第18話 皇国の新兵器!? ザンバー殲滅作戦!
【主人公】
物語の中心にいる人物である。
当然のことながら今作の主人公はクレアーツィ・プリーマであり、主人公機はゴウザンバーである。
「例の作戦、失敗したか」
「あぁ、奴ら魔導力の流れ方を途中で止めることで防いだようだな」
グリモワの研究室で二人の男が会話をする、一人はこの研究室の主グリモワ。もう一人は黒沢庄司、皇国でメキメキと頭角を現している異国から来た男。実際は転生者と呼ばれる存在である。
「しかし人質がいても助け出すか、まるでヒーローって所だな」
「ふん、何が主役だヒーローだ! 俺が主役でヒーローなんだよ!」
グリモワの呟きに怒りを隠せない様子で庄司は怒鳴り散らす。その肩書にまるで固執するように。
「やれやれ、それでショウジ、これでお望み通りに作ってみたところだが」
そう言って指さす先にあるのは鋼の巨人、漆黒のその姿は闇から生れ出た悪魔のよう。魔導具である以上魔導力で動くわけで、たとえどのような物であっても魔の物であるのは確かではあるのだが。
「これがこの俺専用のマギアウスト、という奴だな」
「あぁ、お前の望み通り闇に紛れられる漆黒の姿、さらに言えばお前の膨大な魔導力と魔導石適性を活かした異常なまでの対応力、そしてお前だけができるアレのためのパーツも用意してある」
けらけらと笑うグリモワの姿を見ては庄司は、この男がそれほどの宣言をするほどのマシンであれば自分に相応しいと納得する。
「で、名前は決めてあるのか?」
そこでふと、その辺りはこちらから要望は出していなかったと思い返し、庄司は問いかけていく。
「ん? わざわざ名前なんぞ気にするのか?」
「だから一般用マギアウストは名無しか、オリジナルのモノをそのまま採用しているのか?」
「そこに労力をかける暇があるのなら、より強力なマギアウストを生み出す方が効率的だろう」
などとにやりと笑いながら返すのがグリモワという男、何処まで言っても自分の魔導具の性能を信じているだけだそこに愛着などがあるわけではないといえる。そしてそこがクレアーツィとの差を生むのだがそれはさておき。その返答を聞いた庄司はそのままこう口にした。
「ならば俺が名付けてもいいんだな」
「あぁ、もちろん構わんとも」
当然の様に、別に名前などに興味のないグリモワはそう返す。大事なのはそのマシーンの性能であった名前はどうでもいいといった様子で。
「ふっ、ならばこいつはギガントアーク、皇国に勝利を約束する巨大なる契約の箱といったところか」
にやりと笑いながらそのままギガントアークと名付けられたそれのコックピットに乗り込み起動させる庄司。コックピットの中で無数の機器やモニターが光を灯し始める。
「……グリモワ将軍、クレアーツィらがどこに向かったか知ってるか?」
「あぁ、フォストまで向かったそうだ、やるのか?」
「当然、今のうちに奴らをつぶしておかねば皇国の害となりますので」
にやりと笑った庄司は、研究室のハッチから出撃のための行動をとり始める。
「さて……と、ようやくの主人公機の登場だ、派手に盛り上げないとな……」
そう口にしながら、野心に満ちた獣のような笑みを浮かべレバーを思いきり引く。その動作と共に、巨大な翼が展開され、天高くギガントアークは飛び上がりそのまま停止。そして視線をある方向へとむけて行く。
「あっちがフォストか……さて、何時間かかるかな」
そう呟くと共に、先ほどまで止まっていたとは到底思えない速度で視線の先へと飛び立っていく。それはまるで一筋の流れ星。凶兆を告げるが如く、クレアーツィたちが滞在しているフォストの王都に向かっていく。
「さて、アレが到着するころには近辺に配置しているマギアウストも到着できるか、いやむしろマギアウスト軍団が到着するのが先だな……。総員フォストを襲撃せよ、一つの国が亡びるか、それともクレアーツィが覆すか……。楽しみで楽しみで仕方ないわ」
そうは言いながら自身の策が崩れ去ることは想定していない。それもある種当然の話であった。
「現状の推測でゴウザンバーとブレイドザンバー、後これに同等のマシーンが作り出されていたとして、ギガントアークとは子供と大人ほどの戦力差がある。……そしてそこにマギアウストが数十、いや百数十機ほど向かわせる……結果がどうなるかなど決まっているわけだ」
絶対的な質と量の暴力をぶつけんとするグリモワの企みが今クレアーツィ達に迫っている。
フォストの王都近く、マルチドラゴネットのクレアーツィ研究室、そこにクレアーツィはいつも通りいた。
「さて……と、ブレイドザンバーのほうは問題なし、第三のザンバーの方も問題は無しとすると……ゴウザンバーの方か、問題は」
そう口にしながら、その手にはペンを握り紙に計算を書き連ねていく。その式が最終的に示しだしたのは――。
「成功確率、限りなく0%……と来たか、もともとそういう機構を仕込むつもりだったが、やっぱり現実的ではないかぁ……。とはいえ、これができないと今後の問題もぶつかりそうだしなぁ」
一人でブツブツと口を動かしながら、それでもとばかりに手を動かしていく。彼が為そうとしていること、それはいったいなんであるのだろうか。
強大な軍勢が迫っていることも知らず、一人研究室で再計算を始めるのであった。
【ギガントアーク】
全長50mの巨大な人型マギアウスト、現在時点でのグリモワの最高傑作。
黒沢庄司の専用機であり、彼の持つ膨大な魔導力量と魔導石の適性によって動かせる。ある意味でゴウザンバーの上位互換ともいえる代物。
しかしまだ何か秘密の兵器が仕込まれているようで。