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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第二章 転生騎士団編
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第46話 地獄の底を超えて征け

【転生者】

 それは例外なく一度死んだ者、されど次の生を与えられ立ち上がった者。

 多種多様なスタート地点とゴールが与えられる彼らだがその一点だけは例外なく共通している。

 墜ちる墜ちるどこまでも。


 来るなと誰かがそう望む、誰もが皆そう望む。


 されど、男は止まらない。誰も男を止められない。


 反逆者の罪を与えられた、夢物語の主人公。


 クレアーツィ・プリーマは一人征く。




 彼が堕ち続け、ようやく地に足ついた時、視界の中は黒と赤。


 光が届かぬ世界とは白の中とまるで同じ。


 否、断じて否。


 そこにある赤は炎の赤、罪人全てを焼き尽くし続ける断罪の炎。


 そこにある赤は血の赤、罪人たちが刑罰を受けた結果流し続ける苦しみの証。


 そして黒、ただただ永劫終わることのない先の見えない闇の果て。




 そんな地獄の底をクレアーツィは歩いていた。


「さて……と、目指す先は地獄の底の更に底」


 人影らしきものは見えるものの、こちらもあちらも干渉はしない、地獄だから?


 否、こちらは関わる必要がなく、あちらは関わる手段を持たない。


 故に彼らは干渉しない。


「……よし、まずはこれだな」


 だからこそ、彼らが干渉しあうのであればクレアーツィにその必要があった時。


 顔も見えない、個人を特定できない、個性のかけらもない人影に声をかける。


「へぇ、俺に何の用だい」


 その人影はクレアーツィからの干渉を受け返答する、何の用があって地獄まで来て俺に干渉したのだと。


「この地獄に囚われた罪人を解き放ちに来た」


「はははははっ、そう来たか!」


 一つの人影が笑いだせば、その周囲の彼らも大きく笑う。まるでバカバカしいことにもほどがあるとばかりに。


「罪人を解き放ってどうする」


「そうだ、お前は皇国の奴らを倒したいのか知らないが、罪人がそんなことに付き合うとでも?」


 彼らに続けとばかりに他の罪人たちも一斉にそうだそうだと続けていく。何故罪人を解放するのだ、理解できないぞと。


「いいや、お前たちは皇国との戦いには喜んで付き合うだろう?」


 されど彼らの言葉を正面から否定するように、まるで獲物を見つけた肉食獣のような笑みを浮かべては告げていく。


「お前たちは皇国、いやビートゥ帝に逆らったが故にこの地獄に囚われし者」


 なぜなら自分がここに飛び込んだ時に告げられた罪状がそうだったのだから。


「在りもしない、罪悪を背負わされたものたち」


 だからこそ立ち上がらねばならない、偽りの正義が支配する世界など誰も望んでいないのだから。


「例え神に盾突くことになるとしてもか」


「くだらないことを言うんだな」


 彼にとってそんなことはどうだっていいこと、他人の語る寝てる時見た夢の話よりもくだらないことでしかない。


 だからこそ、その問いかけにはしっかりと答えねばならない。


「偽りの正義を正義だと告げる神など、信仰の対象では断じてないだろう」


「だが、だとしても神だぞ」


「信仰の対象でないソレに俺は価値を感じない、だから立ち向かうことに何の躊躇も必要はない」


 信仰の対象でも、ましてや畏れねばならない神でもないのだ、なにせ生前も歯向かい続けていたのだから。


「だから問う、お前たちは自分たちを虐げる邪悪に立ち向かうことは恐ろしいのか?」


 罪人とされた彼らに問い続ける、クレアーツィにとってこの問いは大事なことなのだ。


「俺にとって恐ろしいことってのはな……自分が作った魔導具が、誤った使い方で人々を苦しめる現状そのものだ」


 故に彼は立ち上がった、自分が行動した結果回りまわってそうなってしまった、などという事実が恐ろしい。


 だからこそ、恐ろしいからこそ、彼は立ち上がるのだ。


「なにせ、怖いんだからこそ、その怖くしてくる要因をぶっ飛ばさないと安心できないだろ」


「ははははっっ、普通怖いんだから近寄りたくないだろう」


「だが、逃れることができないものなんだ、だったら正面から叩きのめさないと意味がない」


 怖いものを遠ざけるのではなく、自分からその怖いものをどうにかしに行く男、だからこそ彼はここまで戦い続けてきた。


 あぁ、確かに彼はまともではないのだろう。でも、だからこそ―。


「俺はここまで戦い続けられた」


 彼の瞳は囚われし者たちをじっと見つめる、手を貸し正しい状態に戻すのか。


 偽りの正義にへこへこと頭を下げ虐げられ続け、その被害者を増やし続けるのか。


「決まっている」


 亡者たちは立ち上がり拳を突き上げる。地獄にいた者たちが集いゆく、誰もが自らをここに追いやった邪悪を討つために。





「……クレーアツィさん」


 竜希は一人夢を見ていた、自分がここに来ることになったあの日と場所。


「ごめん、あなたたちの兄弟は助けられなかった」


 彼女は無数の人影に向かって、かつて彼らが告げたことを思い出しながら懺悔した。


「いや、今から始まるんだよ」


 けれども、彼らはまるで気にしていない様子でそう断言した。


 クレアーツィは死ぬのはまるで前提条件のような、けれども死ねばそこで終わりではないかと彼女は口にしようとして。


 思い出す。


 本当に死ねばそこで終わりなのかと。


「……違う」


「そう、他の世界はどうか知らないけれども」


 自分がいるこの世界は決してそうではない。なぜそう言い切れるのか?


「だって私がいるから」


 転生者、その存在は例外なく自分の魂が一度死んだ者たちである。


 ならばその事象が再び発生しないとなぜ言い切れる?


「……死んでもそこが終わりじゃない」


「あぁ、むしろ彼はここからが本番だ」


 彼らの言葉を耳にして、竜希は目を覚ました。どんな夢を見ていたのかはまるで覚えていない、まるで理解していない。


 けれども、潰えた希望だとばかりに思っていたがそれが真ではないと心の底で理解していた。


 まだ決して負けたわけではないのだと彼女は信じられた。


 マルチドラゴネットは今日も飛ぶ、希望の箱舟はまだ沈んでいないのだ。

【ゴウザンバー】

 今は操る者もいなくなり、格納庫で静かにたたずんでいる。

 しかし、このマシンは未だ潰えず希望の象徴としてそこにある。

 まるで自身の主がいつか帰ってくると分かっているかのように。

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― 新着の感想 ―
[一言] さーてどのタイミングで帰って来るかなー このクレアーツィとゆかいな仲間たち(仮)の反撃に期待。
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