第32話 見よ! これがカバリオザンバーだっ!
【カバリオザンバー】
クレアーツィが作り出した第四のザンバー。
俗にいうケンタウルス型のザンバーであり、そのスピードはブレイドザンバーにも勝るとも劣らない。最大の特徴であるその四本脚はそのスピードを維持しつつも安定性も高めている。
同じスピード型であるブレイドザンバーがそのスピードで翻弄する戦い方を得意とするのに対し、こちらはそのスピードを活かして一撃の威力を高める突破力を生かした機体と言えるだろう。
センタウルの街はずれ、そこではクレアーツィたちが一機のザンバーの試運転を行っていた。
「さて、カバリオザンバーは従来のザンバーと違い四本脚。 だから問題も発生しやすい可能性が高い。 エポン、ほんの少しでも違和感を覚えたら教えてくれよ」
クレアーツィの頼みに対して、カバリオザンバーは首を縦に振ることで肯定の意思を示す。 自分の扱うものであるが故に、どんな細かい事でも伝えようというわけである。
「それでは、まずは軽く走ってくれ」
歩けとは言わない、出来て当たり前だから……と言うわけではなく、そちらの動きの方がよく使うため、走ることに向けた調整を優先する為である。
指示を受けたカバリオザンバーは猛スピードで駆け出していく。機動力に特化したブレイドザンバーほどではないものの、マッハに近い速度が出ているのは間違いない。
「四本脚だから安定性はブレイドザンバーよりも高いと。魔導石の適性の問題もあるが……速いのは実にいい」
だからこそカバリオザンバーの武装は、この速度を活かしたものである必要がある。
「ということは、まぁ事前に分かっているしエポンの特技も把握してるんで用意した武装、それが―」
「このザンバーランス、ですね!」
カバリオザンバーが手に持っている、穂先や柄の部分が特徴的な騎兵向けの槍。その特徴というのが円錐螺旋状の形状であるということ。
「このザンバーランスはただのランスじゃない、ちょいと魔導力を注ぎ込んでみな」
にやりと笑ったクレアーツィはエポンにそう指示を出す。それに応じるようにエポンもザンバーランスに魔導力を注ぎ込む。
「ちょっ、なんか回転し始めましたよ!? しかもなんかバチバチ言ってます!」
「へへへ、ドリルとしても使えるし、電撃もまとわせる! 超破壊力の武装って奴だ」
超スピードによる突撃だけでも破壊力はすさまじいモノ、そこにドリルの貫通力と電撃までプラスすることで合体をしていないザンバー武装の中では、単純な破壊力は最大のモノとなっていた。
「どうだ、エポン。カバリオザンバーの性能は」
「マギアウストと比べて物凄いですね! 慣れればちぎっては投げちぎっては投げです!」
などとカバリオザンバーの性能を称賛するエポン。クレアーツィは満足そうにニコニコと笑いながらも、だがしかしと前置きしてこう告げる。
「ギガントアーク相手には単機では無理だな、グローリーモードはかなりの無茶をしてる状態。それをしないとあれには勝てなかった」
「クレアーツィさん」
エポンが見た男の顔は、この程度ではまだ足りないのだと雄弁に語っていた。彼には分かっているのだ、マギアウストの性能はいずれギガントアークを基準とするものになるだろうと。
「ま、だからこそトリニティの上の合体を用意してあるわけなんだけどな」
ニコリと笑う彼は、なんとなく彼女が気がついたことを察した様子で、心配する必要はないと伝えるように、4体合体を示唆していた。
「クレアーツィさん、もしそれでも勝てないとしたら―」
「勝てるようにする、不可能だとしてもやらなきゃいけない事は世の中にはある」
「不可能だとしても……」
「だから、不可能にならないように頑張るんだけどな」
太陽のように笑う彼を見て、エポンも笑みを返す。頑張って頑張って頑張りぬいて、それで始めて不可能だと証明できるのだと。世の中、やってみなければ分からないのだから。
「それでは諸君、転生騎士団には早速だが邪神ゴウザンバーを討つために出撃してもらいたいと考えている!」
ネルトゥアーレ城の豪華絢爛な広間で、ビートゥ帝は呼び出した転生者たちに、クレアーツィ等を邪悪な存在として貶めながら口にする。
そのまま彼は問いかける「手始めに奴らに攻撃を仕掛けたいものはいるか?」と。
「はいっ、私が行きます!」
びしっと天高く手を伸ばす一人の少女、彼女が自分の意思でその先兵として行動したいと名乗り出た。
「ほう、君は―」
「はいっ、私は星川未来です!」
桃色の髪を靡かせながら自らの名を口にする。強い意志でもってゴウザンバーを討ちたいのだと。
「ほう、お前は何故あやつに挑む?」
「以前の私はちゃんと守り切れなかったから、行って戦ってちゃんと帰ってくるをしたいから」
「ふむ、当たりか」
ビートゥ帝の語る当たり、それは転生者の中でも実戦を経験している存在を指す。命の奪い合いを知っている者と知らない者との差というのは大きい、強さとは別の根本的な部分。訓練では得られないそれを持っているというのは、彼にとってはとても大きな部分であった。
「いいだろう、グリモワにお前の要求を伝えろ。それでゴウザンバーと戦ってくるがいい」
「はいっ、私頑張ります!」
期待に応えるとばかりに未来は笑みを浮かべながら、グリモワの下へと駆け出す。無論ビートゥにとって彼女もまた都合がいい手駒にすぎないのだが。
(今度こそ、ちゃんといってきますをしたんだから、ただいまを言わないとっ!)
そして彼女がそれを理解していないことは悲劇であろうか、それとも喜劇なのであろうか。
「グリモワさんっ、私星川未来っ! 力を貸してくれますか?」
それは彼女とクレアーツィたちの行動によって決まるのだろう。
【転生者たちの出身世界】
彼らの出身世界は個々人によって異なる。このネルトゥアーレ大陸の世界が前世と大きな違いがない者もいれば大きく異なる者もいる。中には自分以外の人間と出会ったのが初めてなどという者もいるとかいないとか。




