第70話 リサイクル! 邪悪の手先を正義の力に
【ゴウザンバーのコックピットの清掃】
クレアーツィが責任をもって行いました。
出てくる敵の全てが、機械制御された無人機である。
それはつまり、全ての戦力の中で足を引っ張る、弱い存在が現れないということである。
それはつまり、突出して現れる天才が現れないということである。
結局のところ、人の強さ、心の強さとはそういうものであり、少なくともビートゥの送り出すエクスタームとは、そういう数を揃えることしかできない存在であった。
つまりどういうことかと言えば、実にシンプルな話である。
天下無双の英雄の前には、よっぽどのイレギュラーがない限り、雑兵の軍団では脅威とはならない。
「つまり、問題だったのはこの世界において、アレと立ち向かえるだけの力が存在しなかったこと……か」
ぽつり、クレアーツィが口にした言葉に周囲は視線を向ける。
異界からやって来た英雄、エクスタームをなぎ倒していく力を持つ者。彼が続けて何を言うのか、もしくは先ほどの言葉の意とは何なのか。誰しもが気にしたのであろう。
「……いや、ただの現状確認ってだけだぞ?」
自分に向けられる視線の意図を察したのか、求められても何も出ないぞ、と付け加えながら彼は語る。
レジスタンスの付き合いの浅い面々は、クレアーツィの言葉に残念そうに視線を下げる。何か打開策があるのかと期待していた様子が目に見えた。
「で、何かできることはないかーって考えてるんでしょ?」
「ん、いや考えてはいるが、新しく作る手段がなぁ」
そう言いながら、軽く手に取ったのは地球の科学技術の書籍の数々。
下は小学生の理科の教科書、上はビートゥに支配される以前の最先端のモノ。
これらに手を付けたのは言うまでもなく、この世界の技術だけでどれだけのモノが作れるのかを判断している。
「自分たちの独力でエクスタームを倒せるようになれればってさ」
ゴウザンバーを筆頭とする、ザンバーとは即ち異世界技術。当然のことだが、クレアーツィがあの世界で生きていたからこその発明品。
異なる世界で実用化できるかどうかは完全に別問題である。
実際問題、魔導具の根幹を担う魔導石はこちらでは用意できない。マルチドラゴネット内部に積んでいる分が無くなれば、それで終わりなのだ。
である以上、少なくともこの世界で作るものとして、魔導具はまるで適していない。
「道具であるのならば、ちゃんと安定して作れるってのは大事だからなぁ」
まぁ、それ以前にクレアーツィの頭の中で、新たな戦力というものを想定できないでいたのが原因なのだが。
俗に言うスランプ、新たなるマシーンの設計思想が生み出せない中で――。
「だったら科学技術だけじゃなくて、こういうのはどうだ?」
そう告げながら、レジスタンスの一員と思われる、金髪碧眼の青年が雑誌らしきものを渡す。
そこにはエクスタームを思わせる何かの絵が記されていて。
「ま、こっちの世界の軍事兵器についての雑誌だ、ミスタージーニアス」
「ミスタージーニアス?」
「天才ってこと、間違ってないでしょ?」
にやりと笑いながら、彼はそう告げつつ近くの椅子に座る。
軽薄な笑みを浮かべながら、しかしそれが良いのだと思わせる雰囲気を纏う男。
「クレアーツィ・プリーマだ、あんたは?」
「ジェームズ、ジェームズ・ウォーカーだ、在日米軍の……って言ってもあんたには通じないか、日本人ではないってことだけ分かっといてくれ」
ジェームズと名乗った男は、そう語るとともに右手を差し出す。クレアーツィも直ぐに意図を察した様子で、握手に応じるのであった。
ジェームズの勧めで、地球のミリタリー系の書籍を読み漁るクレアーツィ。当人にとってはできれば避けたい路線ではあったモノの、なかなかに興味深いのか、読み始めれば止まらない様子で。
「それで、どうするんだ? エクスタームの残骸とか色々使えそうだけど」
「……それだっ!」
告げられた提案に、クレアーツィは満足した様子で笑みを向ける。
エクスタームは使われている技術から、この地球の技術を発展させて創り出した兵器だ。そう推測自体はしていた。
であるのならば、破壊されたエクスタームの残骸から、技術的な情報を奪い取ることができるのではないか。
至極当たり前の発想である。むしろ、なぜこの発想が出なかったのか、自分の発想で進めてきたが故に他者のモノをそのまま利用するというのをできなかったということであろうか。
どちらにせよ、残骸の撤去も必要だったことも考えると、最善の対応が行われて行くことになったと言えるだろう。
「ふー、機動力って話だとこうなるよね」
これからの方針が定まれば、行動は速やかに行われる。
東京という戦場全土から、回収できる範囲の残骸をクレアーツィが設立した研究所へと輸送する。
活動のメインとなったのは、マギサザンバーとカバリオザンバーの二機だ。
魔導力の量がトップクラスにある、未来ことピュアグリッターの駆るマギサザンバーは、空路という形で何度も往復を繰り返す。
彼女が選ばれたのは、マギサザンバーの最大速度だけではなく、それが長時間動き続けられるという点である。
もし万が一戦闘となった時も、元々の魔導力が強大であるがゆえに、魔導力の消耗による悪影響が薄くなりやすい、もっともこの任務に適したザンバ―であると言える。
ではカバリオザンバ―はどうか。
結論から言えば、人馬型という形状故の馬車のような、後付けの装備を用意することで、他のザンバーを圧倒する輸送力、そういった点で言えば確かに適している。
事実としてすぐにその装備は制作された。
が、それ以上に、エポンが自ら志願したという点が挙げられる。
(たとえどのような事情があったとしても、あんな奴の指示に従っていたっていうのは消えようがない罪だから)
即ち贖罪のための行動、誰もが許したとしても、自分が許せていない……。それがエポンの行動の根幹であった。
だからこそ、彼女は止められれない。
「邪魔だぁぁぁぁぁぁっ!!」
輸送任務であろうとも戦闘が起きないとは決して言えない。
残骸を運ぶ最中で、カバリオザンバーの前に戦車型のエクスタームが立ちふさがった。
無数の砲塔が向けられれば、即座に馬車パーツを切り離し、ザンバーランスを構えて突撃する。
切り離したのは訳がある。
そのまま繋がったままでは、カバリオザンバー得意の機動力を活かした戦い方に支障が出る。
また、そのまま戦闘を行えば、荷馬車に当たる部分が破壊され、回収したパーツなどが使い物にならなくなってしまう可能性もあり得る。
さらに言えば、目の前に一騎当千の英雄がいるにもかかわらず、物資の破壊を優先した結果何もできなかった……なんてことを発生させるほど愚かではないはず。
エポンはそう思考したが故に、あえて積み荷から距離を取り、敵陣ど真ん中に飛び込んでゆく。
稲光と共に魔槍が突き立てられれば、削り取るように穂先が回転を始める。当てたのならば確実に打ち貫くとばかりに。
一撃で敵機を撃破したのを確認すれば、全ての砲塔がどちらを向いているのかを確認。
(全てこっちを向いているってことは、推測は当たりっ! 一応襲撃があったが故の増援を要請しつつ……駆け回る!!)
まさしく旋風か疾風か、いや嵐がごとく雷槍を振り回し、なぎ倒し駆け回る。
止まれば撃ちぬかれる、カバリオザンバーは四本足故に安定性が高い。
だがしかし四本足が故に、機動力を維持するための軽量化に手こずった機体である。
何故手こずったのか、シンプルな話として、脚の本数が増えたことが原因である。
仮に戦車型エクスタームの砲撃が直撃すれば、それは間違いなく足の一本が持っていかれる。
そうなってしまえば、確実になぶり殺しにされて終わってしまうのだ。
故に、軽量化のためカバリオザンバーの脚部は他の部位と比べて装甲が削られている。
故に、敵を倒しきるか味方が駆け付けるまでの間、カバリオザンバーは足を止めることが許されないのだ。
【エクスタームリサイクル計画】
エクスタームをリバースエンジニアリングすることで、新しいタイプのロボットを建造する計画。
そのために東京奪還作戦で発生した残骸の回収が行われている。




