第38話 二つの正義を一つに束ね
【ザンバーとマギアウストの性能差】
ザンバーの強さを十とした場合、マギアウストの性能は平均して七位である。
しかしながら、その操作性ゆえのパイロットの性能が戦力を大きく向上させるが故に数字以上の性能差が発生しているように見えるという訳である。
吹き荒れる魔導砲撃、荒れ狂う暴力の嵐。その真っ只中にいながらもゴウザンバーとグリティアンは平然と立ち向かっていく。
「ザンバァァァァ! フィストォォォ!!!」
鋼の拳が解き放たれればマギアウストを何体も貫き。
「テクコクマヤンマ! 吹き飛ばしてっ!!」
魔法の力が敵を勢いよく吹き飛ばしていく。二人にとって皇国の兵器などもはや敵ではないとばかりに。
「ええいっ、敵はたったの二機だぞ!?」
指揮官の言葉は虚しく響くのみ、たった二機に軍団が翻弄されていく。
これは二人が実戦に慣れているということの証明。クレアーツィは勿論のこと、ピュアグリッターもまた自身の世界で戦い抜いてきた英雄なのだから。
「クレアーツィさん、こっち合わせてくれてる?」
「そっちはこういうの慣れてないんだろ?」
むしろ軽口叩きあう程度には余裕があるようにすら見える。
「とは言え、ギガントアークをぶっ飛ばすにはゴウザンバーじゃキツイか」
しかしながら、ゴウザンバーの改造もギガントアークを単機で破壊できるほどには進んではいない。故に決め手となるのはグリティアンの武装と魔法のみ。
「で、相手もそれ分かってるみたい」
それに対してピュアグリッターの方はと言えば、彼女自身の戦闘経験はともかくこういった巨大な兵器を運用しての戦いは経験に乏しい。故に、どうしても対応が少しずつでは遅れていく。無論相手もほぼド素人故にこれはただの誤差。だとしても積み重ねっていけば致命的なミスを生みかねない。
だからこそ皇国の兵士たちはグリティアンを優先して攻撃する。ゴウザンバーは単独ではギガントアークをどうしても倒せない故に。
「ちぃっ、デカいの一発ぶち込むために俺が時間稼ぎするってのは?」
「ダメ、デカいのは本当にデカいのだから妖精さんたちが傷ついちゃう!」
「妖精さんじゃなくてフェーダの民な!? あいつらそういう呼ばれ方気にするやつ多いから!」
「あ、はいっ!?」
多少脱線をしつつも現状打破のための作戦会議を大きな声で行う二人、むろんその間の被弾らしい被弾はないわけで。
「ええい、あいつら! オープンチャンネルでの作戦会議だとっ!?」
だからこそ、その行動は敵への挑発にも繋がっていく。怒りで我を忘れた素人が冷静な対応などできるはずもないわけで。
「おっ、いい感じに相手が外してくれらぁ」
「……反射増幅試してみるっ!」
と、相手の行動を利用しようとするピュアグリッターの言葉を聞いてはクレアーツィが少し考えたうえで。
「待った、それじゃ不味い」
それでは駄目だと待ったの声をかける。
「増幅はせずに反射だけでどの程度のダメージが出るかを確認したい」
あえて段階を落としての対処を指示、何かを企んでいることは誰もが理解できる発言ではあるわけで。
「分かったっ! テクコクマヤンマ!」
反射の構えに入ったのを見たギガントアーク、ここで冷静に考えるのであれば下手に攻撃してはならないのは誰でもわかる。
「ぶち抜けぇっ!」
が、しかし冷静さを欠いてしまえば定石を忘れてしまうのもまた必然。
「俺の力ならぁ!!」
しかも、自分の力を過度に信用してしまえばなおのこと。実戦を知らず、自分の力を知らず、相手の力も理解していない。そんな彼の攻撃が―。
「残念でしたっ!」
「ぐぁぁぁぁっ!?」
そのまま自分自身を貫いていく。そのあまりの破壊力故にすさまじい土煙がもくもくと立ち上りその姿を隠す。
「ピュアグリッター、一つ聞きたい」
「何かな?」
「お前さんの魔法、無限に使える?」
「あー、夢と希望と愛をエネルギー源としててさ……無限に見えて有限、しかもこの世界そういうの弱いかなぁ」
などと会話を続けながらも、視線の先の土煙が晴れるのを見ては二人は満面の笑みを浮かべる。反射された先のギガントアークには大きな風穴が空いていたのだ。
「反射と増幅反射消耗が大きいのは?」
「まぁ増幅反射かな、当たり前だけど2つの工程が入るからさぁ」
だからこそ、この光景から二人は理解する。あいつらの攻撃をそのままぶつけるだけで倒せるのだと。
「ま、これで無駄遣いはしなくてよさそうかな」
笑いながら杖を構えては、戦闘が終わった後のことも考える余裕のあるピュアグリッター。
「んで俺は動くだけで倒せる可能性まで出てきたわけだ」
楽しそうに笑いながらそう告げるクレアーツィはというと、魔導力量を自分で計算し直し最後まで行けることを確認している。
「……あぁ、確かにこのままではまずいだろうな」
だからこそ不敵に笑う敵指揮官の様子を見、どこか違和感を二人は感じていた。この段階でほぼ自分たちの勝利が確定しているにもかかわらずのソレ。既に何か仕込まれているはずだと、歴戦の戦士である二人は理解していた。
「……とは言え、分からんものを警戒しても仕方がないか」
「だね、とりあえず今はできることだけやろうっ!」
世界中の誰だって知らないことは分からないのだ。そして分からないことは対策の立てようがない。故に今自分たちのできることを貫くと決める。
一方マルチドラゴネットは。
「クレアーツィがもう行動を起こしたっ?!」
「しかもあの時敵だった彼女を味方につけて!?」
速報で流れ込んできた情報にてんやわんや、ただひたすらに混乱を巻き起こしていた。自分たちに有利な情報が多数を占めているが故に喜んでいたいモノの、情報そのものの内容があまりにも突飛に聞こえていたのである。
「……大丈夫、ピュアグリッターは正義のスーパーヒロインだから!」
そんな中で無邪気に信じている少女の姿。ピュアグリッターの活躍をよく知っている彼女だけは素直に受け止めていた。あるべき姿に戻ったのだと。
「……皇国が何も考えずにそんな人を前に出すとは思えませんけど」
そんな状態でぼそりと呟かれたエポンの言葉は誰も聞こえていなかった。
【ザンバーとギガントアークの性能差】
ザンバーを十とした場合、ギガントアークの性能は五十位である。
黒沢庄司が登場していた時は彼の技能もあってか数字以上の力を発揮して見せていた。
しかしながら、ザンバーの合体は掛け算であるがゆえに合体をすると性能差が逆転していくのである。
なお、パイロットを本当の意味で選んでいいのであればクレアーツィもギガントアークのような機体を作ることは可能である。これは皇国のパイロットの魔導力量が桁外れに多いが故にできる荒業であり。手段を選んでいないということが示されている。




