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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第一章 ギガントアーク編
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第16話 王都を観光! 王女様からのご案内!

【アーロ・フォスト】

 フォストの第一王女、フォスト王にとって最初に生まれた子供であり、次代のフォストの女王である。

 しかしながら彼女は弓矢、銃、さらには砲術の全てを嗜む遠距離戦のプロフェッショナル。なにせフォストの民は代々遠距離型の武装の使い手が多いのだが、その中で全てで頂点に立つのが彼女であるのだとか。


 アーロ・フォストという、クレアーツィにとってはいろんな意味で不本意ではあるものの、新たなるザンバ―搭乗者候補を得たことによって、第三のザンバーの開発計画が進行しようとしていた。


「ふふっ、このフォスト王都に来たのですから、当然観光していきますわよね!」


 しようとしていたが後回しにされた。


 相手はこの国の王女であるわけで、権力がある。彼女はスポンサーとしての面も持っている、すなわち財力がある。クレアーツィは権力と財力には勝てない。どちらも魔導具の開発には必要なものだからだ。


「で、王女様――」

「そんな堅苦しい呼び方はやめてくださいな、私のことはアーロとお呼びくださいな」

「それで、アーロ……観光って何しに行くんだ?」


 シンプルな問いかけであった。別にクレアーツィは観光に興味がない、ただ純粋になぜ観光に参加させれれるのか分かっていない様子で。


「少なくとも、ザンバーはこの国も守っていただけるのでしょう?」


 当然のこととばかりにアーロはそう問いかけ、クレアーツィも首を縦に振る。

 ゴウザンバーで戦ったあの日からヒーローをやると決めたのだから、肯定以外の選択肢はなかった。


「であれば、この国の民を見てください、そして実際に守ることとなる人々の生活を実感してあげてください」


 そのまま彼女はニコリと笑ってこう続けた。


「その方が貴方も守るべき者を実感として持てて、戦う理由にできるでしょう?」



「それではこの私がツアーガイドのフォスト王都ツアーですわよ!」


 そう高らかに宣言するアーロ王女。そしてそれに対してやんややんやと盛り上げるエストと竜希。その後ろで苦笑いを浮かべるクレアーツィという光景がそこにはあった。


「で、王女様直々のツアーはまずどこに行くのかな?」

「ふふっ、ではそれはついてからのお楽しみですわ!」



 楽しげに笑いながら彼女が案内する王都。フォストはもともと自然との調和を第一としている国ではあったが、町でありながら森であると認識させるソレはフォストの中でもここだけだろう。


「ですが不便では全くないでしょう?」

「あぁ、道に慣れている筈のアーロ王女が――」

「王女はいりませんわ、共に戦う仲間となるのですから」

「えーっと、それじゃあ――」

「ただアーロと、あぁあだ名をつけてくださるのであればそれでもいいですわよ、私が気に入ればですけれど」


 にやりと笑いながらアーロはこう告げる、せめてこのマギアウストとの戦いが終わるまでは一人の戦士として扱ってほしいのだと。


「じゃ、アーロの案内があるってのもあるけれど、法則があるのね」

「えぇ、これによってよそから来た人間には天然の要塞になる、けれども不便ではない町になっているわけですわ」


 と自身満々に胸を張りながらドヤ顔をするアーロ、ただただ自分の国を誇りに思っているその姿はどこかほほえましいモノであった。


「さて、それでは目的地に着きましたわ」


 そう彼女が指さした場所には豪勢な建物があるわけでもなければ、観光名所らしき何かがあるわけでもない。ただの空き地がそこにはあった。


「えっと、ここが目的地?」


 クレアーツィとエストは理解した様子ではあるものの、竜希はどういう意図で連れてこられたのか分かっていない、そう自分から言うように問いかけて。


「はい、フォスト王都の空き地、であると共にここは別の側面があるのですわ」


 にやりと笑ったアーロはそのまま空き地にただ一本生えている木の近くまで行けば、軽くノックをしていく。


「合言葉は?」

「千発千中」


 その言葉とともに木の側の大地に穴が開く、そしてそれを確認してはアーロが手招きし。


「では付いて来てくださいまし」


 にこりと笑ってはそのままぴょんと、穴の中に飛び込んでいく。


「ま、想像通りの場所だったか」

「じゃ、行きましょうか」


 そのまま当然の様に二人も飛び込んでいき、竜希だけが残される。


「ちょっ、ちょっと!? 待ってくださいよ!?」


 そうなってしまえば、頼れる者のいなくなった竜希も当然その穴の中に飛び込んでいくわけで。



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 ドスンと竜希が穴の底に落ちれば、地下にもかかわらず明るい空間に顔を出していく。


「ちょ、ここどうなって――」

「この人たちアーロ姉ちゃんの友達?」

「友達? 違いますわ! 戦友ですわよ!!」


 アーロを取り巻くように無数の子どもたちがそこにはいた。まるでごくごく当然の様に姉貴分といった扱いをして。


「で、アーロ……彼らは?」

「王都の子どもたちで、私の友達ですわ」


 にこりと笑いながらそう告げつつ、そのまま彼らを自慢の友人たちだと続ける。


(……戦う理由ーって言ってたけど、これアレか、自分の戦う理由をしっかりと自分で確認したかったんだ)


「さて、では皆に私から大事なお知らせがあります」

「姉ちゃん、どうしたのさ」


 先ほどまでの朗らかとしていた笑みは消え、きりっとした表情に変えていく。クレアーツィらのことを戦友と称したのであれば、本当にそう言うことなのだ。


「私は少しの間旅に出ます、その間このフォストをみんなに任せますわ!」


 そういう彼女の表情にはどこか影があった、理解しているのだろう。もう二度と会うことはないかもしれないことを。だからこそ、帰ってくると宣言しているのだから。懸念を覆す理由の一つとするために。

【フォスト王】

 アーロの父親であり、フォストを治める国王。

 自身の娘たちが皆どこか問題児ばかりのため、気苦労が絶えないお方。

 なお彼やネルトゥアーレの例を見るように、各国の王の苗字がそのまま国の名前になるのはネルトゥアーレ大陸ではよくあることである。

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