第19話 襲来マギアウスト軍団!! 迎え撃てトリプルザンバー!!
【ザンバーキャノン】
最大射程は50km先というブラストザンバーに搭載された武装。
この射程距離は東京から埼玉県の東部まで余裕で入る距離である。
しかしながら普通にやればこの距離では命中させることは困難、これだけのことができるのはアーロという優れたパイロットがいるからである。
フォスト王都では狂乱の中人々は嘆き叫んでいた。
「皇国からはそれなりに距離があるのにどうしてこの国が攻め込まれるのよ!?」
「わざわざここまでくる理由があるんだよ! よそから来た例の機械技師のせいだ!」
「それにしたって百を超える数はやりすぎだろ、頭おかしいんじゃねぇのか!?」
「頭がおかしいから戦争なんて始めたんでしょうがっ!!」
その狂乱の原因、それは突如として各地に潜んでいた皇国のマギアウストの軍団が王都に向かって進軍し始めたからである。なんとその数、合わせて百八機。まずそれほどの数のマギアウストの攻撃など最前線でもあり得はしない。理解ができないほどの攻勢を聞き人々は恐怖の渦に包まれて行ったのである。
「クレアーツィ! ブレイドザンバーのほうは整備できてるわよね!」
「整備自体は全部問題なし!」
その返答を聞き、エストはそのまま駆け出し自身の愛機に乗り込み出撃していく。
たった一人でも、自分のできることを為すために。そう考えていたエストの背後から、声がかけられる。
「あら、祖国を救うために戦う私よりも先に行くのは止めてもらいたいものですわね」
「アーロ、でもあんたのザンバーは――」
「えぇ、テストは済んでいませんわね、ですけれど……貴女も初陣が初乗りだったはずでは?」
いつも通りどこか優雅に、しかしながらその瞳には確かな闘志を宿しながら、アーロがそう口にする。ならば私も出るのが当然、だからこそ連れて行け、いやむしろお前を連れて行ってやると。
「あいつから許可は?」
「もらっていなければ声などかけませんわよ」
その発言を聞いては、二人の戦乙女は戦場に向かうために半身の下へ向かっていった。
マギアウストの軍勢が襲来を予測されてから数時間が経過したころ、人々の多くは王都の中心にある城に避難していた。そして王都の入り口近くには二体の巨神、一つはエストが乗り込むブレイドザンバー。もう一つはアーロに与えられた砲撃戦に特化したブラストザンバーと呼ばれる緑色の巨神。そしてその二つがにらみつける先には大きな土煙と共に、マギアウストの軍勢が向かってきていた。ざっと数えただけでも二十を超える数。当然のことながら如何にザンバーが優れた性能を持っているとしてもこの数を相手にするのは非常に困難である。故にすることは決まっているわけで。
「それではこのブラストザンバーの性能テストと行きましょうか!」
その言葉とともにアーロの前に狙撃用のスコープが上から降りてくる。そしてそれを調整してはブラストザンバーの両肩の武装、ザンバーキャノンが射線を調整するように上下に動き始めて行く。
「ターゲットロックっ! ぶっ放しますわよ!!」
その叫びと共にザンバーキャノンから魔導力の弾丸が解き放たれて行く、それも爆発に特化した広範囲を一度に焼き払うものを。
「あの距離から撃つのか!?」
皇国の兵士の一人がその行動に驚愕したのは至極当然であったその距離、数十kmの距離からの砲撃。
「そんなものが当たるものか!」
兵士たちは思っていたのだが。しかしながら現実とは人の想像を上回るものである。
「なっ、直撃したのか!?」
真横にあったマギアウストがキャノン砲の直撃を受けて撃墜された。あの距離から当てたのだ。
「どうせまぐれ当たりだっ! 進めっ!」
そんな中で誰かが言った、確かに直撃すれば撃墜される可能性はあるものの、まぐれだから運が悪かっただけだと。
「などと考えているのでしょうけど、この速度なら止まっているのと同じですわ!」
しかしながらただただ適当に撃っていたわけでは断じてない、魔導力は生きていればいくらでも湧いて出てくるものではあるものの、消費すればするだけ疲れるモノである。無駄に何度も何度もぶっ放していいわけでは断じてないのだ。
「さて、ザンバーキャノンのほうは問題なしですし――」
その言葉とともに展開される、ブラストザンバーの身の丈ほどもあろうかという巨大な弦のない弓、それを天高く向ける構えるとともに魔導力によって弦が展開される。
「ザンバーバリスタのテストもしましょう、まずはこうですわね――」
そのまま通常の矢と同様に、弓を引けば魔導力によって天に向かって矢が形成され放たれる。すると次の瞬間、矢が無数に分裂し豪雨のように地に降り注いでいく。
行軍するマギアウストにその矢は突き刺さり、爆炎が吹き荒れて行く。
「ふむ、命中率自体は落ちますわね、まとめて複数を叩く時ぐらいしかこれは使い道はなさそう……となると、こうですわねっ」
今度は天ではなく遥かかなた先のマギアウストに直接照準を向け弓を引く、魔導力をどの魔導石に通すかによって性質が変わる、どれだけの魔導力を一撃に込めるかによって矢の在り方が変わる。
「感覚で理解しないといけないですわね、では行きますわよっ!」
再び放たれる矢、音よりも早く飛ぶそれがマギアウストに命中すれば、その勢いを消さぬまま貫通し、その後ろにいたマギアウストをも貫いていく。
「これでは先ほどよりも撃墜速度が堕ちますわね、雑兵相手にはさっきのほうがよさそうですわ」
「まさか、正確にたたきこめるだけの性能があるというのか!? ふざけるなよっ!」
皇国の兵士たちに動揺が広がっていく、放たれる攻撃の全てで必ず誰かが撃墜されて行く。
「一方的にやられるだけじゃないかっ!」
マギアウストでこの距離を攻撃できるものは、この部隊には配属されていない。そもそもの話として彼らは先に忍び込んで本体の攻撃の際に暴れることで混乱を起こすことがメインの部隊。それが急に総出でフォストの王都を攻撃しろと言われてこうなっているのだ。つい先日までは一方的に攻め込む側だった彼らが、逆に一方的に叩き潰されて行く。盛者必衰などという言葉がネルトゥアーレにあるわけではないが、それでも彼らは気が付いた時には勝利する側から敗北する側に回っていたことに気が付かぬものなど、この部隊にはいなかった。
「それをひっくり返しに来たっ!」
どこからか通信が割り込んできたことに皇国の兵士たちが動揺をさらに大きくしていく。しかしながらその動揺が次の瞬間には一瞬で収まる。
「皇国の兵士たちよ、聞けっ! 我こそはネルトゥアーレ皇国のビートゥ帝親衛騎士団長!」
天高く何かが飛んでいくのを見た。
鳥か?
いや鳥ならばあれほどの大きさではない。
ドラゴンか?
いやドラゴンであればあの様に一瞬で空を割くはずがない。
ならばアレはなんだ?
「これこそがネルトゥアーレ皇国最強のマギアウスト!」
あの忌々しい緑の巨人の前にそれは降り立っていた。
それは黒く巨大であった。ザンバーと比較しても巨大なそれがそこにいたのだ。
「正しきものを救う箱舟、ギガントアークであるっ!!」
「ギガントアークっ!?」
「貴様ら偽りの正義を振りかざし、我らネルトゥアーレの王道を阻まんとする邪悪を討つため推参したのだっ!!」
「くそったれ、あれは今までのマギアウストとは桁が違うぞっ!?」
一人戦線に立っていなかったクレアーツィは、その姿を見て焦りを募らせていた。
「このままではまずい、だからこそゴウザンバーを完璧にしないといけないのによぉ!」
しかし、時間は止まってはくれないし、ギガントアークも止まってはくれない。
「成功確率は限りなく0に近い、それでもしないとだめなのかっ」
故にこそ彼は駆け出し、不可能への挑戦をする。しなければならないことは、たとえ不可能だとしてもしなければならないのだから。
【魔導力の消耗】
魔導力が枯渇するということはどのようなモノであっても(元から魔導力がないという場合を除いて)ありえない事象だとされている。
では魔導力量というのは何だというと、瞬間的に使える最大の魔導力の量(もしくは瞬間的に回復する魔導力の量)を指す言葉である。それ故実は無限に使えるエネルギーではある……のだが、生きとし生ける命が生み出すエネルギーであるため、使えば使うほどにつかれるという問題がある。これの対策というのは存在しておらず、極論言えば慣れるしかない。




