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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第三章 地球編
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第72話 ツギハギノヤマト

【最低限の役者】

 クレアーツィ達の世界を去る時に、ビートゥが語った言葉。

 その意図を知るものはビートゥのみである。

 エクスタームという神出鬼没の夢幻にして無限の軍団。


 突発的な襲撃はカバリオザンバーが大破するという事態を引き起こしていた。


 また、増援が来ることを阻止するために、マギサザンバーとレジスタンスの拠点、この二つを同時に襲撃したのである。


 結果論として言えば、カバリオザンバーの大破を除けば大した損害はなかったといった所か。


 マギサザンバーの襲撃は、包囲を無理矢理超スピードでぶち抜く、という未来の持つ魔導力量の暴力による、無茶苦茶な方法で戦況を改善。


 そのまま広範囲を薙ぎ払う、という機体性能を存分に活かした戦い方をすることで勝利を収めた。


 搭乗者である星川未来、いやこの場合は世界を救った魔法の国のお姫様、ピュアグリッターの持つ戦闘経験のおかげであるとも言えるだろう。


 一方でのレジスタンスの拠点への襲撃、こちらは東京奪還作戦と概ね同じ結果であると言える。


 ゴウザンバートリニティとなることで、観測に集中できる人間を用意、広範囲のエクスタームを薙ぎ払い撃破していく、という良くも悪くも完成した戦い方が行えたという訳だ。


 その間にマルチドラゴネットが、最大出力で戦線を離脱。


 性能で劣るカバリオザンバーの方への救援を行ったという話である。




「……で、カバリオザンバーの修復のために、睡眠時間何時間削ったの?」


 ため息をつくエストの視線の先には、どこか疲れた様子を見せるクレアーツィの姿がそこにはあった。


 エストの問いかけ通り、カバリオザンバーの修復のために、確かにクレアーツィは睡眠時間を削っていた。


 十日での修復はそれだけ、クレアーツィへの無理を強いたということである。


「……あー、普段から考えて、最終的には一日分は時間を作れたか?」

「……あんたねぇ」


 端的に言えば自分自身を苦しめることで、どうにかして現状を整えているに過ぎない。


 であるのだが――。


「なんであんた、そんなに元気してるのよ」


 どこか苦笑いを浮かべながら、エストはあまりにも元気に見えるクレアーツィの姿に、困惑を隠せないでいた。


 どう考えても体にはよくない、無理をしているようにしか見えない彼の姿は、むしろ普段以上に元気しているようにしか見えないのだ。


 そんなエストの純粋な疑問に、クレアーツィも少し考えこんだ様子を見せる。


 如何に彼が天才的な機械技師であるとはいえ、肉体のことは根本的に専門外。


 生命エネルギーである魔導力は、彼の仕事に係わってくるが、それ以外の面に関しては、極々一般的な知識しか持ち合わせてはいないのだ。


 自分に起きている現象について、理屈として正しいかどうかなど、彼には分かることはない。


「……つまりだ、俺はこの生活を楽しんでいるんだろう……闘争という意味じゃなく、機械技師としてやれることが無限にあり続けるという現状に」


 それが正しいとは言えないのだろう。


 だとしても、クレアーツィは――。


「あんたが納得してるのなら、まぁその結論で問題はないわね」


 その答えに、エストは肯定も否定もしない、結局の所これから先何が起ころうとも、二人は他者であり続ける。


 仲間でも、家族同然の仲であっても、なんなら仮に結婚したとしても、二人は別の人間であり、当人が納得してしまったことには、否定する権利などありはしない。


 ただし――。


「あんたが死んだら悲しむ人間が、いっぱいいるってことだけは忘れないようにしなさい」


 エストは真面目な顔で告げる。


 その一人が確かにここにいるのだと、視線を逸らすことなく向ける。


「……わーってる、俺はみんなが死なないために、全力を尽くす」

「そして私たちは、あんたが死なないために全力を尽くすのよ」


 男は恥ずかしそうに視線を逸らす。


 女の向ける感情の意味を分かっていない、などと誰が言えようか。


「少なくとも、そこまで鈍くはないし、恥知らずでもねぇよ」


 思いは分かっていると告げる彼は、そのまま天井を見つめていた。




 レジスタンスは拠点を東京のある一角へと移した。


 言葉にすれば簡単な話ではあるが、数日係の活動によってようやく……というのは、早いと取るべきか、遅いと取るべきか。


 どちらにせよ、東京の復興と共に彼らの活動は活発となっていった。


 また各国のレジスタンスにも、今は潜伏し、ザンバーの救援が来るのを待つようにという指示が入った。


 勝ち目のない戦いを続けるよりも、確実に勝てる環境を整えるべきとの意見によるものである。




「そんなこんなで、エクスタームのリユース、リデュース、リサイクルってことか」


 東京の一角に設立された、プリーマ研究所。


 そこでは、破壊されたエクスタームの残骸から技術を吸い出し、ビートゥの軍団に立ち向かえる力、この世界初のスーパーロボットの建造計画が行われていた。


「……兵器兵器したもの……だな、これは」


 そんな中で、クレアーツィは地球の技術者たちと頭を抱えていた。


 結論から言えば、エクスタームはこの地球上の技術だけで作ることができるモノであった。


 突如として現れた、世界のバグとでもいうべき天災が現れた結果ではない。


 外部からの技術提供があったわけでもない。


 せいぜい考えられるのは、異なる世界で人型ロボットが活躍していた、そんな前提知識からの発想の提供だけであった。


「……それで、既存兵器の全てを上回る怪物が誕生したと、世の中分からんもんだな」

「人型ロボット何て、現実に作っても戦車や戦闘機に敵わないー、なんてずっと言われてたもんな」

「人型ロボットが無双できる技術があるなら、それを使った戦車や戦闘機はもっと強い、だっけ?」

「あったあった、結果がこの始末だよ」


 あまりにもどうしようもない現実に、地球の技術者たちはゲラゲラと笑い飛ばしていた。


 今まで自分たちが否定していたことこそが正しい真実であった、など誰がどう考えても笑うしかできなかった。


「……ま、あんたたちにとっては驚きかもしれんが……俺にとっては嫌な予感がしてたまらねぇ」


 どこか神妙な顔で語るクレアーツィ、彼は思い詰めた様子で得られたデータを見つめる。


(奴の引き起こした戦争はこれで何度目だ?)


 クレアーツィ達の世界であっても、ビートゥの、ネルトゥアーレ皇国の兵器であるマギアウストやギガントアークは、あの世界で普通に作ることができるモノであった。


 同じ人物が行っている事象だから似ている、というのであればマシな話だが、これはそうとは限らない。


(もしかしなくても、奴は何らかのルールで世界を使った遊びをしているのか?)


 以前自身に向けられた言葉を思い出しながら、最悪の予想を組み立てる。


「……奴は勝っても負けても、次の世界に移動し戦争を引き起こして遊んでいる……ということか?」


 ならばこそ、戦いは終わらない。


 自分たちとはそもそも立っているステージが違うのだ。


 勝っても負けても終わらない、そもそも相手が死ぬのかすら疑わしい相手。


「だとしても、戦い続けるしかないか」


 その言葉とともに、地球の技術者たちの下へ寝ずに作った設計図を持っていく。


「……さーてと、今回俺が作ろうと思うのはこういう奴なんだが、皆の意見が聞きたい」


 広げられたソレは、人型の兵器の塊であった。


「戦車に戦闘機、これは戦艦か」

「人の業の結集でありながら、……人が作った物で人を救うための姿ってことか」


 ヒロイックなデザインであったゴウザンバーとの対比とでも言うかのように、ミリタリー要素を詰め込んだ兵器の塊。


 たった一つの戦争とでも言うべき姿。


「……ツギハギの出来損ないみたいになっちまったが」

「いや、俺たちはこういうのむしろ格好いいと思うぜ」


 そんな具合に、クレアーツィの言葉とは裏腹に、地球の人々からはむしろ公表のその姿。


 面々は和気あいあいと言った様子で、完成形を想像していた最中で――。


「これ、もしかして……戦艦大和か?」


 デザインの中から何かを見つけた様子で、一人の男はそう呟いた。

【ツギハギノヤマト】

 クレアーツィが、純粋に地球の技術で設計した人型ロボット。

 その姿は、人類が使ってきた兵器が結集したようなものであった。

 なお、クレアーツィ自身はエクスタームをそのまま流用した結果こうなっていったとのこと。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 【ツギハギノヤマト】  クレアーツィが、純粋に地球の技術で設計した人型ロボット。  その姿は、人類が阿智使ってきた兵器が結集したようなものであった。  なお、クレアーツィ自身はエクスタ…
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