第24話 焼かれた村の真実 エポンの未来
【ザンバーブラスター】
ゴウザンバートリニティが放つ最強兵装。
ゴウザンバーの放つザンバーバスターの上位互換武装。魔導力量、魔導石量ともに跳ね上がるからこそできる武装である。
理屈の上では複数の属性の魔導力がぶつかり合うことで無を生み出し、その無でありながら有であるという異常な状態が発生させる重力によって押しつぶすというもの。
理論上は破壊できないものはない。が、理論上でしかないので破壊できないこともある。
「ふむ、この村の生き残り……か、とりあえず適当な街に送るなりするとして重要なのは」
クレアーツィは頭を抱える、生き残りがいる以上はこの村で起きた何かについて調べておかないと、目の前の生き残りであるエポンが気にし続けるだろうと。だけど正直なところパっと調べられる範囲で調べられることは終わっている。ついでに言えばその手の調査の専門家では断じてない、自分も、エストやアーロも、もちろん竜希も例外なく専門の人間はいない。ド素人が集まったところで何ができるというのか? 何もできないに決まっているのだ。
「……で、エポン、一つ聞きたいんだがこの村、他の村とかとは違う何かってあったりする?」
「そうですねぇ、あっ!」
「あるんですかっ!」
その反応を見て竜希はやったぞなんて呟きつつ、どんな違いがあるのかを楽しみそうに聞き。
「なんと私の生まれ故郷です!」
その場にいた全員が見事にこけた。それはもう見事にこけた。
「それが攻めまれる理由になるのですか」
あきれた様子でアーロがそう問いかけ、エポンは少し考えこんで首を縦に振った。
「んー、可能性がないわけではないですね」
「え?」
そりゃそうだ、私がいたから村が襲われたなどと言われて納得できる理由。いったいなにがあったのかと疑問に思うのは必然であった。
「いや、まぁ絶対にそうだとは言えないんですけど、私実はネルトゥアーレから逃げてきたんです」
「は、いやつまりどういうことだ?」
「……んー、脱走兵って言えば分かりますかね? もともと私センタウル系の人種なんですけど、ネルトゥアーレに住んでいたんですよ」
「えーっと、それはまさか」
「はい、元皇国軍です!」
その瞬間にクレアーツィは理解した、この娘は阿呆だと。エストは納得した、それはまぁこの村焼かれるわと。アーロは呆れた、どうしてこれで村を焼かれたことに文句が言えるのかと。竜希は首をかしげていた。
「で、脱走してもともとの血筋としてセンタウルまで逃げ込んだと」
「はい、あんな糞みたいな……正しい理由すらなく人を殺すだけの仕事なんてしたくなかったので」
その発言には苦笑いを浮かべざるを得なかった、それはそうだろうが納得してたたかうのが兵士ではないか……と考えて、その上でクレアーツィは問いかける。
「もしかしてマギアウストの搭乗者だったか?」
「はいっ! それを使って逃げましたので」
そりゃもう確実に皇国からすれば殺さねばならない女だ。
なにせマギアウストに対抗できるのは現状クレアーツィらのゴウザンバーたち三機のみ、つまりは搭乗者三人を抑えてしまえばもう気にしなくていいのだ。
だけど、エポンの存在はそれをたやすく突き崩しかねない、皇国の機械技師に匹敵する機械技師に、彼女が持っていたマギアウストを提供すれば似たようなものを作ってしまうかもしれない。そうなってしまえば数の多い連合軍に正面から潰される可能性ができる。
ザンバーもマギアウストも無限に動かせる兵器ではない、搭乗者が疲れ切れば彼らも動かなくなってしまうものなのだから。だからこそ、数がそろえばその弱点を補うことができ、それをできるのが連合の数なのだ。
「とりあえず、これを回収するの反対の奴ー」
唐突にクレアーツィがそう宣言、誰一人手をあげる者はいない。
「じゃ、回収するのに賛成の奴」
そう問いかけるとともに全員の手が上がる。
「そりゃまぁ、皇国がどう弄ったか気になるし」
と、一人の機械技師としての意見で賛成するクレアーツィ。
「えっと、別に困ってる人なんだから助けても別にいい気がするんですが」
何がまずいのか理解していない様子の竜希。
「まぁ、騎士として放置はできないわよねぇ」
一人の騎士としての立場で賛成の意思を見せるエスト。
「というか、放置したらとんでもない爆弾になりますし、目に見える範囲で管理するのが一番安全かと」
などと完全に厄ネタだと理解しておきながら、だからこそという立場のアーロ。
個々人によって思惑は違うものの、この場で最もすべきこととしてエポンをマルチドラゴネットに乗せることが決定する。
当の本人はと言えば。
「はいっ、是非ともよろしくお願いしますっ!」
なんて軽いノリでそう宣言して見せた。
(多分だけど皇国軍に入ったのもこんなノリなんだろうなぁ……)
なんて、エストは苦笑いを浮かべながら、エポンの使っていたマギアウストの下へと向かう。ついでに回収してしまおう、分解すれば少なくとも魔導石は流用できるのだからと。
結論だけ言えばエポンが使っていたマギアウスト、容易く回収ができた。やたらと上手く隠されていたわけで、まるで皇国の目に留まらなかったのだろう。
「……どうして、デカいこっちは隠せて、小さいエポン本人は見つかってるんですかねぇ」
などと苦笑いを浮かべてしまうのは仕方のないことだろう。
「あっ、それでクレアーツィさん、私は何をしたらいいですか?」
そしてもともと人手自体は足りていたマルチドラゴネット、そこに乗ってきたエポンに新たな仕事を割り振る必要があるわけで。
「基本的には掃除しといてくれ、俺たちもやってるけどマルチドラゴネットは広いからな」
と、軽い感じでそう指示を出す。主要メンバー以外にも何人か乗っている人たちがいるが、彼らも基本は掃除だ。それでもすべての場所で毎日掃除が行われているわけではない。故にそう言った指示を出すこととなったのだ。
「ふむ、例の艦と合流したのね……」
その光景をどこからか見ている女が一人、その女は扇情的な衣装を身にまとい水晶玉の前でにやりと笑う。
「さーて、後はいつ爆発させるかよねぇ」
その水晶玉の中には確かにエポンの姿が映っていた。
【F.D.F】
黒沢庄司が創造の魔導石の力で発動させた防御領域。
Full Defense Fieldの略称であり、その名の通り絶対的な防御領域を展開するというもの。
ただし、これは庄司のイメージによって生み出されたものであるのでそれを上回ることができれば打破することは可能。
なお、これは庄司が前世で見た作品の主人公の能力を再現しようとしたものである。




