第48話 魔鎧戦線に集いし者たち
【第零のザンバー】
クレアーツィがゴウザンバー以前に開発したザンバー。
どのような機体なのかを知るのはクレアーツィのみであり、遺言にもそれが存在するということしか遺されていなかった。
しかしながら、実はすでに作中に登場しているとかいないとか。
マルチドラゴネットを使っても長い移動、それによって到達したのは最前線の死の世界と呼ばれる土地。
無論文字通り死後の世界という訳ではない、そう呼ばれるほどに多くの人々の血が流された場所というだけである。
そして近い未来再び流れることが約束された地でもある。
この地に彼女らが向かったのは皇国との決戦のため、各国の軍がこの地に集い会議が開かれる予定となっているのだ。
「皇国との戦線において最主力となる私たちが行かないわけには到底いかないでしょ?」
もはや彼女らにとっては造作もなく打ち倒すことのできるマギアウストですら、ザンバーを扱えない者たちにとっては到底勝ち目のない脅威。
小さな虫を捻り潰すよりも容易く、マギアウストに蹴散らされるのが目に見えている。
だからこそ自分たちがそのマギアウストを抑えなければならないのだと、エストは語って見せる。
そんな彼女らが目的地にたどり着いた先で見たもの、それは―。
「ざ、ザンバー!?」
人型の巨大な魔導具の姿、見るものが見れば即座にこれらは全てザンバーであると理解ができた。当然他の人々よりもザンバーを身近に見てきた彼女らにとっては造作もないことであった。
「色が……なんか地味ですわね」
故に、彼女らは違和感を感じることとなった。従来のザンバーは例外なくド派手な色をしていたのだ。
ゴウザンバーならば真っ赤な姿、ブレイドザンバーならば真っ青、ブラストザンバーならば鮮やかな緑色をしていた。今は皇国の下にあるカバリオザンバーも派手な黄色をメインとしていた。
しかしその場にあるザンバーはみな一様にアーロの指摘通り、従来のザンバーと比べれば地味なカラーリングをしている。
黄色に茶色の混じったようなくすんだカーキのカラーリング、細かい部分には暗めの緑色も交じっている。
「兵器って感じの色だ」
竜希の感想も至極当然のモノであった。ザンバーのカラーリングは竜希の住む世界ではよく軍隊の迷彩などで使われている色。彼女にとっての軍隊の色、すなわち兵器の色として認識しているのも自然な話である。
到着したマルチドラゴネットから下船した面々の下にやってきたのは一人の若い兵士で。
「クレアーツィ一行が到着されたと聞き案内に参りました」
彼の案内に従い向かった先にいたのは一人の若いように見える男、しかし彼を知るものはその認識を否定できるだろう。
「お父様!?」
そこにいたのはフォストの国王、アーロの父でもある彼が一人待っていたのだ。
「よっ……と、噂は本当だったんだな」
彼が軽いノリであいさつをしようとして、その場にいるはずの男がいないことを確認する。
彼が、クレアーツィ・プリーマという男が死んだという噂が真実であったのだと。
「……さてと、ひとまず会議が始まるまでは自由にしててくれ、設営されたエリア内ならば兵士が時間になったら声をかけれるだろうしな」
「あの、クレアーツィは」
「死んだという事実は受け止めねばならん、すでに多くの人々がこの戦争で亡くなっているのだしな」
真実を真実として受け止め、なお態度を変えない王はそのまま面々に向かって告げる。
「それでも君たちは、覚悟を決めて戦うのだろう。ならば私は私のできる最善をするだけだよ」
一人の王としての振る舞い、偉大な英雄を失ったことは大きいが、だとしてもなさねばならぬことはあるのだと見せる。言うは易く行うは難しとはこのことか。
自由時間を与えられた面々、未来は時間の有効活用のためにある場所に向かっていた。
「すみませーん」
「おっ、なんだ?」
そこは多くの人々が忙しそうに仕事をしているのがよく見える、何かの組み立てが行われているのを見ればここが何なのかは誰にだって分かるだろう。
機械技師の工房であった。
「へぇ、新型のザンバーの開発ねぇ」
「はい、クレアーツィの残したこの設計図のものを」
未来が見せるのはクレアーツィの用意していた第五のザンバーの設計図、それを見た機械技師たちは目を丸くする。
「だめだ、こんな欠陥品は作る意味がない」
「欠陥品ですか!?」
技師たちの発言に未来は目を見開いて困惑を隠せない、クレアーツィが作る代物にそこまで指摘されるような問題があるのかと。
「ま、端的に言えば魔導力量だな、このままじゃ扱える人間なんていないだろ」
「って言うか、この魔導石の組み合わせで使えるわけねぇよな」
「はははっ、あの大陸一もボケてたのか」
どうやら問題がないことが分かった。
「ったく、この問題全部問題にならねぇってことが分からねぇから一人前になれねぇんだよ」
「お、親方っ!?」
その事実を指摘しながらやってきたのは屈強な体躯のトカゲの様な姿の人。リザーディアと呼ばれる国の民である。
「おや嬢ちゃん、リザーディアの人間を見るのは初めてか? まぁ、びっくりするだろうさ。で、これ嬢ちゃんが乗るんだよな?」
とんとん拍子に話を進めていくリザーディアの民、彼の問いかけには未来も当然首を縦に振る。
「と、ところで貴方は」
「俺はリザディ・ドゥリー……クレアーツィがいなくなった今、大陸で二番目に腕利きの機械技師だよ」
【リザディ・ドゥリー】
現在時点では大陸で二番目の腕前の機械技師。
彼は何方かというとクレアーツィタイプの機械技師であり、マルチザンバーの開発にも大きく力を発揮した。
リザーディアという、我々にとってはリザードマンとでもいうべき姿の人々が暮らす国の出身。




