第31話 うごめく悪意!? 新たなる脅威迫る!
【ゴウザンバートリニティ(グローリーモード)】
ゴウザンバートリニティに、マルチドラゴネットから竜希の魔導力を注ぎ込んだ状態。
通常時のトリニティを遥かに上回る強さを誇る状態、さらにこの状態からのザンバーバーニングの併用も理論上は可能。 ただしそれをした場合ほぼ間違いなく大きなダメージを負い、待つのは自爆のみである。
黒沢庄司の死がネルトゥアーレ皇国にまで届くのはそう時間はかからなかった。ある者は彼ほどの騎士が討たれたことに驚愕を隠せず。ある者は彼の卑劣なやり方や、自己中心的な性格故の自業自得だと評した。その全てが正しく、彼が良くも悪くも知られていた人物であったということは間違いないだろう。
「ほう、ショウジが討たれたか。想定以上に強大な力を持つようだなクレアーツィらは」
無論、その事実はビートゥ帝の耳にも届いていた。そしてその事実を聞いたとしても欠片も悲しみも怒りも見せることはなかった。彼にとって庄司の死は感情を動かすにも値しない些事であったのである。
「ダーミラ、召喚陣を展開せよ。前回のような失敗は許されんぞ」
「はっ、はいっ!」
ビートゥ帝の命令と共に、ダーミラはその場で奇妙な魔導具を使用する。するとなんということであろうか、床には巨大な魔法陣が展開される。
「奴ら曰く転生者だったか、異界の者をこの国に招き入れ働かせる」
陣の中では膨大なエネルギーの渦が吹き荒れ、今にも何かが起ころうとしている。
「無論、それが死んだところで誰も悲しまん。アレはこの国の民ではない、即ち人ではないだから」
ビートゥ帝はただただ当然の様にその陣の中を見ている。まるでそれが当たり前の物事であるかのように。
「何、人間というものは総じて自分の信じたいように信じるもの。この世界を救うための勇者として呼び出されたなどと言っておけば、勝手にそれを信じる」
徐々にエネルギーの渦が収まりだせば、ビートゥ帝はその場で軽く咳払いをし、現れる人影を見る。
「おぉ、よくぞ召喚に応じてくれた勇者よ、私はビートゥ。このネルトゥアーレ皇国の指導者である」
この地に現れた新たなる配下となりうる存在。この世界を理解していない、異界からの来訪者。それが気持ちよく自身の命令に従うように誘導する。
「今この国は存亡の危機にある」
滅びそうな国を救う、などと言うお題目をやろう。
「もしネルトゥアーレが滅びれば、この大陸から自由と平和、正義が失われてしまうのだ」
正義、自由、平和などと言うけど崇高な目的を与えよう。
「だから頼む、私に力を貸してほしい」
一度戦い始めてしまえば、もう自分が間違っていたと認められない。それが多くの人間で、例外などそうはいない。
「分かりましたっ! 私に何ができるか分かりませんけど、頑張りますっ!」
故に、この場に呼び出された桃色の髪の、どこか幼い風貌の少女が道を誤ることを誰が咎められようか。
時を同じくしてマルチドラゴネットの研究室、そこには第四のザンバーの姿が在った。
「いやはや、ようやく完成したぜ新しいザンバー」
「四本脚なのね?」
それは従来のザンバーと比べた場合は異形とも言える姿、腰から上だけの人型に、首から下だけ馬型のそれが融合したような姿。だが彼らにとって、これがおかしなデザインではない、センタウルの民が使うのであればこれこそが人型のザンバーとなる。
「ふふっ、いやぁいいですねぇ、私専用機!」
自身の愛機となるソレを見て、エポンはニコリと笑みを浮かべる。他者からの贈り物というのは、よっぽどのことがない限り嬉しいものである。
「あぁ、こいつの実働データからセンタウル人向けの量産型ザンバーの開発が行われる予定だ」
「それで、この子のお名前は?」
まるで小さな子供のようにワクワクした様子で、エポンはクレアーツィに問いかける。
「第四のザンバー、その名はっ!」
強く息を吸いながらその両腕を大きく広げるクレアーツィ、ただただ自分の作品を見せることが楽しい子どもの様な振る舞いで。
「カバリオザンバー!!」
「カバリオザンバーっ!!!」
クレアーツィの語る名を、嬉しそうに繰り返すエポン。そんな彼女は突如何かに気が付いた様子でクレアーツィに問いかける。
「あのっ、もしかして一部のパーツは――」
「あぁ、君が持ってきたマギアウストをより性能が上がるように調整したうえで流用している」
にこりと笑いながらクレアーツィはこう続けた。
「道具は確かに所詮道具だ、これはザンバーやマギアウストだって例外じゃない。だけど俺はこの道具が、道具ではない領域……というか魂を込めることを目指している」
まるで意図が読めないふわふわとした話、それを口にしながらもクレアーツィの瞳はキラキラと輝いている。まるで夢を語る少年のようなソレをエポンはじっと見つめていた。
「できたらいいですね」
どこか冷めたような声色で彼女はそう語る。できっこない子供の夢をだけどもできないと言い切るのは違うと無理矢理ひねり出した応援のようなそれ。されどもクレアーツィはその返答に笑みを返す。
「だからこそやってみる価値がある。答えの分かってる計算式を解いたって何の面白みもないしすごくもない。できなかったことをできるように変えるからこそ格好いいのさ」
少年のまなざしは曇ることを知らない。二十をとうに過ぎた彼は、今でも少年の心のままに生きている。これから先どのような困難が立ちふさがろうとも、その困難を正面から突破せんと。
「さ、それじゃあこいつの武装なんかの話をしようぜ」
だからこそ彼のような輝きは、心に影を持つ者にとってはまぶしすぎる。そして光が強くなれば影もまた濃くなる。
そして思想が誘導されてしまえば―。
「そんなっ、ネルトゥアーレの人たちを何人も、何百人も殺したんですかっ! 悪びれもせずにっ!?」
ネルトゥアーレ城にて一人の少女が口にする。彼女は何も知らない、だからこそ理解ができないものとして問うのだ。その声に賛同するように無数の人々がその相手を倒さねばならぬと声を上げる。
「そうだとも、故に異界からの来訪者である君たちの力が必要なのだ」
その声に同意するようにビートゥ帝は高らかに宣言する、転生者たちの力が必要だと。総勢数百人を超えるであろう彼らにそう告げたのだ。
「さぁ、ネルトゥアーレの反撃だ、連合どもに目に物を見せてやろう」
【ネルトゥアーレ大陸の転生者】
竜希という例外を除きほぼ全てがネルトゥアーレ皇国によって召喚された存在。 理屈としては元々異世界転生という事象が発生した際に、転生する先を強制的に自分たちの指定した場所に書き換える。 などというもはや神にも匹敵する事象が発生している。
これにより、転生者の多くはビートゥ帝にとって都合がいいように情報を提供され利用されることとなってしまっている。 その中でも稀に真実に気が付き反旗を翻そうとした者もいたものの、その場合はビートゥ帝に例外なく殺されている。
なお、さらに真実に気が付いたところでまるで気にせず従っている者もいる。 人間色々な考え方をする者がいるモノである。




