第47話 託されたもの、そして進むべき先へ
【ザンバーの整備】
最低限の方法自体はエストたちに、しっかりとクレアーツィが教えているので問題なく稼働している。
しかし、それも最低限度のレベル、整備不良が発生するのも時間の問題となっている。
例えクレアーツィが死んだとしても、マルチドラゴネットの面々の行うことは変わらない。
「マギアウストだけならどうとでも!」
神域の速度で剣を振るうブレイドザンバー。その背後には無数のマギアウストの残骸が散乱していく。
「少なくとも今の私たちは苛立っておりますので、手加減などできませんわよ!!」
針の穴を通すように連続で放たれる全ての砲撃が、的確にマギアウストを貫いて行く。
もはや我々にとってマギアウストなど敵ではない、そう見せつけるほどに暴れまわる二人の姿。けれども彼女らを見ていた竜希は別のモノを見ていた。
「……クレアーツィさんがいなくなって、二人とも荒れてる……仕方ないことだとは思うけど」
悲しみと怒りにとらわれた二人の姿を。
「私にもできること……探さないとなぁ」
一方そのころ、研究室で物の整理をしていた未来。彼女は現状を、自分が何もできないということに焦りを感じていた。
エストやアーロのようにザンバーに乗り込んで戦えるわけではない、マルチドラゴネットに必要な魔導力は竜希一人で十二分だ。
「雑用……とかはしてるけどそれだけだし」
掃除洗濯などは率先として行ってはいるし、仲間たちもその行動を喜んでくれている。けれどもそれだけだ、未来だから……ピュアグリッターだからこそできることはしていない。
彼女の魔法もマギアウストやギガントアークを相手するにはパワーが足りないのだ。
それは元々の彼女の力が足りないという話ではない、本来の彼女のフルパワーであれば妥当することも容易ではないが可能だろう。
しかしこの世界にはもう夢も希望もありはしない。
その象徴になりかけていたクレアーツィの死が大陸全土に広がってしまったのだから。
すでに夢も希望も死んでしまったのだ。
残るは愛だけが彼女の魔法を支えている、しかしそれも無理やり支えているに過ぎない状態。
「……グリティアンが残ってたら、いや無いものねだりしてもしょうがないか」
だからこそ、自分が新しく何かできる方法を探していく。
そう信じて、クレアーツィが何かを遺しているのではないかと信じ、彼の研究を調べ始めたのであった。
そして、ある程度の研究を調べ直していたその時である。
「あれ、何か押した?」
未来の手が何かのボタンらしきものに触れ、押し込んだ感覚を感じとる。
もしかしたらまずいことをしてしまったのではないかと、あたふたと慌てる彼女を無視するように何かが起動していく音が響いていく。
「……何も起きない……ってことはないよね?」
だからこそ、それらしい何かが起きない事態に困惑を隠せない。
関わった時間は誰よりも短い未来でも、クレアーツィという男が無駄な仕掛けを作るはずがないと理解している。
「……そういうことかぁ」
故に身構えていた彼女の前にクレアーツィが現れる。
無論死者がよみがえったなどという奇跡が発生したわけではない。
「これは立体映像だ」
「こんなものまで作ってたなんてね……」
苦笑いを浮かべながらも、立体映像として現れたクレアーツィの方をじっと見つめる。
「さて、これが流れているということは俺がそこにいないか、むしろ俺が見せに来ているかのどちらかだな、まぁいないのを前提に話す」
だからこそ、彼の用意していたこれの意味を理解する。
遺言状なのだと。
「さて、世界は平和になっただろうか、平和になってこれ見てるってことはなんか恥ずかしいので部屋から出てこの映像を忘れろ、いいな」
「うわっ、これは格好悪い」
まぁ、こんなことを言いだすあたり、クレアーツィ自身も聞かれることを想定していなかったのだろう。
「さて、では平和になっていない世界、と考えるならば俺が設計しておいた俺の第五のザンバーの存在はまだ完成していないと考えていいだろう」
「第五のザンバー?」
ゴウザンバー、ブレイドザンバー、ブラストザンバー、そして今は皇国の下にあるカバリオザンバー。これが今存在する四つのザンバー、量産版のザンバーがあるらしいが、それはクレアーツィの作品ではないので含まないのだろう。
すなわち、まだ存在しない新たなるザンバー、しかも彼の性格を考えるのならば―。
「私のためのザンバー」
「未来の、ピュアグリッターのためのザンバー、それが第五のザンバー」
未来の予想はぴたりと的中した、クレアーツィの立体映像は続けて語る。
「設計図は用意てある、俺が死んだ以上どうしようもないかもしれない」
映像の中のクレアーツィは沈んだ表情で告げる。彼は分かっているのだ、作れる人間がいないという事実を。
「で、それだけしか理由がないのに諦めるのか?」
故にクレアーツィは問いかける、たったそれだけの理由で諦めてしまうのかと。
できる人間がいなくなった、ならば自分ができる人間になればいいではないか。
言葉にすればシンプルな話だ、しかし当然困難な事であることはクレアーツィ自身が理解しているのだろう。
けれども彼は笑みを浮かべている。満面の笑みで、できて当然だとばかりに。
「諦めるものですか、だったら私がやって見せるに決まってるじゃない!」
それに応えるように未来も宣言して見せる、自分がクレアーツィの仕事を代わりにやって見せると。
「その言葉が聞けて何よりだ」
だからこそ、彼女の返答も予想通りだと告げる彼が笑みを強めていた。
彼の言葉と共に、どこに設計図があるのかを示された情報が表示されれば、未来は即座にその場所を確認、今まで見たどのようなものとも違う設計図が見つかれば、さらにどのようにして製造するのかも書き連ねられた資料迄セットになっていることに驚きを隠せない。
「ここまで予想してたんだぁ……」
その事実を見て未来は苦笑いを隠すことすらできない、これだけのことを事前に用意しておいて殺される可能性は想定していなかったのかと。
「さて、それでは最後に第零のザンバーの話をしようか」
故にこそ、彼の遺言が続いたこと、さらにはその内容に彼女は困惑を隠せないままであった。
【第五のザンバー】
クレアーツィが用意していた、未来のためのザンバー。
その仕様を知るものは現世では未来ただ一人である。




