第34話 魔法の国のプリンセス! ピュアグリッターの大魔法!!
【魔法】
人間の力では為しえない不思議な力。
この物語において、34話時点で魔法が使えるのは星川未来だけである。
魔法の国のお姫様であった彼女は、魔法の国全体で見ても屈指の魔法の使い手で在り、できない事は何もなかった。ただ一つ、自分のために魔法を使うことを除いては。
ピュアグリッターと自らを呼称する、謎の少女は呼び出したピンクの鋼の巨人に吸い込まれるようにの乗り込んでいく。するとその巨人の瞳に光が灯り、命が宿ったのだと理解させられる。
「……竜希、変な反応してるけどアレ何かわかるのか?」
「……私がもともといた世界の有名人、おとぎ話の主人公って言うか」
苦笑いをしながら、クレアーツィの問いかけに答える竜希。とは言え竜希は竜希でこの現象を理解できておらず、突如現れた彼女が本物なのか偽物なのかもわからない。
「って言っても、あんなロボット……ザンバーとかマギアウストみたいなのは持ってなかったなぁ」
「……本物ならこっちで手に入れた可能性が高いってことね?」
「はい」
だからこそ、彼女が乗り込んだあのマシーンが何なのかも当然のように分からない。分からないから攻撃も下手にできない。
「グリティアン! 光の杖!!」
それを知ってか知らずか、グリティアンと言う名の巨人の名を口にしながら、光で構築された杖を手にし構えるピュアグリッター。
「っ、それでピュアグリッターってのはどんな話の主人公だ!」
グリティアンの攻撃をひらりと回避しながらも、竜希へと問いかけるクレアーツィ。仮に本物だとするのなら、彼女は我々の敵となるのか気にしているわけで。
「魔法の国のお姫様は修行として、人間界へと送られる。そして人間、星川未来として正体を隠しながら、困っている人々を魔法で助けていくような人! だから悪い人じゃないの!」
「っ、もしかして貴女私を知ってるの!?」
だからこそ、竜希は自分の知るピュアグリッターの物語を語る。彼女は困っている人の味方で、心優しい少女なのだと。決してクレアーツィたちが敵対すべき相手ではないのだと。
しかしながら説明も当の本人によって遮られる。まるで私のことを知っている人がいるはずがないとばかりに。
「うん、ピュアグリッター……私は貴女の事をよく知ってるの!」
テレビの中の絵空事だとしても、確かに竜希は彼女のことを知っている。一方的に知っているだけ、何をしていたのかもどんなことが好きなのかも、只々そういう設定として。だが、それを知っているのも竜希だけ。だからこそ。
「貴女は悪い魔法使い? それとも魔法の国や人間界でいつか出会った人?」
―自分が元いた世界の住人ではないかと問いかける。もしかしたら、私のことが御伽噺になるほどに未来の誰かなのではないかと。
「違う、私はそのどっちでもないよ」
だがしかし、竜希はそのどちらでもない、一方的に知っているだけの関係。それも異なる世界という、通常よりも遥かに大きな壁があるもので。
「一方的に知っているだけ」
それを聞いては、ピュアグリッターは理解する。彼女は別に特別気にする必要はないのだと。
「でも、だとしても私は貴女の事を知ってるの、だから聞かせて! どうして私たちに立ちはだかるの!?」
竜希は疑問をそのまま問いかける。
ピュアグリッターは正義のスーパーヒロインで、決して悪事をするような人間ではなかったから。ネルトゥアーレ皇国のやり方を絶対に許せないタイプの人だから。
「クレアーツィ達はこの大陸から、自由と平和、正義と夢を奪おうとしているのよ! そんな奴らを許せるはずがないわ! それに彼らは何人も何人もネルトゥアーレの、罪無き人々を殺したのよ!」
だからこそ、ピュアグリッターが立ちはだかる理由を告げられては理解が遅れる。
クレアーツィ達が罪無き人々を殺した? そんな筈はない、彼らは基本的に攻め込まれたときに防衛していただけだ。
クレアーツィ達が自由や平和、正義や夢を奪おうとしている? そんな筈はない、むしろそれをしようとしているのはネルトゥアーレ皇国の方だ。
「ピュアグリッター、貴女騙されている!」
「そうやって私の心を乱そうとしているのね!」
だが事実を事実だと認識できなければ、それは当人にとっては偽りとなる。故に彼女にとって竜希はクレアーツィ等の罠だと受け止める。ならば正義の魔法少女として何をすべきか?
「ピカリラピリラ! 吹き荒れろ嵐! 焼き尽くせ雷!」
手に持つ杖を軽く振るいながら魔法の言葉を口にする。ただそれだけで、突如として嵐と落雷が人為的に発生させられる。自然現象に干渉すること自体は魔導石である程度ではあるものの可能である。
「っ! おいおい! これは流石にどんな理屈だ! 完全適合だとしてもこれはやりすぎだぞ!?」
だがしかし、結局の所ある程度でしかない。これ程の干渉は完全なる魔導石への適合が必要であり、しかもそれは一人の人間に一種類あるだけで奇跡。魔導石でこの現象を起こすには少なくとも二つ以上の完全適合が必要であり。当然一人で複数の完全適合など、生きとし生けるものとして存在するはずがない。
「クレアーツィさん! これはピュアグリッターの魔法です! 魔導石ではありません!」
必然これは別の理屈で生じる現象、ピュアグリッターの持つ魔法の力。発生しているそれはもはや神域に至るほど。
「お伽噺の主人公、はははっ! 大英雄ってことかっ!」
「であれば、我々も乗り越えねばなりませんわねっ! なにせ我々―」
「ヒーローだもの!」
「であれば一番槍は私がっ!」
鳴り響く雷鳴に対して、ザンバースピアを掲げるカバリオザンバー。その螺旋槍目掛けて降り注ぐ雷を受け止め。
「吸収したっ!?」
「お前より前に俺たちが戦ったやつが一度物凄い電撃ぶっ放したからなぁ!」
故に対策はしてあるのだ、と胸を張るクレアーツィ。その言葉に合わせるようにカバリオザンバーはザンバースピアをグリティアンに突き付ける。穂先からは受け止めた分の雷に加え、自身の魔導力から生成された分も上乗せされたエネルギー波が、螺旋を描きながら解き放たれる。
「テクコクマヤンマ! 跳ね返して!」
それに対して彼女は再び魔法の呪文らしきものを唱え、光の杖を軽く振るう。ただそれだけで放たれたエネルギーが突如として方向を転換。至極当然の様に放たれた方向へと向かっていく。
「っち、遠距離は返されるってことかよっ!!」
などと口にしながらも、咄嗟にゴウザンバーが前に出る。ザンバープロテクトという防御機構が存在しているからか?
断じて否。
クレアーツィ・プリーマという男は、大陸一の機械技師という立場を持っているが故に、世間一般からはインテリの類だと認識されている。それはあながち間違っていない。頭は決して悪くない、というか普通に賢い部類である。
だがこの男の本質はそこにはない、この男は頭のいいバカなのである。少し考えれば痛い目に合うと分かっていても、自分がすべきだと思ったことは何も考えずに行えるタイプだ。自分がどれだけひどい目に合わせられたとしても、相手が反省すれば簡単に許してしまえるタイプの人間だ。そして自分が信じる相手が、信じている相手のことも簡単に信じられる。
「竜希が信じてるんだろ? なら……何かあるんだろうさ」
ならば、自身が信じている竜希が信じている、ピュアグリッターが正義のヒロインであることを信じられないか? 答えは当然信じられる。
「撤退しろ、この場ですべきは真実を見つけ出すことだ! いいか、真実ってのは絶対的に一つだ! 二つ三つ出てくるなら、それは偽りが紛れ込んでいる」
故にこの事態に至る要因を探せと叫ぶ。
「なぁに、俺のことは心配するな……ゴウザンバーは、ヒーローなんだぜ!!」
ザンバープロテクトにひびが入りながらも気丈に振る舞うクリアーツィ。だからこそ仲間たちは動くことをためらおうとして。
「クレアーツィさん、死にませんわね?」
「もちろん」
一人の王女は自身がすべきことを理解する。
「必ず生きて、また笑いあいましょう! 撤退しますわよ!」
ブラストザンバーが有無を言わさず、二機をつかんでは無理矢理飛び上がる。そのままマルチドラゴネットのカタパルトに無理やり放り込めば、自分も中に入る。
「竜希さんっ! 撤退しますわよっ!!」
「でっ、でもっ!」
「彼の覚悟を無駄にする気ですのっ!」
「あっ、あんた何言ってるか分かってるの!?」
「ありがたいことにこちらはダメージもそこまでなし! 最低限の整備だけなら私たちでもできますわ!」
「で、ですけれどあのままじゃっ!?」
「全員が死んで何ができるというのですっ! はっきりと言って、トリニティのさらにグローリーでなければ勝ち目など欠片もありませんわよっ! こちらは合体できないのにっ!」
歯を食いしばりながらアーロはそう突き付ける。今の私たちでは勝てないのだと。
逃げ去るマルチドラゴネットの後方で、火柱が天空を貫き立ち上がっていた。
【ザンバーの合体】
必ずコアユニットとしてゴウザンバーを必要とする。
これは元々新しいパーツを用意することでの状況に合わせた力を発揮する、ということを目的としていたゴウザンバーの仕様が理由である。
それ故に他のザンバーは、ゴウザンバーの強化用のパーツであるともいえるだろう。




