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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第二章 転生騎士団編
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第57話 放て地獄の業火! ザンバーインフェルノ!

【地獄の炎】

 何らかの手段によって封じられていた地獄のモノの一つ。

 その在り様は罪人ではなく罪人の罪を焼き払うもの。

 言うなれば魂の洗浄装置。

「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」


 駆け抜ける嵐、雷鳴をまとい四足歩行の異形のザンバー(カバリオザンバー)が、造物主(クレアーツィ)へ、兄弟(ゴウザンバー)へ向けて槍を振るう。


 明確な殺意を込めた一撃、音を置き去りにして叩きこまれるその突き。


 その一撃を――。


「っ、急に出てきてどうしてそこまでっ――」


 ゴウザンバーは軽々と片手で受け止める。


 ゴウザンバーとカバリオザンバーに明確な性能差は存在しない、無論向き不向きはあるものの、総合力で見ればそう大した違いはない。


 などというのはもはや妄言である。


「出力最大のゴウザンバーと、そうじゃないカバリオザンバーの差だ」


 魔導力は生命力、生きとし生けるものすべてが持ち、生きようとするための力。


 それは転生者が他の人間よりも多く持つもの。個人差はあれど転生者とそれ以外では圧倒的な差があることには変わらない。


 ではここで一つ問おう。


 今この場にいるクレアーツィ・プリーマはどちらであろうか?


「……一度死んだからっ!?」


 解答はシンプル、転生者である。


 クレアーツィ・プリーマは確かに一度死に、何らかの手段で、転生者が召喚されるネルトゥアーレ城の一室に現れた。


 故に例え異世界への転生ではなくとも、転生者とみなすべき要因が積み重なっている。


「だが貴様は転生を拒んだはずだ」


 だからこそ、ビートゥ帝はクレアーツィに問いかける。彼に何があったのかを理解しているかのように。いや、本当に理解しているのだろう。


「あぁ、与えられるチャンスは蹴っ飛ばした」


 クレアーツィ自身も転生をするチャンスを与えられたことはよく覚えている。彼自身はすべきことがある故にソレを拒絶した。


「だが、自分自身の力で」


 だが、与えられるだけの方法しか、手段はないのだろうか?


「俺は確かにここにやってきた」


 答えは否、確かに例外がここにいる。


「悪いが俺は、与えられた力ではなく、自分の力で何かをしたいからな」


 じろりと玉座のある辺りをゴウザンバーが睨みつける。


 言外に語っているのだ、「お前の誘いには決して乗らない」と。


 察しているのだ、自身に声をかけていた存在がビートゥ帝その人であるのだと。


「さてとっ、それじゃあっ!!」


 片手で掴んでいたザンバースピア、ゴウザンバーは力を込めてカバリオザンバーごと引き寄せる。


 抗うことすらさせずに、こちらに引っ張られるのを確認すれば、クレアーツィは顔面目掛けて、空いている拳を叩きこむ。


「ぶっとべぇ! ザンバァァァァァ!! フィストォォォォ!!」


 されどそれだけでは止まらない、そのまま殴りつけた拳を射出する。


 二段攻撃と化した拳、その勢いによってカバリオザンバーは吹き飛ばされて行く。


「……エポン、お前がどうして俺を殺したのかは知らない」


 ゆっくりと、確かに一歩ずつ歩みを進め吹き飛ばしたカバリオザンバーへと向かうゴウザンバー。


「だが、まぁ言っちゃなんだ……痛くないように気を付けて殺してくれたよな?」


 そうして目前までたどり着けば、軽くしゃがみ手を差し伸べる。


「で、しかも命令で……訳アリだろ?」

「……っ!?」


 クレアーツィは見た、確かに今見たのだ。


 自身の言葉にエポンが反応を示した、故にこそクレアーツィは確信したのだ。


 エポンが自分を殺したのは訳あっての行動だったのだと。


 ならばこそ、その訳によっては許すこともやぶさかではない。


 逆らえない理由があり、そして過去の事であるのならばそれこそ気にしたところで意味はない。


(どれだけ頑張ったところで過去は変わらない、未来を見据え今を生きるのが人間だ)


 だからこそ、クレアーツィは過去の行動という物事には余り頓着しない。


 例え裏切った相手だとしても構わない、だって信じた自分の過ちでしかないのだから。


 自分を裏切らせないだけの実力を見せることができなかっただけなのだから。


 故に、彼は自分を殺した相手であっても許すことができる。


(まぁ、ちゃんとした理由があればの話ではあるけど)




「ふむ、まぁ想定外だが想定通りだな」


 そしてクレアーツィがそういう人間であることをビートゥ帝は。理解して(知って)いた。


 だからこそ、アキョクの防衛のために――。


「総員出撃せよ」


 カバリオザンバー以外にも無数の兵を用意していた。




「……っ!」


 四方八方から現れるギガントアークとマギアウストの軍団に、即座にクレアーツィは身構える。


 ここまで殴り込みをかける別動隊へ備えるための部隊、想定とは異なる形ではあるものの、結果としてはビートゥ帝にとって正しい判断であったと言える。


「……さーてと、それじゃエポン……理由あっての行動なら教えてくれないか? 俺ができることなら手助けしてもいいぜ」


 されど、今のクレアーツィにとっては現れた防衛部隊など二の次三の次、そんなことよりもエポンの行動の理由を問うことの方が大切なのだ。


「……だんまりか」


 とは言えそれはクレアーツィの理屈、答える義理などエポンにはありはしない。


「一緒に飯を食べて、共に戦ってきた仲だってのに」


 ありはしないのだ。


 だから答えてくれないのは仕方がないことだ、クレアーツィはそう割り切り、迫る別の敵へと意識を向ける。


「まぁ、どちらにせよだ……ちゃんと話ができるようにしないとな」


 口にした言葉とともに、ゴウザンバーにある変化が発生する。


「なっ、なんだアレは!? なんという兵器だ!?」


 ある者は視界に入った事象に困惑を隠せない。


「……っ、殺されるぐらいなら自分から死ぬというのか!?」


 ある者は理解ができないがゆえに思考が止まる。


「……そう言うことか、クレアーツィっ!!」


 そしてビートゥ帝だけは何が起きたのかを理解した。




 一方そのころ、決戦の地となっていた死の世界、そう呼ばれる場所でもある変化が生じていた。


 滅びの光が消えた、というのは確認していたが別の何かが発生していた。


「……何よ、あの火柱っ!?」


 どこまでも伸びあがる炎の姿。雲よりも高く、空よりも上へと伸びあがるソレ。


 滅びの光と同じ、アキョクのある方角で生じたソレに、連合軍も皇国軍も問わず全ての兵士の視線が釘付けにされた。


 誰もが闘争を忘れ、そして――。


「あ゛っあ゛っあ゛っ゛」


 自らの罪を悔いるのだ。




「ザンバァァァァ!! インフェルノォォォォォ!!」


 火柱が燃え上がるその始点。そこに在るは確かに赤き鋼の勇者。


 されどその身を纏う消えぬ炎。まるで火刑に処された罪人のような燃え続ける姿。


 故にこそのザンバーインフェルノ。


 地獄の炎をその身に宿した、ゴウザンバーの新たなる姿。


 その性能の上昇幅は、バーニングやグローリーモードをも上回る。


「……あぁ、これはミスだ、俺のミスだな」


 この光景を見てビートゥ帝はそう呟いた。


 クレアーツィを殺したことは明確な失敗であったと。


「これは、すべての罪人の罪を焼く」


 次の瞬間、アキョクの全てが、ゴウザンバーから放たれた炎によって焼き払われて行く。


 されど町に変化はない、町に罪は無いのだから。


 城に変化はない、城に罪は無いのだから。


 逃げまどっていた人々にも変化はない、罪は無いのだ。


 そしてマギアウストとギガントアークだけが焼き払われる。 


 ただただ全ての罪を焼き払う。


 この世に地獄が顕現する、例外などなく罪を焼き払う。


 されど人は殺さない、罪だけを殺す。


 この世に現れた焦熱地獄、その炎がネルトゥアーレ城へと迫る――。


「あぁ、だがやはりもう遅い」


 次の瞬間の事であった、アキョクから姿が消えた。


 ゴウザンバーもクレアーツィも、カバリオザンバーもエポンもいない。


 そしてビートゥ帝すらも消え去り、まるで何事もなかったかのように人々は日常を為す。




 では、消えた彼らはどこにいったのか。


「ふむ、ここでいいか」


 それは死の世界、二つの勢力の決戦の地。


 突如として現れた彼らの姿を見て、双方の兵士たちの困惑は止まらなくなる。


 いなかったものが突如として現れる。立派な異常事態なのだから。


「……よし、ではそろそろ第二段階と行くか」


 だからこそ、戦場全体に響く声によってようやく意識が戻る。


「新たなる世界への侵略の開始だ」


 それは悲劇は拡大していくだけだということを告げる言葉であった。

【ザンバーインフェルノ】

 ゴウザンバーの放ったこの世ならざる炎。

 使用者であるクレアーツィの定める罪を犯したモノ、罪を犯すモノだけを焼き尽くすモノ。

 もともとのゴウザンバーでは逆立ちしても行うことのできないナニかである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 俺は人を殺さない、その怨念だけを殺す!ってやつですな。 さーて舞台が移りましたがピートゥ帝は何をしでかすやら……
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