第26話 第四のザンバー計画! 始動する新たなる巨人
【ザンバーの大きさ】
基本的には大体30メートル前後の大きさである。
これは大体マンションの10階ぐらいの大きさであり、熊本城の天守閣の高さも大体このあたりである。
「それで……あんた、知らない女の人とご飯食べてたんだぁ」
はい、帰ってきたらどこか怒った様子でエストは俺にそんな風に言ってきた。別に怒られる筋合いはないと反論しようとしたのだが。
「あんた、自分の立場分かってるわよね?」
クレアーツィ・プリーマの立場を考えれば確かにまずいことだったのだ。俺が死ぬとザンバーはいずれ動きを止める。整備できる人間が俺しかいないのだから。
「もしその女が連れて行った先でリンチされてたらどうすんの?」
だからこそ、俺の命はもう俺だけの命ではない。思い上がりなどではない、本当に今できるのが俺しかいないのだ。
「しかも、騎士としては中の下位の強さよね」
……これも事実だ、認めたくはないが少なくとも下から数えたほうが早いぐらいにはそこまで強くない。
「あんたの強みは?」
「頭の良さと発想力、そして思い切りの良さ」
「で、その内発想力を活かすための魔導具も大半持ってない、となるとだめな行動でしょ?」
「さーせん」
そのままお説教となる予定だったが、俺もしなければならないことがあると告げることでそのまま解放された。
俺が向かったのは当然研究室、そこにいるのは――。
「えっと、クレアーツィさん、私は何をすればいいんですか?」
つい最近旅する仲間に加わったネルトゥアーレの裏切り者である、センタウルの民。エポンその人であった。
「ん、とりあえずマギアウスト……乗れたんだな?」
「はい、一応最前線ではなかったですけど」
であるのであれば魔導力量はザンバーを動かすのに不足はしていないと判断できる。エポンの使っていたマギアウストの仕様を見れば必要な量というのはある程度の推測ができるわけだ。
「後は魔導石の適性だけど――」
「はいっ、私に最も相性がいいのは雷の魔導石です!」
そう言われてしまえばまずは雷の魔導石を核にすることを決める、そのまま検査しつつ扱いやすいタイプのザンバーの設計を始めて行く。
ザンバーは基本例外なく、搭乗者が行った動きとシンクロして動くようにできている。これは搭乗者の技巧をそのまま再現ができるようにという判断からしてある。言ってしまえばザンバーとは鎧なのだ。魔導具である鎧、それこそがザンバーなのである。この当たりは元々は戦闘用ではない、別の目的で生み出されたマギアウストとの大きな違いなんだが。この辺り、兵器としては多分マギアウスト式のほうがいいのだろう。個々人によって、根本的なレベルで別モノになるというのは望ましくないのだろうから。
「よーし、これでいいかな」
その後もエポンの要求するもの、得意なことを聞いては設計図にメモとして記入していく。
「ふむ、槍か」
「はいっ、こう見えてもネルトゥアーレの歩兵として活動していた時は、雷槍のエポンなーんて二つ名まであったのです!」
などと胸を張る彼女を見て俺は思った。
(デカいのばっかだったな、なんやかんやで)
何がとは言わない。何がとは決して言わない。
「しかし、雷槍かぁ……よし、悪いこと閃いた」
「悪いことですか?」
「人間の想像力なんてのは無限大だけど、パっと思いつくことは限られてくるんだよ」
故に彼女の搭乗するザンバーの持つ槍に、電撃を吸収し倍にして返す機構を投入しようと考えてみる。正直かなり用途は限られるものの、それでも搭載しておけばこんなこともあろうかとってので役に立つ可能性がある。
「だからこそ、できる奴だけだけどされた攻撃の対策位は考えておきたい」
「その一つが電撃対策ですか?」
「まぁ、実際の所は望んだほどの効果は出ないだろうけど気休めにはなるだろうからね」
そんなこんなでにこにこと笑いながら、エポンと会話を続けていて……だんだんと足元がおぼつかなくなってくる。
「あの、クレアーツィさん!?」
エストに言われた通り不用心だった様だ……頭がガンガンするし、吐き気も来た……戻る前に医者に診てもらったが効果が出るのが遅い奴だったみたいだ。
「どうしたんですかっ!?」
「……とりあえず、もう少ししたら俺意識飛ぶだろうからさ……適当なベッドに放り込んで、エストたちに声かけてくれ……」
端的に言えば毒を盛られた、こいつはまずい……マルチドラゴネットは目立つから仕方ないとはいえ、あの女……俺たちがここに来ることを知っていやがった。だったらこれは利用しなければならない。
「いやっ、そんな風に言ってどこに行こうとしてるんですか!?」
「ひひっ、秘密兵器さ」
そう言いながら机の上に置いてあったちょっとした魔導具を手にし、そこにむりやり魔導力を流し込み起動する。そしてその行為に体が耐えられないまま――。
「クレアーツィさんっ!?」
クレアーツィは意識を失った、しかもその状態でまるでうなされている……いや、苦しんでいる姿を見せる。
「え、えっと……ここは言われた通りにしないと――」
そのまま頼まれた通りにクレアーツィをその背に乗せて駆け出して、彼の部屋のベッドに寝かせる。
「そ、それでエストさんたちに言わないと――」
彼女は何が起きているのかは分かっていない。ただそれでも自分がしなければならないことは分かっている。
「クレアーツィさんに言われた通りにしないと」
そう、頼まれたことを実行する必要がある。それだけのために面々に向かって何が起きたのかを伝えに行く。なぜなら――。
「バレたら、私死んじゃう」
【毒】
古今東西多くの生き物が死ぬこととなった要因の一つ。
生物の生命活動にとって不都合を起こす物質の総称である。
なお、同じ成分であってもある生物にとっては有毒でも、別の動物にとっては無害だったりすることがある。




