第68話 懺悔
【戦闘機型エクスターム】
戦車型と同じように、無理やり人型に歪めたような姿をしているのが特徴。
戦車型と比べ攻撃力と防御の面では劣るものの、空戦能力と凄まじいスピードに長けている。
ただし、弱点として空中では停止することができないというものがある。
レジスタンスの拠点、敵の襲撃の可能性を考慮して二機のザンバーが待機していた場所。
そこにはある知らせが届いていた。
「鎧塚さんから連絡だっ!! 東京の奪還に成功したそうだ!!」
作戦成功の知らせ。彼らにとって初めての勝利の知らせなのだ。
ある者は歓喜に身を任せ踊り狂い、ある者は喜びを歌にする。誰しもが喜びを分かち合っていた。
「……うんうん、これならみんなも無事に帰ってこれるかな」
「……私のことは警戒しなくていいんですか?」
彼らの喜びを見て、にこにこと笑みを浮かべていた未来。そんな彼女に、エポンはそう声をかけた。
クレアーツィを殺した張本人、転生というふざけた方法で戻ってきたとはいえ、仲間の仇そのものなのだ。
恨まれても仕方がない、殺されても文句は言えない。
その位のことは彼女も理解していた。
「……当の本人が許してるから、周りがどうこう言うのは間違ってると思うかな」
だが、未来は構わないと告げた。クレアーツィが許しているのなら、周りはどうこうしていい立場じゃない。
当人が納得したのであれば、第三者が文句を言うのは筋違いなのだと。
「それにさ、私も元々クレアーツィの敵だったって考えたら……あまり変わらないと思うしさ」
「……そう言えば、そうだったね」
以前敵だったなどというのは、彼らの旅路において意味を持たない。大切なのは過去ではなく、今であり、未来なのだから。
だからこそ――。
「聞きたいんだけど、どうしてクレアーツィを殺したの?」
問わねばならない、理由があったのであれば、確認しておかなければならない。
また同じことがあった時、クレアーツィが返ってこれる保証などありはしない。そしてビートゥの悪行を知ったうえで追いかけ立ち向かえるのは、彼無しでは考えられないのだから。
だからこそ、二度目はないことを確かめるのだ。
「……家族のため、かな」
「……家族、かぁ」
エポンの言葉に、未来は納得した。
ならば仕方がない、とまでは言わないまでも納得はできたのだ。
「……私はさ、皇国の中でも下の方の出身でさ。家族のために地位を得るためにって軍人になって……それで、マギアウストを操っていた」
自身が何故、ネルトゥアーレ皇国の軍人として戦っていたのか、それは家族のため。
力なきものが生きるのは難しい国故の言葉。
生きるために力を求めた、無敵の力であったマギアウストの適性もあったが故に、軍内でも見る見るうちに地位を得られた。
そんな中だ。
「ゴウザンバーが現れた、マギアウストも無敵ではなくなった」
最初のころは、まだまだクレアーツィが未熟だった故に、マギアウストでも勝ち目があった。
だが、戦いを重ねていく度に、より強く洗練された動きへと変わっていく。
さらに、ブレイドザンバーとブラストザンバーの誕生、もはやマギアウストでは勝ち目が失われていった。
マギアウストのおかげで得た地位が、マギアウストの絶対性の消滅と共に失われる。エポンはそれを理解していた。
だからこそ、マギアウストの絶対性を取り戻さなければならない。
「ザンバーの弱点、専属の搭乗者がいなくなった時……もはや物言わぬ鉄くずに成り下がる」
「だからこそ、内側に入り込んで殺す作戦が成立した、だよね?」
エポンの語った言葉は明確な事実であった。
故の裏切りによる暗殺計画、成功すれば無力化は容易なはずであった。
「でも、問題があったんだ……ブレイドザンバーとブラストザンバーのパイロットの存在が」
そもそもの計画が成立したのは、初期も初期……ザンバーがゴウザンバーだけだった時。新たなザンバーが誕生するのに時間がかかると思われていた時のこと。
ブレイドザンバーの搭乗者、エスト・ファネッリは大陸でも最上位の剣士。
ブラストザンバーの搭乗者アーロ・フォストは遠距離戦の絶対的な頂点。
たとえ生身であったとしても、殺すことは非常に困難な相手であった。
「そして、単体のザンバーならば問題なく打倒できるギガントアークが完成した」
だからこそ、単体のザンバーではなく、合体形態を封殺することができれば勝利は約束された。
「任務内容は、確実にクレアーツィを殺せるタイミングで殺すこと、その為ならば軍にどれだけの被害を出しても構わない……何故なら――」
「何人死んでもギガントアーク一体あれば逆転できるから、だよね?」
「うん」
だからこそ、確実に殺せるタイミング迄はクレアーツィ達の味方であり続けた、味方であり続けられてしまったのだ。
「すっごく居心地がよくてさ、うん……家族がいなかったら、私はあんなことしなかった」
「……はははっ、うん、分かる……その辺は私もすっごくよく分かる」
でも、家族のためにそれはできなかった。そして――。
「で、皇国に帰ってきたら……家族は死んでた」
その全てが無駄だった。
「……戻ってきたからには、皇国の兵士としてふるまうしかない……そんな中で、クレアーツィは蘇って」
「……だからこそ、彼に裁かれようとした」
だが、彼は裁かないのだ、彼女は情状酌量の余地があるはずだと認識していたから。
「……それでも私は納得できない」
「……納得ができないんだったらさ、納得ができるまで……それこそ死ぬまで戦い続けるしかないんだと思う」
罪を償うための戦い、自分の意思でそう考えて戦わねばならない。
「……クレアーツィの騎士として?」
「えぇ、裏切りの騎士ではなく、これからは正々堂々と……騎士道に則った、ネルトゥアーレ大陸で誰もが知る騎士として」
未来はそう口にして、軽く会釈をする。確かにこの時の彼女は、魔法の国の魔法煌姫ピュアグリッターとして、一人の騎士に応対する。
それにだ、たとえ一度罪を犯しただけで、未来永劫の罪を背負わねばならないのなら、改心するものなど現れるはずもない。
なにせ、善行を為しても悪党の汚名をそそぐことはできないのだから、改心しても得はない。
だからこそ、罪を犯しても許される者が必要だ、魔法の国のお姫様であった未来は、確かにそう考えていた。
「だからまずは、レジスタンスの皆と一緒に、クレアーツィ達の出迎えの準備をしよう」
にこりと、太陽のような笑みを浮かべ、エポンに向かって手を伸ばす。
確かにエポンの、センタウルの民の姿は地球人にとって奇妙に映った。
だがそれだけだ、少し彼女と触れ合えば、彼女も今を生きる人間であると誰しもが理解した。
「ま、日本人は良くも悪くも、古今東西常識はずれなモノにはなれてるなんて聞いてたからなぁ」
「どこの国も同じだろ」
国籍もバラバラな彼らは、軽口をたたきながら軽いパーティーの準備をする。
その中には当然、二人の姿もあった。
「お姉ちゃんっ! 魔法っ! 見せて!!」
一人の少女は、未来の下に駆け寄りそう強請る。
幼い少女にとって、未来の、というよりかはピュアグリッターの姿は、テレビの中のスーパーヒロインそのものだったのだろう。
竜希の世界で、実際にアニメとして放送されていた、なんて話を聞いた未来にとって、少女の反応も納得のいくものであった。
「ふふっ、それじゃあ……お花を出そっか」
などと笑みを向けてそう告げれば、軽くステッキを振って見せる。もちろんいつも通り魔法の呪文も忘れない。
するとどうだろう、瞬時に無数の花々が咲き誇るではないか。
その光景を見れば、少女は満面の笑みを浮かべ大喜びしてみせる。
「……大丈夫なの? 魔法の源は――」
「大丈夫、この世界でも、夢と希望と愛は力を取り戻そうとしているから」
彼女がそう告げるとともに、上空から何かが、いやマルチドラゴネットが近づく音が聞こえてくる。
英雄たちの凱旋であった。
【ヘリコプター型エクスターム】
他のエクスタームと同様に、無理やり人型に歪めたような姿をしているのが特徴。
戦車型と比べれば防御力が、戦闘機型と比べればスピードに劣っている。
ただし、攻撃力は戦車型と戦闘機型の間ほど、さらに空中で停止することができるという強みがある。




