第11話 うごめく悪意! 皇国の脅威!?
【財前寺竜希】
プリーマ邸近辺で遭難していた転生者を名乗る少女。
常人をはるかに上回る異様な量の魔導力量を有している一種の天才。また魔導石の適性も非常に多くの石に適正があると検査で出ている。
正体は実際に転生者、生前はそれなりに裕福な家系のお嬢様であった。
「ふむ、マギアウスト二機でもだめだったか」
グリモワ・ズィープトは自身の研究室でそう口にする、その視線の先にいるのは黒髪でツーブロックの若い男がそこにはいた。
「となると、アレはスーパーロボットって所か」
「クロサワショウジ、私にも分かる言葉で説明しろ」
男の名は黒沢庄司、皇国で突如として立場を得た異国から来た男、とされている者である。
「あぁ、軍事兵器というよりかは単独で戦線を覆す何かだ、戦術を戦闘で覆す化け物だよ」
「そんなものがお前が元居た国にはあったと」
ごくごく自然にそう語る庄司の姿にグリモワは問いかけていく。この男の発想はネルトゥアーレ大陸で生まれた人間とはどこか違う視点を持っていると判断しているのだ。その突飛な発想を現実のモノにすることによって、グリモワは頭角を現していったのである。
「あー、それはどうだろうね、俺も直接は見たことないからさ」
「ふむ、まぁどちらにせよ奴のゴウザンバ―はその戦術を戦闘で覆せる化け物だということか」
そう問いかけるグリモワへ、庄司は苦笑いしながら返答する。
「もしかしたら戦略も戦闘で覆せる化け物かもしれない」
「そんな化け物なら何作っても勝てないんだから、一周回ってそこまで想定する必要はない」
「だよねー」
なんて腑抜けた顔で庄司は返事をしつつ、頭の中では思考を進める。
(転生したら悪の皇国の幹部になってましたってか、しかもファンタジーかと思ったらロボットアニメ)
庄司もまた転生者、ネルトゥアーレ皇国で行動するそれで在った。
(ありがたいことに、転生チートは使えるのばっかりだったからそれなりの地位になれたが、原作主人公らしい奴が敵にいるのはなぁ……オリ主でアンチヘイトものか?)
などと頭の中ではそんな風に考えながらも、その上でゴウザンバ―への対抗策を考える。
「ゴウザンバーのパイロットは基本的に善性なんだよなぁ」
「あぁ、クレアーツィ・プリーマは世のため人のために頑張りますってタイプだが」
「ならそこに付け入る隙がある」
相手が正々堂々と来るのであれば、そう言った相手が動けないようにすればいいとばかりにそう語る。
「なーに、最終的にどんな方法を使っても勝てば英雄、主人公って奴だ」
リューションとフォストの国境近くの街であるハジの街、マルチドラゴネットは数日でそこまでたどり着いていた。そして現在そこでは輸送隊が運んできた資材や食料などの積み込みが行われていたのである。
「はい、積み込みが終わったらフォストの王都まで行く予定だ、一応アポは取る必要もあるからゆっくりとした飛行になる予定だけどな」
クレアーツィがそう口にしつつ、マルチドラゴネットのメイン動力源である竜希へと簡単に現状について説明する。彼女がこの大陸での常識がない以上は簡単に個別で説明する必要があるという判断であった。
「で、それが終わるまでどれぐらいかかるの?」
「明日の昼まではかかる」
それほどの量を積み込む必要があるのだと告げるクレアーツィ、当然の話ではあるがその大半は新型のザンバーや、ザンバー用の新武装の開発に使われることとなる資材である。
「で、それだけ時間がかかる以上街を見てきたいと思うけど」
「まぁ、変な奴もいるでしょうから、竜希ちゃんの護衛もかねて私と一緒に回ってもらいます」
そう言いながらエストは豪華絢爛な鎧を見に纏い、その身の丈ほどもあろうかという剣を背負い歩いてくる。
「え、エストさんその恰好は!?」
「あー、一応リューションの騎士団長としての装備って所かしら、剣のほうはファネッリ家に伝わる魔導具よ」
そうにこやかに笑いながら騎士らしい姿も見せないとね、なんて続けるエストはそのまま竜希を連れて観光を開始。一方のクレアーツィは自身の研究室に積み込まれて行く資材の配置についての指揮をするために艦内に戻っていく。なお彼が一番時間をかけたのは研究室内で音楽を聴くために設置されているスピーカーの位置の調整だったとか。
「近くで行方不明者が続出?」
エストと竜希がハジの街の観光を行っているとそんな噂を耳にする。
「それだけなら山賊とかモンスター的に襲われたって感じのアレかしら」
「それが騎士様聞いておくれよ、いなくなったのはみーんな若い女の子、しかも街から出るような仕事でも立場でもないって来た」
「……街から出ないとなるとモンスターは違うでしょうし、山賊とかも普通に考えて目立つわよね」
エスト、というよりかは騎士団長としての立場故にその発生している問題が何が原因かを探る必要がある、そう考えマルチドラゴネットに戻りクレアーツィに事件を伝える。
「ふむ、まぁ明確な王都に行く日程は決めてないし、解決できるかどうかは置いておいて調べてみる必要があるかもな」
「クレアーツィ、機械技師としてなんか使えそうな道具とかない?」
「んー、となるとこれとかこれは行けるかも……しれないな」
ハジの街やその近辺の村などで発生している行方不明事件の調査を行う。そのためにもと彼が持ち込んでいた道具をいくつかエストに渡し、面々は行動を開始していくのであった。
【グリモワ・ズィープト】
ネルトゥアーレ皇国の三大将軍とも呼ばれる将軍の一人にして大陸で二番目に優れた機械技師。
常に比較対象とされてきたためクレアーツィへの強い嫉妬の感情を抱いている。
クレアーツィと比較した場合、既存のモノを改良するといった方向や、兵器の開発などに優れている。
黒沢庄司という男となにやら企んでいるようだが。