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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第二章 転生騎士団編
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第58話 さよならの日

【ビートゥ帝の行った転移】

 当然のことながら魔導具の行使である。

 という訳では断じてない、それほどの力を有する魔導具なのであれば相応の魔導力と共に、相応の大きさを必要とするためである。

 それ故に、彼が行ったこの行動は、決して魔導具などの力ではない。

 ビートゥ帝の力によって先ほどまでとはまるで異なる場所、決戦の地、死の世界へと飛ばされてきたゴウザンバー。


「……ゴウザンバーって、もしかしてっ!」


 その姿に気が付いたブレイドザンバーは猛スピードで駆け寄り、声をかける。もう会えないはずの男がそこにいるのだと察した様子で。


「あー、わりぃエスト……心配かけた」

「バカ、心配なんてしてないわよ」

「イチャコラするのでしたら戦争が終わった後で、古今東西戦場でいちゃついている人間は死ぬと決まっていますわ」


 呆れた様子で口にするアーロの言葉を聞き、エストは少し距離を取る。


「ちょっとの間だけどさ、死んでた」

「まさかお化け?!」

「でしたら、ゴウザンバーが動いているのは超常現象ですわね」


 三人の軽い会話に混ざるように、マギサザンバーとドラゴニックザンバーも近くにやってくる。


「……違うよね、私たちと同じこと……でしょ?」

「異世界じゃなくて、同じ世界ってのは珍しいとは思うけどね」

「あぁ、二人がいるのなら……俺もできると思ってな」

「あぁ、やっぱりその辺り信じてたのね」

「エストさんは信じてなかったんです?」


 竜希から向けられた視線に苦笑いを返すエスト。


 実際問題一度死んだなどという言葉までは信じられなかったのである。


 それも、今も目の前で確かに死んだ男がいるという事実で納得させられていた。世の中信じられるようになる時は案外あっさりと信じられるようになるものである。


「……さてと、まぁ俺もいろいろと話したいことはあるんだけど」

「えぇ、まずはすべきことよね」


 五つの勇姿が今、ある一点へと視線を向ける。


 空に浮かび上がり、不敵な笑みを浮かべる一人の男。


 この戦争の諸悪の根源、ビートゥ・ネルトゥアーレの姿。


「……俺のやったことも正直大概だとは思うが、あいつはいったいどんな手品だ」


 その姿を観察してクレアーツィは呟く。


 真実がどうであれ、クレアーツィらの常識からして現在の彼の在りようは異常なのだ。


 それらしい魔導具の欠片も見ることはできないにもかかわらず、彼は浮いている。


 どれだけ膨大な魔導力を持とうとも、それを行使するための魔導具がなければ意味がないのは誰しもが知る常識。


 では空を飛ぶ手段があるのか、少なくともクレアーツィが知る範囲では存在しない。


 無論知らない何かはある可能性は無きにしも非ず。とは言え、それを為す手段など見当もつかない。


「くそっ、死後にすら干渉するあいつはいったい何なんだ」


 一度死んだからこそ、死後の世界を見たからこそクレアーツィは見当がつかない。


 なにせ、死後の世界に明らかにこちらに干渉してきた存在がいた、しかも鮮明に聞こえる声ていたのだ。


「あの声は確かにビートゥ帝と同じものだった」


 だからこそクレアーツィには分からない。


 死後に干渉する力を持ち、さらに単独で空を飛ぶなど最早人間の力とは到底言えはしない。


「さてと……最低限の役者は揃ったか」


 故に、クレアーツィは間に合わない。


「では諸君らよ終焉の時を楽しむといい」


 男の言葉とともに世界にひびが入る。


 人は理解ができないものを見た時、何もかもが止まる。


 ひびはより広がっていく。


「……っ、待てっ!」


 クレアーツィがようやく現実を直視できるようになった時には何もかもが遅かったのだろう。


 阻止せんとゴウザンバーは駆け出していく。


 次の瞬間、空が割れた。


「それではさらばだ、ちっぽけなゲーム盤の駒たちよ」


 ビートゥ帝が割れた先の空間に一人飛び立っていく。


 子供が一つの玩具に飽きて、別の玩具に手を伸ばすように。


 明確な世界の終わりが近づいている、クレアーツィたちはその事実を理解した。


 世界の命運を決める戦いではあったが、文字通り世界最後の日になるとは誰一人思っていなかっただろう。


 だがしかし、現実は非情なり。


 刻一刻と世界に入るひびは広がり続ける。


 捨てられるごみのように、ただただ無意味であると否定される。


「……っ、一か八かに賭けるか」


 それでもなお諦めない者がいる、自身の魔導力の全てを暴走させることで不可能を可能にしようとし――。


「一人で背負うんじゃないわよ、皆ででしょ?」


 その手を取る仲間がいるのだと、仲間(エスト)から告げられる。


「諦めが悪くなければ共に戦うなどという選択はしませんわ、それに……終わる日なのであれば大切な人と一緒にいたいと思うのは当然ではなくて?」


 だから共に戦おうと、仲間(アーロ)から告げられる。


「諦めの悪さはピュアグリッターの得意な事、大丈夫私の魔法と皆の思いがあれば世界に希望を届けられるよね」


 故にできることを言ってくれと、仲間(未来)から告げられる。


「失敗してもダメで元々、成功すれば格好いい……だよね?」


 仲間(竜希)の言葉を受けて、ゴウザンバーは世界の滅びを見据える。


「エポン、手貸してくれないか? そっちがよかったらだけど」


 だからこそ、クレアーツィは手を伸ばす。


 この場にいるもう一人の仲間へ。自らを殺した仇へと手を伸ばす。


「私は貴方を殺した――」

「それだけだ、たったその程度のことだ」


 だとしても、彼のふるまいは変わらない、たとえ自分が殺されようが、自分の仲間は仲間なのだと。


「……それで、何をすれば?」


 故に、何を言おうとも彼には関係がない話として流されると、理解させられたエポンはクレアーツィに問いかける。


 こんな異常事態をどうやって解決するのかと。


「ひび割れを直して、空いた穴を塞ぐ」


 問いに対してクレアーツィが出した答えは至極シンプル、誰が聞いても納得がいくであろう言葉。


 だが何を為すかであり――。


「それは分かってるわよ、どうやるのよ!?」


 どう為すかという話ではない、手段は示されていない。


 しかしそれも必然、なにせそもそも――。


「分からん!!」


 クレアーツィすらも分かっていないのだから。


 故にこそ、面々の表情は彼の言葉とともに恐怖へと変わる。


 一か八かに賭けるも何も、賭ける対象が何なのかすら分からないという事態。


「が、可能性のある手段はある……それを試すんだよ」


 それでもなお、かすかな希望にすがらねばならないのだと、クレアーツィはそう語る。


 彼の眼には確かではなくとも、未来へとつながる光が灯っているのだから。


 であれば、彼女らも自然と共に立つために光が灯る。




「……うむうむ、これは立派な英雄の姿ですねぇ」


 クレアーツィのその姿を見ては、少し離れた場所から見つめていた胡散臭い男が笑みを浮かべる。


「いやはやここ最近では珍しい英雄気質、自分がどうなろうと構わない……とまでは言いませんが、自分の夢を優先する、実にいい姿です。彼らを思い出しますね」


 彼にとって、ゴウザンバーの姿はまるで別の何かを見ているようで。


「……とは言え、やはり彼が想定する敵は強大……しかも向かった先は――」




「とりあえず賭けに負けても、世界ごと死ぬだけだ……賭けをしなくても同じ結果だけどな」


 だからこそ、賭けをしないという選択肢は最初から存在しない。


「……それで何をするの?」


 エストの問いにクレアーツィは笑みを強くする。


「いつも通りの合体だ、六体合体だけどな」


 いつも通り、これほどの世界の危機であっても平常運転で行くという宣言。


 男の言葉に、女たちは安堵の笑みを浮かべる。


「六重合体!」


 六つの声が重なるとき、人々の祈りと共に六つの心も繋がりあう。


 ドラゴニックザンバーの中に吸い込まれるようにゴウザンバーが格納されれば、ブレイドザンバーは右腕に、ブラストザンバーは左腕へと姿を変えていく。


 続けてカバリオザンバーとマギサザンバーも同様に右足と左足に姿を変える。


 そうしてその全てが一つとなった時、強大にして巨大なる魔鎧の勇者の姿が完成する。


 その勇者の名は!!


「ゴウザンバー!」 


 その勇者の名は!!!


「コキュートス!!!」


 その勇者の名こそ、ゴウザンバーコキュートス!


 地獄を背負う鋼の戦神の名。今彼は天高く飛び上がり、暴君が潜り抜けた穴へと飛び込んでゆく。


 自らが生まれた世界を救うために。

【ゴウザンバーコキュートス】

 六機のザンバーが合体することで誕生する姿。

 なお、ゴウザンバーの名を冠するものの、その外見部分にゴウザンバーのパーツは存在しない。

 完全に内側に取り込まれているといっても過言ではない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 究極の最終合体(多分)! クレアーツィたちは世界を救えるか!?
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