加えながらクレアーツィは、開発の方に戻っていく。


 自分の仕事はそっちが本質だ、そう告げるように。


「さて、とりあえずあいつは簀巻きにして牢屋に入れとくでいいかしら?」


 クレアーツィが出てから一時間も経過しないうちに、判断するのも面倒だからといった様子で、そう提案する。


 誰しもが、これ以上の判断はないだろうとのことで、首を縦に振ろうとした次の瞬間であった。


「大変だ、あのガキが消えたッ!!」

「はっ!? 目を離した瞬間に逃げたの!?」


 最悪の報告、闘争されたという話だと考え――。


「違うっ! 瞬きもしないうちに文字通り苦しみながら消滅したんだよ!」

「……は?」


 直接相対したエストは直感的に理解した、あの時の姿を消す何かを使ったわけではない。


「……無理矢理連れ戻された、もしくは不要になったから捨てたっていうのっ!?」


 戦闘した時に苦しんでいた様子は欠片もない、消えて何かをするというのであれば苦しむ演技など必要がない。


 そしてわざわざそれを口にしたということは――。


「演技かどうかぐらい見ればわかる」


 伝令にやってきたレジスタンスの面々は口をそろえてそう告げた。


 あの苦しみ用は演技などとは到底言えないと。


「……いっそ、殺してやったほうが人道的に良いパターン?」

「……可能性はありますわね」


 面々は頭を抱えながら、一応警戒態勢を敷いた。


 かの少年はもうこの基地にはいなかったが。




「ふむ、確か……百七十二回目の転生した気分はどうだ? 転生特典の追加はいるか?」


 にやにやと、玉座に座りながらそう告げる悪辣な、神の如き男。


 ビートゥの視線の先には、レジスタンスの基地から消滅した、例の名無しの少年がいた。


「……ありがとうございます」

「そうだ、存在しないはずのお前にも舞台に出る権利をやってるのだからな?」


 馬鹿にしたような態度でビートゥは口にする。


 彼の目に、少年の存在は少年として映っていない。


 ただの駒、生きとし生けるものとしての扱いでは断じてなかった。


「さてと……ではそろそろ、彼らには次のステップに移ってもらおうか」


 ビートゥの言葉と共に、無数の人影がどこかへと駆け出していく。


 その中には、先ほどこちらに現れたばかりの少年も含まれていた。


 彼らが向かった先にあるのは、彼らにはよく見知ったモノであった。


 あまりにも統一感の感じられない、鋼の軍団。


 小さなものは三メートル、大きなものは百メートルを遥に超えるサイズ。


 その一つ一つのシルエットは、どこかヒーローといったも過言ではない、素晴らしいモノであった。


 どこかひび割れた、明らかに破壊された痕跡のある装甲には、まともに修復がされていないことを示すように、全身リベットまみれの有様である。


 さらには、明らかに貶めるためとでも言うべきか、悪趣味なペイントやトゲなどで装飾され、歪められた存在であることが、一目でわかる唯一の共通点となっていた。


「……求められなかった者たちの戦いだ」




「実に滑稽だとは思わんか」


 自分以外誰もいない玉座の間で、ビートゥは明確に誰かを見ながらそう語る。


 確かに彼を見ている誰かがいて、彼はそれを認識している。


「世界が滅び、誰にも求められなくなった英雄たちが、世界を滅ぼす尖兵へと変わる」


 けらけらとあざ笑うように、彼に利用される者たちを眺める。


 彼にとって、自身の配下の軍団が勝利しても敗北しても構わない。


 やろうと思えばたった一人で、世界を滅ぼすことなど造作もないことだから。


 それは作者と作品の関係に近い。


 彼はいつでも終わらせられる、それでは面白くないから彼はまだしていないのだ。


「まぁ、需要がないキャラクターを、需要がある作品の敵キャラにしてやるんだ」


 にやにやと悪趣味な笑みを浮かべながら、どこかに向かってそう語る。


「時代遅れで、高価な子供の玩具(スーパーロボット)で遊んでいる奴らを、求めらている作品にふさわしい存在にするのだからな」


 目をそらすことなく誰かを見つめながら、彼はそう語る。


「需要と供給に合わせた物語だけが生き残る、当然の話だろう?」

【キャラクター】

 人の持つ性格や人格を意味する言葉であると共に、物語の登場人物を示す言葉である。

 登場人物が登場人物たるためには、その一人一人の性格や人格が必要であるとも言えるだろう。

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最新作『絡繰武勝叢雲』連載中 こちらも面白格好いいぜ!! https://ncode.syosetu.com/n3777hj/
― 新着の感想 ―
[一言] あっく趣味ぃ〜〜〜〜! 素晴らしい外道!! 元が元だけに性能もそれなりのものをお持ちなんでしょうなあ……
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