第51話 煌めけピュアグリッター! マギサザンバーと共に!
【マギサザンバー】
星川未来のためにクレアーツィが設計し、リザディが開発した第五のザンバー。
従来のザンバーと比較しても段違いの性能があるが、それは未来という膨大な魔導力を有する転生者が搭乗することを前提として開発されているため。事実として搭乗者が転生者であるのであれば他のザンバーもこの位の性能にすることは容易である。
特徴としては電子戦、及び空戦に重きを置いての設計となっている。
マギサザンバーが猛スピードで空を飛びまわっているころ。ネルトゥアーレ城では多くの人々が、より正確に言えば兵士たちが集まっていた。
「さて、かのクレアーツィが死んだという話は諸君も聞いたことだろう」
兵士たちの前ではおよそ二メートルという長身の大男が士気を上げるために演説を行う。
「我らがネルトゥアーレの精鋭たちよ! 我等にとって最大の脅威であったクレアーツィ・プリーマは死んだ!」
改めて告げられたその事実に兵士たちはどよめきを隠せない。それまでは一方的に損害無しで暴れることができたマギアウストを破壊できるザンバーを生み出した天下一の天才。無数のマギアウストをちぎっては投げちぎっては投げと無双の限りを尽くした怪物。
皇国軍人にとっての恐怖の象徴が死んだという噂は確かに聞いていた、というかなんなら公式の報告が上がっているのも知っていた。
だがそれでも信じられないでいた、あまりにも荒唐無稽に感じられていたのだ。
それこそ子どもが一人でマギアウストを破壊したなどと言われた方が納得できるほどに。
「無論信じられぬものも多いだろう、だが確かに死んだのだ」
しかしながら、この男が口にしているというのであれば信じられる。
権力の問題でそうなのではない、目の前で演説をしている男。ノヴリス将軍が信頼できる人間だから信じられる。
ノヴリス将軍はネルトゥアーレ皇国の三大将軍の一人である。同じ三大将軍は策略と転生者を除けば最高峰の魔導力のダーミラ、屈指の技術力によって皇国軍の強さを支え続けたグリモワ・ズィープト。だがこの二人はノヴリスほどの信用がない。
ダーミラは勝つために兵を捨て駒にすることが多々あり、グリモワはさらに兵の扱いが悪い。
それと比べノヴリス将軍は正々堂々とした動きを得意としており、部下の被害をできる限り減らす戦い方をする将であった。
故にこそ皇国で最も信頼されるのは彼であり、彼がそうだと告げたのであればそうなのだと誰もが納得する。
「正義は勝つというが、ならば死んだあの男こそが悪だったのだ! この事実こそが我らネルトゥアーレ皇国の戦いの正当性を、正義を示す!」
ひたすらに自分たちの正当性を訴える、その要因として死者を利用したとしても誰も止まれないし止まらない。
(……ただ調子がいいことを言っている自覚はある、だがこうせねば戦えなくなるものもいる、仕方ないことだ……とはいえ、私自身が認められるかどうかはまた別の問題か)
自分の言葉に正当性などないことを知っている、そう心の中でノヴリスはつぶやきながらも、それでも演説を止められない。
「かのクレアーツィ無き今! 連合軍にはもう我らの兵器を超えうる可能性は無い! そうもはや残るは雑兵、いやもはや遺骸にすぎん! それら軟弱な者たちに我らが負ける要素があるだろうか!」
「否っ! 我らが未来には栄光が約束されている! 偉大なるビートゥ帝の示すこの大陸の未来のためにこそ我らは勝利せねばならんのだ!」
兵たちはノヴリスの演説に手を突き上げて賛同を示す、自分たちは勝利して当然なのだと。
「空はなぁ!! 俺たちの領域なんだよ!」
彼の演説は全ての皇国軍の兵士たちの耳に届いていた、魔導具による通信によってマギアウストなどにもしっかりと受信されていたのである。
故にこそ、彼の演説によって士気を挙げた兵が、自分たちの場所だと認識している空を行く何かを見れば襲撃をかけるのは必然であった。
「っ、リザディさんっ! 敵がたくさんっ、えっと……三十機位!」
レーダーに見えた反応の数から即座にピュアグリッターはリザディに迫っている脅威の数を伝える。むろんその間もマギアウストの方へ視線を向け続け警戒し続ける。
「よーし、ザンバーなら、それもクレアーツィのザンバーだと言うのなら! その程度どうとでもなるはずだ!」
「分かりました! やってみます!」
彼女の返答と共に、向かってくるマギアウスト目掛けて猛スピードでの突撃を開始。咄嗟に回避するマギアウストの軍団ではあるものの、相手が悪い。
「ピカリラピリラ!」
彼女の言葉それだけで、夢と希望が満ち溢れ人知を超えた奇跡を巻き起こす。
「私よ増えろっ!」
「げ、幻覚かっ!?」
「レーダーの反応も複数に増えました!」
「冗談じゃないぞっ!」
だからマギサザンバーの数が急に二機に増えたとしても何らおかしなことはない。
「突撃っ!」
ただシンプルに彼女が魔法を使い、結果増えただけなのだから。
最大スピードである亜光速とまではいかないもの、それでも音よりも早く駆け抜け敵陣に飛び込むマギサザンバー。彼女はその間に―。
「ザンバーバトンっ!」
魔法の杖を手にしては軽く振る、振るわれたその先からは魔導力をまるで一本のリボンのように発生させる。見た目はリボン、だがしかし実態は異なる。
「なっ、なんだあの武器はっ!?」
「此方の攻撃が切り払われているだと!?」
実際の所はリボンを構成する魔導力の刃とでもいうべき代物。リボンのように変幻自在に形を変え攻撃の予測を困難にさせることが目的の特殊な武装。
「こう見えても前世の人間界では新体操やってたんだからね!」
彼女の経験を活かす形でクレアーツィが用意したが故に、本来ならば扱うことが困難なこの武器も十全に性能を発揮してみせることができていた。
「ちぃ、何だアレは! クレアーツィは死んだのではなかったのか!?」
「は、早く誰か上に報告しろっ!」
「そ、それが通信がつながりませんっ!」
新たなるザンバーが、今まで見たこともない武装を使っている。この情報をどうにかして伝えなければならない、しかし通信ができないのだ。
それもその筈である。
「ザンバージャミングっ! 成功っ!」
端的に言えば通信の妨害と傍受を行うための装備、マギサザンバーの頭部の大半を構成している魔女の帽子の部分、そこには敵のレーダーだけでなく、敵の通信などにも干渉する能力を有しているのである。
「それではピュアグリッターのマジックショーへようこそっ!」
「ぴ、ピュアグリッターっ! あの裏切り者かっ!!」
だからこそ、皇国軍の通信に無理やり割り込むことだって容易に行える。
自らがここにいることを、そして自らがお前たちをここで倒すのだと突き付ける。
「ザンバーランチャー!」
故にこそ、軽く箒から跳びあがり落下体制に入る。突発的なその動きにマギアウストたちは対応できない、なにせ理解ができないからだ。
しかしながらマギサザンバーは慌てることなく、空飛ぶ箒を手に持っては柄の方を軍勢に向けて構える。
「まっ、まさかそれはっ!?」
気づいた時にはもう遅い。手に持つ箒、いやザンバーランチャーの柄の先には一目見ただけで強力なエネルギーが収束されていくのが分かった。いや、もうそのような無粋な言い方は適さない。
地上に新たな星が現れた。
「な、何だあれは! あれではまるでギガントアークの最大出力!?」
従来のザンバーと比べて遥かに膨大な魔導力、その全てが一点に集まろうとしている様に恐怖を覚える皇国の兵士たち。
だからこそ、もう何もかもが間に合わない。
「テクコクマヤンマ! 吹きとばせ!」
彼女の言葉とともに収束していた魔導力、そのエネルギー量が更に跳ね上がる。
もはや逃げることなどできないのだとばかりに。
「ザンバー! スターグリッターエクスティンクショォォォォン!!」
叫びと共に放たれた魔導力はマギアウストがいた空間全てを焼き払い吹き飛ばす。其処に合ったことさえも否定せんばかりに。
溶ける等という過程すら経ずに、ただただ消滅させられていくマギアウスト。
されど、その煌めきは真昼の空に突如として現れた、満天の星々のようであった。
【ザンバーランチャー】
マギサザンバー専用の武装。
魔導力を推進力とすることによっての飛行ユニットであると共に広範囲を吹き飛ばす砲撃を可能とする万能兵装。
未来という転生者が乗るマギサザンバーでの使用により、理論上は光の速さにまで到達しうる。のだが、そのスピードでの運用を行った場合マギサザンバ―が速度に対応しきれずに自壊すると考えられている。
実は完成制御が行われており、急停止急加速も難なくこなすことができる。
なお武装として最大出力で使用した場合は辺り一面を焼け野原にすることができ、物理的な手段での防御のほぼ全てが意味を持たない。ただしあくまでも最大出力で放った場合であり、その状態で放つにはエネルギーチャージの時間がかなり必要であると共に、必要な魔導力量が膨大であるが故に途中でチャージを止めることもできない。さらに放ったエネルギーによる排熱や点検などが必ず必要となるため通常威力ですら撃つことができず、飛行ユニットとしても使えなくなる可能性が高いため、一撃でしかも確実に当たられる場合を除いて使われることはほぼないと考えていい。




