第49話 新たなる希望! 輝きの先に
【マルチザンバー】
量産型ザンバ―としてリザディが設計したモノ。
クレアーツィ製のオーダーメイド品とは異なり、だれでも使えるザンバーとして設計された。しかし、魔導石の適性は人によって異なるためにどうしても個人差が発生して使えない人間が出てしまう。
それを解決するために魔導石のユニットを外部に見える形で、後付けをするという形で解決して見せたのである。
第五のザンバーの建造を行う事となったリザディは未来との調整を行うこととした。
専用の魔道具は使う人間に合わせて調整しなければならない、基本中の基本であり、誰だって知っていること。
だからこそしなければならない。
「当たり前にしてることってのは、当たり前だがしなければならないことってのが基本だ。もちろんしなくてもいいけどし続けてることってのもあるけど、それは特殊な事例だからな」
故にこそ、リザディは基礎に従い未来に最も適した形に設計図を調整していく。
クレアーツィが作成した時から多少時間が経過した、そのわずかな時間で未来にも変化が生じているのは至極当然の話、である以上は調整しなければならない問題は複数存在するのだ。
ではこういったことをすることは当たり前なのか。
実はそうではない。
多くの機械技師たちはそう言った作業を手間に感じて省くことが多い。
よっぽどのことがない限り魔導力量や魔導石の適性は変化しないのだから当然問題なく稼働する。
故に必要であるはずの小さな変化を無視してしまうという問題が発生してしまう。
手を抜いてもバレないのであれば手を抜いてしまう、確かにそれは愚かな行為だ。だがしかし、してしまうことを誰が責められよう。
むしろ手を抜かずに真摯に取り組むリザディを賞賛すべきである。
ちなみにクレアーツィは既に作ったものですら調整を定期的に行っていた。この手間を惜しまない姿勢こそがクレアーツィやリザディを超一流の機械技師としている要因の一つと言えるだろう。
「ほーん、適正は大体問題なし、光の魔法石の適性が強いと……お、闇の適性もあるのか珍しいな」
パっと調査を始めたリザディによって、改めて未来の適性が確認されて行く。クレアーツィが予定していたものと同じ魔導石と同じ適正、彼の判断は間違っていなかったことが示されていた。
「とはいえ、設計図に書いてある想定搭乗者よりもランクが上だな……もうちょい盛れる」
しかしながら、少しの時間で未来が成長していたということだろうか、クレアーツィの想定よりも彼女は強くなっていた。であるのならばそれを有効活用しない理由はない。
リザディは笑う、これほどの逸材のために自分の腕を振るうことができるのだ。
機械技師としてできることを好き勝手にしても問題がない、事実としてこんなことを言われてテンションの上がらない機械技師などいない、いやテンションが上がらない奴は機械技師では断じてない。
「……多少マルチザンバー用の資材使っても問題ないよな」
とはいえ勝手に判断することは許されるわけがない。故に各国の王に問いに行くリザディ、彼にとってどこまで好き勝手にしていいのかを決めてもらわなければ、完成する代物の出来も変わってしまう。
できるだけ譲歩してもらうために覚悟を決め、一歩一歩確かに歩みを進めて行った。
「あぁ、クレアーツィの用意したザンバーか、いいよ好きなだけ使って」
大雑把な違いはあるが、設計図に示されていたスペックを軽く見た王たちは皆一様に好きにしていいと明言した。
マルチザンバーはマギアウストに対抗する重要な戦力だ、できることならば一機でも多く用意したい。
だがしかし、一機でマルチザンバーの軽く見積もっても数倍の戦力となるのであればそちらを優先する、量だけでは勝てない戦争を理解した彼らの判断で会った。
「しかし、武装だけでなく移動用の装備にもなるとはなぁ、あいつの発想力は変なところに進んでらぁ」
リザディはクレアーツィの設計図を改めて確認していく。
本体となるザンバーはどこか華奢な印象を感じさせる、女性的なデザインのモノ。似たようなものではブレイド、ブラストの両ザンバーも確かにそう言ったデザイン、しかしそのどちらよりも細身なそれは格闘戦をするためのモノではないと理解させられる。
むしろ気になったのは武装、設計図にあるのはザンバ―の全身よりも長い銃、ロングレンジを狙撃するためのライフルのようなもの。
「いや、違うな……これは杖……いや、箒か」
リザディの認識したように、何処か箒のようなデザインになっているそれ、しかしながら確かに設計図にはザンバースナイプと書かれている、恐らくは狙撃銃だ。
だがしかし、銃口の反対側ストックの辺りには巨大なバーニアが存在する。明らかに銃に必要なものではないだろう。
しかも銃口の辺りには明らかに余分な意匠。
「ここに跨って乗れってことか」
しかし、リザディはこの武装の意味を理解した。
空飛ぶ箒なのだ。
ネルトゥアーレ大陸においても魔女というもののイメージは地球人とそう大した違いはない、とんがり帽子にローブ、そして空飛ぶ箒だ。
「……あの嬢ちゃん、魔法使いなんだってなぁ……なら、そういうことか」
呟きながらも、もう一つの武装である小さなステッキのようなデザインのソレ。こちらからは魔導力のエネルギーを放出して使う武器と書かれている。
むろんこれも魔女が魔法を使うための杖なのだろう、変幻自在の扱い方ができるように仕込まれている設計図を見て、確かにこれで戦えば相手を魔法で翻弄しているように見えるなどと納得できる。
ここまで見て設計コンセプトを理解した、このザンバーは魔女なのだ。だから特徴的な頭部をしているのだと理解させられる。
「変な頭だと思ったが魔女の帽子か、これ」
とんがり帽子のような大きな頭部をしているのは魔女だから、だがしかしそれだけでこんなデザインにするのだろうか。
いや、当然違うこの頭部には敵の持つレーダーをジャミングするための電子戦用の装備として設計されている。
まさしく魔法にかけるための装備と言えるだろう。
「こりゃ、ちょいと忙しくなりそうだ」
リザディは笑みを強め、仕事道具を手に取り工房で一人動き始めていた。
【未来用ザンバー】
クレアーツィが事前に用意していたザンバー。
未来がピュアグリッターという魔法少女であるということを踏まえてデザインされた、一目見ただけで魔女と分かるザンバー。
武装なども魔女らしく見えるようにあれこれ考えて組み立てられている。彼女がこの世界でも本来あるべき魔法使いとしてふるまえるようにするための鎧と言えるだろう。




